22. 中学2年 5月 部活
もやもやした気分もあったけど、加島っちと美術部に行った。
3年生や2年生は歓迎してくれて、やっぱり嬉しいと素直に思った。
1年生は“噂の先輩来たーっ”って感じだった…「先輩」なんて呼ばれちゃって、恥ずかしい〜けど、いい感じでもあるかなぁ、でも、やっぱり恥ずかしいーっ!
三保ちゃんと羽ちゃんと3人で肩組んでぐるぐる回って、はしゃいだ。2人ともちょっと涙ぐんでて、心配させてたなぁと改めて思った。
部長が卒業生から預かっていたという紙の小袋をくれた。
毎年、3年生が記念品を1、2年生に送るのが、恒例になっていたらしく、それだった。
手芸店に売ってるようなプラスチックのアルファベット(名前のM)に、プラバンで作った猫の顔が付けてあるチャームだ。
「可愛い」
ララっぽいグレーの猫だ。
以前、ララの写真を見せたことがあったので、覚えてくれていたのだと思うと嬉しかった。
加島っちもスマホに付けてて、名前の“H(春奈)”にソフトクリームのプラバンだ。
ムツキ市の美術館に行った時に暑すぎて、売店でソフトクリームを3個買って食べていた。コーンの部分に“3”と描いてあるのが笑える。
みんなそれぞれに合ったプラバンで、なんか愛情を感じて、ジーンとしちゃった。不登校になちゃったのに、気にしてくれて申し訳ない。
美術部の顧問は先生ではなく、美術講師だ。外部の専門家ってわけだけど、あたりまえだけど、先生と呼んでる。一応教職資格は持ってる。普段は絵画教室の講師らしい。
美術の先生はいるけど、1人なので、授業だけで、いっぱいいっぱいなんだとか。だから、担任も持ってない。
でも、一週間に2時間の美術の授業を3学年各6クラスすべて見るのって、無理だ。だから、1、2年生3クラスずつを外部講師が担当して、美術部もフォローしている。
顧問は、女性で背が高くて細身で金髪ショートカットで黒い服で、なぜかいつも白っぽいエプロン(もちろん絵の具とかで汚い)。話し上手で聞き上手で褒め上手、ちょっと幼稚園の先生ぽい。
その岸野先生は教室に入ってくるなり
「なになに、礒田さーん。可愛いの付けてるじゃん」
とリュックに付けたチャームをめざとく見つけ触れた。
「わたしももらったよん、わたしのなんだと思う?エプロンだよっ!」
とギャハハと高らかに笑う。
しばらく雑談してたけど、みんなそれぞれ作業を始めた。わたしは一応持ってきたA4のクロッキー帳に落書きした。
ルカンシシー学園のキャラクターをいくつか描いた。
「“ノカ”だね?みんなルカンシシー好きだよね。うちの教室にもたくさんいるよ」
と岸野先生が言った。
「やっぱ、“ノカ”好きな子多いよね。ヒロインぽくて」
聞いていた3年生が
「わたしは“ワク”だなぁ」
と言うと
「おおぅ!お姉さんキャラだね」
「先生は?誰がいい?」
「“ダケ”かな」
「先生じゃん」
周りから笑い声が上がる。
“ルカンシシー学園”は魔法少女の学園が舞台のゲームで、キャラクター全員女子だけど、主人公はヒーローキャラ。
ちなみに“ダケ”先生も女性だけど、なぜか声優がイケボの男性声優で、でも話し方は女性っぽく聞こえる。さすがにプロッて感じだけど謎。
先生から紙袋を渡された。授業の教材キットだった。1学期に主に取り組む彫刻で
「鎌倉彫っていうと大袈裟だけど、わかりやすく言うとあんな感じ。コースターなんだけどさ」
と教科書を開いて見せ
「作り方が中に入っているから、礒田さんなら見ればわかると思う。お家でやってみて。できたら、わたしがニス塗りするからね」
鎌倉彫の茶托が家にあるけど、使ったの見たことない。
「好きな柄でいいよ。猫ちゃんでもいいし。あっ、くれぐれも彫刻刀気をつけてね。柔らかい材だけどね」
と言い
「知ってると思うけど、3組金曜の5、6校時美術だから、よかったらおいでよ。そのまま部活出られるしね」
と言ってくれた。
嬉しかった。嫌な気分にもなったけど、部活のみんなは優しくて…気を使わせているのかもしれないけど、来て良かったなと思った。
今後どうするかは、今は考えないでおく。




