30. 中学2年 9月 横本先生
爽涼は2日からとカウンセラーの小倉先生から連絡があり、1日は午後、宿題などを届けに行った。
志賀先生が不在で、あの横本先生が頼まれてたと言って受け取ってくれた。
夏休みどこか行った? って聞かれて、家でゴロゴロしてましたって言ったら、アハハ〜! だって。
「先生もずっと部活。すっかり日焼けしちゃってやばいよ」
とカーディガンの両腕をまくって見せた。けっこう焼けてた。
日焼け止めも効かないのかな? でも顔は綺麗だ。
女子ソフトテニス部の顧問でけっこう成績が良く、毎年県大会に出場してるけど、だいたい1回戦負けで今年もそうだったとか。
「でも、まあ、ソフトだからね。高校行くとみんな硬式に移っちゃうしね」
渡した提出物を確認しながら言った。
「高校はソフトテニス部ってないんですか?」
「あるよー。少ないけどね。小学生から大学、社会人もあるし、世界大会もあるんだよ」
「へぇ…」
それ以上答えようがない。だってハッキリ言ってマイナーなイメージしかない。興味ないって言ったらそうだ。横本先生はずっとやってたのかな、なんて聞いたら最後、話が止まらなくなりそうだから聞かないでおくけど。
「楽しいんだけどねぇ、硬式の方がカッコいいのかな」
視線を手元に落としたまま
「爽涼に行くんだって?」
と聞かれた。なんか言われるのかなと面倒くさいといやだなぁと思ってたら
「池澤先生に会った?」
「へっ?あ、会いました…責任者の先生ですよね」
「そうそう。池澤先生さ、初赴任した学校にいてさ。すっごく厳しくてねぇ、怖かったのよね」
「えっ?マジで」
「あっ、びっくりさせちゃうね。教師に厳しかったのよ。子どもたちには、まあ、それなりにって感じだったけどね」
厳しかったんだなと思った。ひょえー、やばいよ。
「転勤された時はホッとしたわ。そしたらさ、転勤先に平野先生がいたんだって」
面白そうに言う。暴言書き込みの平野先生だ。
「やっぱり厳しくて、年齢が一番上ぐらいで、校長よりも年上で、校長も教頭もしょっちゅう怒られてたんだってさ」
校長じゃなかったのかな? そんな感じに見えたけどね。
「でもさ、同じ学校にいた時も平野先生と同じだった時もそうだったらしいけど、礒田さんみたいに学校来づらくなっちゃうとか遊び回ってる子とかいるじゃない?そういう子にすっごく優しいのよね。同じ人かと思うくらいよ」
なんと言っていいかわからないけど、そうなんだ…
「退職した後の再雇用も進んで、支援教室希望されたんだって。だからさ、安心して行ったらいいよ。俊爽じゃなくて爽涼行くって聞いた時、よかったなって思ったよ。うちの学校ほとんど俊爽行くしね、まあ近いからだろうけど」
横本先生は提出物をトントンと揃えて
「OK、大丈夫だよ」
と言った。
提出物のことなんだけど、爽涼が大丈夫とも聞こえる。
池澤先生にどんどん話せばいいよ、と横本先生は言った。
横本先生も心配してくれてるのかなぁ。母が言ってた、先生の“わたしのせいかな”かな。でも、爽涼に対して、ちょっと気が楽になった。
今日は早く寝よう。ゲームはお休み。




