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ラチサ  作者: 藤ノスエ
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20/33

20. 中学2年 5月 モモミ

 面談2回目も母と行った。1人じゃとても行けない。

 行くにあたり、ウィッグを買った。通信販売だけど、調べたら評判もよくてアフターフォローもしっかりしてた。

 元々の髪色がダークブラウンって感じだから、ダークブラウンの肩ぐらいの長さ。もう一つ、ダークブラウンにエンジ色の差し色が入ったのも買った。

 それに合わせて背中ぐらいまであった髪を母に短く切ってもらった。本当は坊主にしたいくらい。


 6月に校外学習があって、市内巡りだって。小学校じゃあるまいし…それに参加しないかと…

 班ごとに行くところを決めて、下調べ後、見学等してまとめて各クラスの廊下に張り出す。誰が見るんだよ?


 ハズキ市って何があるってことないんだよね。元陸軍の跡地だった、というのはよく聞くけどね。

 小学校の時だって、ゴミ処理場とか浄水場とか河川の親水センターとか、どこにでもあるような場所しか行ってない。先生も『なんにもないね』と言ってたくらいだもん。

 誰かの生家があるとか、有名な神社仏閣があるとか、綺麗に整備された公園があるとかがない。

 図書館が大きいくらいじゃない? ちょっと場所が悪いけど。だから大きいんだけどね。

 後は、このあいだ行ったミナツキ大学と病院。他にも大学の”ハヅキキャンパス“って言うの? そういうのは、いくつかある。研究施設みたいなものとか。工業団地もあるから、そっち系なら結構あるかもね。ほとんど“跡地だった”ところだ。

 隣のムツキ市なんて、美術館や偉人(?)の旧宅とか、フィールドアスレチックとか公園とかいっぱいある。

 公園は半端なくある。ムツキ市にある大学の附属幼稚園に通ってたので、遠足やらお散歩やらでいろいろ行った。

 川一本隔ててるだけで、どうしてこうも違うんだ。広さはハズキ市の方が圧倒的に広いけどね。


 校外学習の事前調査の時間が、来週月曜日の6校時にあるので、来ないか聞かれた。

 悩んでると、その後部活に出てみたら? だって。

 部活は行ってみたい。部活だけって言うのはできないらしい。まあ、そうだよね。授業じゃないし。

 考えてたら、

「班は席順で決めちゃってあって、席はね、出席簿順じゃないんだけどー」

と志賀先生はクリアファイルから何枚が紙を取り出して、

「あー、これこれ」

と座席表のコピーを見せた。教卓に貼ってあるようなのだ。

 縦に6列、横も6列で、36席あって、窓から1列目だけが1席多いので、37人なんだ。

 その席がわたしかと思ったら、わたしはその前だった。

「班はね、6人ずつね」

とピンクのマーカーで、6席ずつ括った。

「2班だけ7人ね」

他は6人だから、わたしがいなくったって大丈夫って感じか?

 クラスに誰がいるのかとみてたら、ノンちゃんや秋田さんはいなかった。秋田グループの子はいたけどね。

 わたし以外の6人は、全員同じ小学校。

 男子3人は同じクラスになったことあるし、1人は漫画クラブ。女子3人も同様で、やっぱり1人漫画クラブで今も美術部。他の2人も嫌な子じゃない。


 「モモミもいるんだ」

やはり同じ小学校で、漫画クラブで、美術部の桃井夕美の名があった。モモミと呼ばれていた。

 席は窓から3列目の一番前。3班だ。

「あっ、桃井さん?仲良いの?」

「6年の時、同じクラスで、その前も何回か一緒だったことあるし、美術部で仲良いと言えばいいです。加島さんも同じような感じだったんで」

同じような感じってと思いつつ、要するにオタク仲間ですってこと。

 加島春奈は座席表で、わたしの隣だ。だから同じ班。

「加島さんも?」

「はい、そうです」

”そうです⤵︎“じゃなくて、”そうです?“って言っちゃった。だって、志賀先生の聞き方に含みがあるような気がするから。

 先生はひと息ついて

「実はねぇ、桃井さんも学校来てないのよ」

「えっ?なんで?」

って言っちゃったけど、人のこと言えないけど、なんで?

「始業式には来たけど、次の日から休んでるのよね。だから、ひと月ぐらい?こんなに長く休むと思わなかったから、礒田さんや加島さんと同じ班にしとけばよかったなぁ…今更、変えられないしねぇ」

 先生は3班のところを指差して、

「桃井さんが苦手な人っていそう?わかる?」

と聞く。パッと見ても、特に気になる感じはしない。モモミはおとなしいので、たとえば秋田グループとかは苦手だろうなと思うけど、近くじゃない。

 「でも、席決めって、モモミもいなかったんですよね」

始業式に席決めしたってことないよねと思ったら

「うん、でもね、その席決め、始業式に座ってたのとほとんど同じなのよ。視力が悪い人と交換とかはあったけど。うまい具合に男女もバラけてたし、前から見てて、いい感じだなと思ったのよねぇ。だからいいよねって言ったら、みんないいって言うからさ…まあ、嫌って言い出せない雰囲気はあったかもね」

 そしたら、ずっと黙ってた母が

「モモミちゃんて、休み多い感じだったかな」

と言った。確かにそうだ。

「個人情報であんまり言っちゃいけないかもですけど、授業参観の懇談会でよくお母さんが”休みが多くてすみません“みたいなことおっしゃってましたね」

「あっ、そうなんですね。確かに昨年度はお休みが多かったみたいで、個人情報ですけど」

と2人で苦笑。母も人のことで笑ってる場合じゃないよ、まったく。

 で、わたしの席はもともと1人席だったが、同じ班の小俣が変えてくれたとか。

 小俣も4、5年の時同じクラスの男子で、ヒョロッと背が高い。先生たちより高い。


 「月曜日考えといて〜」

と別れ際、また言われた。

 どうしようかね、部活は捨てがたい。みんなとしゃべりたい。三保ちゃんや羽ちゃんに謝りたい。

 三保ちゃんは、春休み中に”ういろう作ったよ!おいしかった〜また何か教えて!“とメールくれた。

それだけだけど、もう嬉しくて嬉しくてたまらなかった。ひょっとして口もきいてくれないかもと思ってたから…会ったら泣いちゃうかも。


 そんなこと考えながら、校門に向かって母と歩ってたら、渡り廊下から、大声で

「礒田さ〜ん」

と呼ばれ、振り向いたら横本先生だった。

 三保ちゃんのこと考えてたから、むかついたかけど、一応会釈した。

 横本先生は上履きのまま、走ってきて

「あっ、横本と申します。今、姿が見えたので声をかけちゃいました。元気にしてる?」

と母に言い、わたしに言う。母も会釈して

「ご心配おかけしてまして、すみません」

と言うと

「いえいえ、なんの力にもなれなくて、申し訳ないです」

と満面の笑み。

「今年は国語担当できなくて残念です…志賀先生が担任になられたしね。あっ、昨年、国語教えてたので」

と母に説明。

母は”まあ、そうですか“って表情。うまいね。

母だってそんなこと知ってますよ。

”生徒追い詰め泣かせ“女だってことは。

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