故郷
求めていない中本感が出てしまったような気もする。
ある日青年がとあるゲーム──地図アプリサービスによる世界の一写真をみて撮影地を当てるゲーム──をプレイしていると机に積まれた書類の脇に偶然にも自らの幼少期の写真を発見した。青年は最近自宅を整理している最中で、片しそびれが机にも多く残っていた。
人間の記憶力というものはいつもいい加減だ。「私は潮風の感じるところで育ったと思っていたが...」写真の中の自宅はまるで山奥だ。青年は嘆息した。
他にも色々忘れていそうだな。ちょうど最近物置から発掘したアルバムを久方ぶりに開く。
アルバムを開くという行為。あまり覚えていないことが分かりひとり気恥ずかしさを感じていながらも青年は郷愁を覚え、玉手箱を開けるかのような心のときめきに何とも言えない懐かしさ。しかし直後に青年は青ざめる。本当に一切を覚えていないのだ。
ページをめくる。知らない土地に知らない家。ページをめくる。私の母は黒髪だったか。ページをめくる。
先ほどの何とも言えない懐かしさにすら嫌悪感を覚え、青年は眩暈に襲われた。
その時、PCからゲームのマッチングを伝える電子音が鳴った。どうやら対戦相手を探したままアルバムを開いていたらしい。PCの元にふらふらと進んだ私はスッと頭の冴える思いをした。
PCから感じる潮風と懐かしい景色。何とも言えない懐かしさなどというものではない。長年の霧がようやく晴れたのだと私は感じた。そうか、私はИ́горь Евге́ньевич Та́мм。Давай, Давайте вернемся на мой любимую родину.
青年は小型機に乗り込み、ウラジオストクを目指した。
ロシアの領空侵犯で撃墜された。
存 在 し な い 記 憶




