19. 中学2年 4月 志賀先生
春休みなんてあっという間に終わってしまった…
始業式の前日に、新しい担任から電話があった。
「志賀先生だって、女の人だったよ?知ってる?」
「えー? わかんない」
「声は若そうだったけど?」
「新卒かなぁ」
「新卒は担任持たないみたいだから、転勤されてきたとかかな?」
と、思ったら、昨年度は3年生の担当だった。
担任は持たないが、主に3年生を見てた。
そう言えば、見たことあった。
入学直後に、国語の“生徒追い詰め泣かせ”女の横本先生と一緒に、国語辞典と漢和辞典の説明会をしてた先生だった。国語科の主任とか。
声は覚えてなかったけど、確かに若い。若々しいというか、若い。若い人って感じ。でも多分大塚先生と変わらないくらいの年齢だと思う。大塚先生って何歳だったんだ?
「一度、学校に来ませんかぁ?」
と言われて行った。
抜毛が進みすぎて、ウイッグを被らないと外出できなくなってた。幅広のヘアバンドもしてたけど、追いつかなくなった。
アニメのコスプレをやりたくて、以前買ってあった茶髪のがあったけど、いかにもコスプレぽくて、髪の毛はテグスみたいで、普通に被ってたら目立つ。
コンビニとかクリニックに行く時は帽子をかぶってたけど、学校じゃダメかなぁ。
「別にいいんじゃない?はじめに断っておけば。ダメとは言わないと思うけど?」
と母は言った。
帽子は事前に母が聞いてくれた。かまわないとのことだったので、ホッとした。
『どうぞどうぞ、眞悠さんのよいように〜』
って言ってたって。
バケットハットをかぶって行った。
志賀先生と、始めにまた白石先生が同席した。
白石先生は修了式後のホームルームの様子を話してくれた。
大塚先生が辞めることは、もうすでに知らせてあったけど、大塚先生が話し出すと、数人の女子が啜り泣きし出して、目を拭いている男子もいた、と言った。
だから何だって言うの? わたしが泣くとでも? 一応、聞いていたけどね。
母は神妙な顔つきしてた。いろいろ、心残りがおありでしょうねって感じ?
志賀先生は、年度はじめに提出する様々な書類を出して、ほとんどは親が記入するものなので、母が聞いてた。
後は教科書の類い。まあまあたくさんある。
志賀先生は国語の先生だから、“追い詰め泣かせ”の横本先生じゃなくてよかった…と言っても、不登校だから関係ないしね。
「社会は“ちゃん前”じゃないんだよぉ。みんな残念がってたけど、礒田さんは“ちゃん前”あんまり興味ないかなぁ?」
「はぁ、そうですね」
本当だよ。
ちゃん前は1年の担任になったとか。さぞかし、モテまくってるんでしょうね。卒業式終わりでも女子(もちろん卒業生)に囲まれてちょっとした騒ぎになったと面白そうに話し、相変わらず、職員室前でちゃん前待ちの女子がいて、賑やかだとも言った。
そしたら母が、
「きっと幼児の頃から、そんな感じだったんでしょうね」
なんて言うから、志賀先生も乗っちゃって、
「そうなんですよ!慣れちゃってるって言うんですか?なんとも思ってないみたいな、装ってるのか」
「慣れちゃってるって言うのはあるかもですね」
「ねぇ〜」
なんて、先生と母が、その辺のおばちゃんの“井戸端会議”で、なんなの?
志賀先生はお子さんが2人いて、高2の男の子と中2の女の子。
わたしと同い年の女の子は、美術部でやっぱりアニメやマンガが大好きなのだそうだ。だからか、先生もよく知ってそうで、タイトルをいくつか挙げてた。
母よりは若いだろうなと思うけど、そんなに差はなさそう。(母は高齢出産でわたしを産んだので、みんなのお母さんよりはちょい年上)
大塚先生のお子さんも2人で2人とも大学生なんだって、と完全に世間話してた。
月一で面談することになり、先生も授業がない火曜日の3校時目になった。先生のおしゃべりに巻き込まれちゃって、学校に来ることになっちゃったじゃん。学校来るの嫌だったのにさぁ。
今日は教室だったけど、次からは会議室や空いてる部屋でやるねと言われた。もし、そのまま、教室行ってもいいなとか、授業受けてもいいなと思ったら、行ってもいいからねとも言われた。
迷惑なんですけど? めんどくさいなぁ。




