カーディ・オー
冒険者となって少し。ちょっと慣れてきた頃。
パーティに入るのがよいかとも思うけど、まだいろいろと考え中。
そして、そんな時、依頼完了の手続き中に声をかけられた。
「あ〜、君がヒュリちゃん?」
振り向くと、うすく紫がかった白い髪に赤い瞳の男。ツリ眉にややタレ目、片耳に銀色のフープピアス。グレイスーツ姿の長身細身の男が胡散臭い笑顔をみせてカウンターにもたれかかっている。
うわ、絶対、チャラ男だ!
心の声を封印して
「あの…どちらさまですか?」と聞いたが、ついつい警戒心が剥き出しになってしまった。
だって、明らかにカタギじゃない。
周りの人たちにも微妙に注目されている気がする。
なんとなく、周りを見渡すと、ガレンの姿を発見。
ホッとしたのもつかの間、ガレンの顔には「うわ、きた!」という表情がはっきりでていた。
何何、知り合いなの?
「はーい。自己紹介するね〜、僕、カーディ・オー。これからよく会うと思うから、よろしくね〜。で、早速なんだけど、ガレンくん、借りてもいいかな〜」
はぁ? ガレンを借りる? どゆこと?
首を傾げていると、カーディはクスクス笑いながら
「あれ〜、許可いらないのかぁ」というので、イラッときて
「はい、別にいらないですけど?」と答えてしまった。
「そっかぁ。じゃあ、ガレンくーん。ヒュリちゃんの許可いらないらしいから、
ちょっとお話しよ〜」とにこにここちらを見ながら、後ろを振り向きもせずにいう。
何?
ガレンが後ろにいるってバレてる?
思わず、目を見開いてしまった。
カーディはくすくす笑いながら、ヒュリに向かって「じゃあ、またねぇ」といってから、後ろにのけぞり、
「ガレンくん、みーっけ☆」と、引きつっている表情を隠しきれないガレンに向かって楽しそうに声をかけたのだった。
あの人、何者なんだろ、とついつい先程のあやしい人を思い出している。
今、おばさんのお店で店番中です。
ガレンはヘビに睨まれたカエルのように、なんの抵抗もせずにカーディに肩を抱かれ、部屋をでていった。
いつも大人っぽい印象だったガレンが、なんとなく年相応な感じになっていたのが意外だった。
ガレンを待とうか一瞬考えたけど、約束していたわけでもないし、待っているのも変だと思い直してそのまま帰宅。
断じて、めんどうごとから逃げたわけではない。
なーんて思っていたら、「ね〜、おすすめのパンがなにか教えてくれないかなぁ?」と声をかけられた。
顔を上げると、カーディ! どうしてここにいる。
「うわっ、なんでここにいるんですか!?」と、のけぞりながら反射的に叫ぶと
「う〜ん、なんとなく。ヒュリちゃん、気になっちゃった」と軽く返された。
「うわ、ちょっと気持ち悪い。なにが。どこが」
「え〜、ひどいな。なんとなく。だめ?」といって首をかしげる。
全然かわいくない。
「で、何がおすすめ?」
「えーと、全部おすすめですよ。最近、メロンパンが隠れた人気」
「じゃあ、君の好きなものは?」
「くるみとドライフルーツのパンが好き」
「じゃあ、そのパンとメロンパンあるだけもらおうかな」
「え? メロンパン全部!? 十五個ありますよ?」
「うん、知り合いにこういうの好きなやつがいるのよ…
ヒュリちゃん、お仕事中みたいだからまた来るね〜」といってさくっと帰っていった。
いや、別に来なくていいんだけど。
しかし、メロンパン大人買い、すごいな。うちのメロンパン、最近すごい人気。
マダムも好きだし、騎士団の副長さんも隠れファンだ。
メロンパン一個は副長さんがもしかしたら来るかもしれないので、とっておきしました。
あの人、なんなんだ。不思議だ。




