13:聖女会襲来・本番
「これにて一度、皆様にはご退出いただきます。面談は一応、一時間をみておりますが内容によって前後することがございます。状況は適時お知らせしますので皆様連絡の付く範囲でご待機くださいませ」
モリンの誘導によりゾロゾロと撮影を終えた取材陣が応接室から、さらに広間からも退出していき、銀行跡の屋内は一気に静けさを取り戻した。教団用人もルールーの事務所要員も一度完全に部屋から締め出される。応接間に残ったのはルールー・レレ・戻ってきたモリンにニナッタ・ハァリカ・テマイラの六人だけ。この内聖女四名が着座して正対し、従者用人は横に控える。
「フィリアド聖女会で聖女用人筆頭を務めております、アンザリ テマイラと申します。本日は突然の訪問を快く受け入れてくださいまして、恐縮いたしております」
深々と一礼するテマイラにルールーとレレも軽く会釈する。
「私どもとしましては組織の括りがなくとも、御身のお噂を耳にした時からお会いしたく思いまして、機会を窺っておりました」
型通りに挨拶が続く。
「本日ここに罷り越しました聖女は、序列第三席・ニナッタフィリアド。序列第八席・ハァリカフィリアドの二名でございます」
「ご丁寧にありがとうございます。私共のような零細のものに対し、格別に高位の聖女様との面談をご用意いただきまして恐縮至極に存じます。
レレなのに言葉が丁寧すぎる。
「年齢順の自己紹介といたしまして、私は聖女見習い歴七年のレレ。隣が聖女見習い歴四年のルールーと申します」
そういえば、そんな設定あったな。
「私共としましては、本来聖女には見習いも本職も区別は無いものと考えておりますので、同類としての忌憚ない会話などしていただければと存じます」
これにはレレもモリンも「ほお?」となった。が、
「そこでまず、僭越ながら最初に私から一つ、お教え願えればと存じますが」
ん?
「貴女様におかれましては、この後いつごろから、人類の粛清に着手なさるのですか?」
んん?
「高位魔族のメイフェリ様」
「「!!!!!!!!!!!!!!!!!?」」
瞬間、飛び出したモリンが振り上げた両手の指先は太く鋭い鉤爪となり、更に一段伸びてテマイラの喉笛目がけて突き刺さりー
「その刹那を、なかったことにする」
ルールーの一声で、時が巻き戻った。厳密に、テマイラが話し終えた瞬間まで。
「控えなさい。あれは、お前たちが敵う、相手ではない」
モリンは元の位置で自らの首筋に手を当てて固まっていた。息が上がり、冷や汗が止まらない。レレも実は一瞬遅れで飛び出そうとしていたが、彼女には巻き戻る寸前にモリンの首がちぎれかかるのが見え、それの残像が目に焼きついたようになって震えが止まらない。
…いや、時計の秒針は巻き戻らず刻み続けている。モリンとレレの行動、それへのテマイラの反応だけが、丸ごと((なかったこと))になったのである。
「誓言」
ルールーは胸の高さで軽く両の平手を上にかざし、小指だけを上に曲げた状態で発声する。
「私が人里に棲まう目的はそこには無い。ただ、私の邪魔をする存在は全て排除する」
「これで良いかな?大聖女ティーリオフィリアド」
「えっ??えええっ???」
状況に飲まれて絶句していたハァリカが、ここにきて頓狂な声を上げた。
ニナッタは既に知っていた。こうなることも、向かい合う聖女・少女の正体も。厳密には昨日の晩、姉様の根源を知ってしまった時に。そのつもりで見つめる『終焉の魔女』は、いたく可愛らしかった。
××××
「厳密には私は大聖女の生まれ変わりとかいうものでは無いと思います。ただ、彼女の記憶とか人生節々の感情のありようがそのまま降りてきて、腑に落ちているような。彼女同様の聖力というものも、その記憶が使わせてくれているのか、今の自分に元からそれだけの資質があったのかも判然としません。ただしー」
「教団を、それを支持したり恩恵にあずかって過ごしているものは、あまねく潰さないといけないという感情が全てに優先しているので、これは大聖女の遺志なのだろうと認識しております」
「私はそれを叶えるために幼少期自らの力を隠し、然るべき時に備えて現代の敵の仕組みや勢力のありようについてできる限りの情報を集めて過ごしました。幸い、商家に生まれたので女だてらに書物や数字に明るくなっていくことへの邪魔は無く、むしろそのことで教団に好意的と勘違いされるのも不快ながら都合はよかったです」
椅子を二脚追加して全員着席して改めて面談を続けている。当初予想されたものとはまるで様相が違ってしまい、状況をいち早く理解出来ていた三名以外〜レレ・モリン・ハァリカらは自身らの場違い感と折り合いがまだ付いてない。
「そうこうしている内に、末の妹・このニナッタですが…掌握の資質を発現させたので、また違う手段での、教団に対しての侵食する手立てを考えました」
「貴女の、力で嵩上げして妹を、聖女として送り込み、教団内部から、崩そうとしたか」
「ご明察です。妹は全てを説明せずとも、たとえ幼児であったとしても((なんのために姉がそのお願いをしているか))を理解してくれましたから。いえ、肉親としては最低なのですが」
「!!」
ハァリカにとって衝撃的な話しかない。自分を励まし聖女として教団内でうまくやっていけるよう、なにくれとなく手配してくれていた人たちが、教団を何年にも渡って憎み、潰そうとしていた?
「妹の後見として一緒に教団に入って、まず感じたのは私が知っていた時代と何も変わっていない。むしろ、より悪くなっているところが多すぎる。ということてした。特に事情を知りすぎたり、能力的に用済みになった聖女の活用〜貴族や有力者たちにばら撒き、自らの権勢拡大に活用していくなどは、かつての私の代でなんとか解消しようと力を入れていた部分ですので」
ハァリカは身震いした。それを恐れたから私は〜同時に、昨晩の出来事が頭によぎり、頬が紅潮する。
「確かに、貴女は『あの晩』全てに怒って、いたな」
「はい、『全て』に。その結果がー」
「「トルトの、呪い」」
両者正体バレ。




