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ラチサ  作者: 藤ノスエ
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22/33

22. 中学2年 5月 部活

 もやもやした気分もあったけど、加島っちと美術部に行った。

 3年生や2年生は歓迎してくれて、やっぱり嬉しいと素直に思った。

 1年生は“噂の先輩来たーっ”って感じだった…「先輩」なんて呼ばれちゃって、恥ずかしい〜けど、いい感じでもあるかなぁ、でも、やっぱり恥ずかしいーっ!

 三保ちゃんと羽ちゃんと3人で肩組んでぐるぐる回って、はしゃいだ。2人ともちょっと涙ぐんでて、心配させてたなぁと改めて思った。


 部長が卒業生から預かっていたという紙の小袋をくれた。

 毎年、3年生が記念品を1、2年生に送るのが、恒例になっていたらしく、それだった。

 手芸店に売ってるようなプラスチックのアルファベット(名前のM)に、プラバンで作った猫の顔が付けてあるチャームだ。

「可愛い」

ララっぽいグレーの猫だ。

 以前、ララの写真を見せたことがあったので、覚えてくれていたのだと思うと嬉しかった。


 加島っちもスマホに付けてて、名前の“H(春奈)”にソフトクリームのプラバンだ。

 ムツキ市の美術館に行った時に暑すぎて、売店でソフトクリームを3個買って食べていた。コーンの部分に“3”と描いてあるのが笑える。

 みんなそれぞれに合ったプラバンで、なんか愛情を感じて、ジーンとしちゃった。不登校になちゃったのに、気にしてくれて申し訳ない。


 美術部の顧問は先生ではなく、美術講師だ。外部の専門家ってわけだけど、あたりまえだけど、先生と呼んでる。一応教職資格は持ってる。普段は絵画教室の講師らしい。

 美術の先生はいるけど、1人なので、授業だけで、いっぱいいっぱいなんだとか。だから、担任も持ってない。

 でも、一週間に2時間の美術の授業を3学年各6クラスすべて見るのって、無理だ。だから、1、2年生3クラスずつを外部講師が担当して、美術部もフォローしている。


 顧問は、女性で背が高くて細身で金髪ショートカットで黒い服で、なぜかいつも白っぽいエプロン(もちろん絵の具とかで汚い)。話し上手で聞き上手で褒め上手、ちょっと幼稚園の先生ぽい。

 その岸野先生は教室に入ってくるなり

「なになに、礒田さーん。可愛いの付けてるじゃん」

とリュックに付けたチャームをめざとく見つけ触れた。

「わたしももらったよん、わたしのなんだと思う?エプロンだよっ!」

とギャハハと高らかに笑う。


 しばらく雑談してたけど、みんなそれぞれ作業を始めた。わたしは一応持ってきたA4のクロッキー帳に落書きした。

 ルカンシシー学園のキャラクターをいくつか描いた。

「“ノカ”だね?みんなルカンシシー好きだよね。うちの教室にもたくさんいるよ」

と岸野先生が言った。

「やっぱ、“ノカ”好きな子多いよね。ヒロインぽくて」

聞いていた3年生が

「わたしは“ワク”だなぁ」

と言うと

「おおぅ!お姉さんキャラだね」

「先生は?誰がいい?」

「“ダケ”かな」

「先生じゃん」

周りから笑い声が上がる。

“ルカンシシー学園”は魔法少女の学園が舞台のゲームで、キャラクター全員女子だけど、主人公はヒーローキャラ。

 ちなみに“ダケ”先生も女性だけど、なぜか声優がイケボの男性声優で、でも話し方は女性っぽく聞こえる。さすがにプロッて感じだけど謎。


 先生から紙袋を渡された。授業の教材キットだった。1学期に主に取り組む彫刻で

「鎌倉彫っていうと大袈裟だけど、わかりやすく言うとあんな感じ。コースターなんだけどさ」

と教科書を開いて見せ

「作り方が中に入っているから、礒田さんなら見ればわかると思う。お家でやってみて。できたら、わたしがニス塗りするからね」

 鎌倉彫の茶托が家にあるけど、使ったの見たことない。

「好きな柄でいいよ。猫ちゃんでもいいし。あっ、くれぐれも彫刻刀気をつけてね。柔らかい材だけどね」

と言い

「知ってると思うけど、3組金曜の5、6校時美術だから、よかったらおいでよ。そのまま部活出られるしね」

と言ってくれた。

 嬉しかった。嫌な気分にもなったけど、部活のみんなは優しくて…気を使わせているのかもしれないけど、来て良かったなと思った。

 今後どうするかは、今は考えないでおく。

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