29. 中学2年 9月 逃避
カウンセラーの小倉先生と面談して、2学期から爽涼に行くことになった。
「9月から利用ということで進めますね」
小倉先生の“進めますね”が気になっちゃった。別になんてことないけどね。事務的なことでしょう?
こうやって、どんどん進んで、爽涼に通って、時々学校行って、不登校から脱出‼︎ ってことになるのかなぁ。やっぱり行かなきゃダメなんだよね…ああーっ、ずっと同じこと考えてるのもバカみたいだし、もったいないし。もったいないってなにが? 時間? 時間てなんだ?
だから、夏休みもあっという間に終わっちゃったんだね。
母に言うと
『なんかやればいいんじゃない?』
と言われて、なんかってって思ったら
『料理とか? ビーズとか?』
だってさ。
ビーズ細工は好きで、幼稚園の頃から、ゆるゆるの指輪や延々と長いネックレスを作った。母に花型の作り方を教えてもらったが全然できず、泣きながら投げて怒られたりした。それでも、できあがった時は嬉しくて、なんでもできそうな気分になった。
ビーズ細工をやってると、すごく集中できる。ネットで調べて難しいものができると、天才なんじゃないかと気が大きくなる。自分でもいろいろ考えて、方眼用紙に設計図を書いてみたりした。
でも、今はその気分じゃない。
爽涼に行くには、学校長の許可がいるので、申請すれば学校から爽涼に出してくれる。申請は小倉先生から志賀先生に頼んでくれるとか。メールでやっちゃうんだ。学校からの手紙類もそうすればいいのにと思うけど、やっぱり面談のように“対面”ありきなんだな。まあ、それはわかるけどね。
9月1日から利用可で、期限は再来年の3月31日。3年生が終わるまでだよね。学校に戻れるようになれたとしても、有効だそうだ。もしも、また、なんてこともあるかもしれないからだ。
はぁ〜、とうとう夏休みも終わるーっ!
昼夜逆転を治さねば。社会の宿題やっとらん! もういいかなぁ。出さなくても、なんか、面倒くさい。
面談くさいけど、“ハズキ市の歴史”をネットで見たら、結構面白かった。
縄文時代の土器は出るけど、弥生時代のものは少ない。古墳があって国史跡に指定されてる。中世に力を持った一族が支配していたが、後に滅ぼされ、広々とした田園が残った。江戸時代になるとさらに新田が開かれて…明治になるとー陸軍が〜となるわけだ。
陸軍の施設はかなりなものだった。“軍都”と呼ばれていた。敗戦後はアメリカに摂取されたり、解放された土地に工場誘致を進め、多くの企業が進出し工業都市化し人口も増えた…
こんなことは調べればわかることだから、宿題の題材にはならない…なるけど、他の人と同じような内容のものになる。ただ、書き写すだけじゃんね。というか、そういう土地って日本中たくさんあるよ。
調べてみようかな。ムツキ市もなんかあるかな…って、これって逃げ? 現実逃避では?
あーもう、ほんと、もう、どうしよう…めんどくさいなぁ。ただ好きなことや興味があることを見聞きしてるだけじゃ、趣味になっちゃう。それをまとめて提出するのが学習? ただ、こうこうだったんです〜すごいですね、面白いですね〜これが好きなんですでいいじゃん。だめかな。




