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登録保持クエスト_婚活草ってなんですか?

久しぶりの第二の家族の団欒は楽しかったです。女三人、怒涛のしゃべりでおじさん、静かだったな。でも、うんうん、と頷いていて、楽しそうでした。


そして、翌日、採集です。

お姉さんたちの伝言、ばっちり。ちょうど森に入る道なり、入口に二人。


「久しぶりーー!来てくれたんだー!」と駆け寄る。

「おはよ!変わんないねぇ」

「おはよう。昨日伝言うけてびっくりしたよ」


二人とも変わらなくって、嬉しい。

さっそくお土産渡さないと。

会えるかなと思って持ってきてよかった。


「うん!会えそうだからお土産持ってきた。キノコスナックとレモン味蟻入りチョコ。どっちがいい?じゃんけんで勝った人が好きな方選んでください」

「なに、アリ入りって?」

「それがさー、ほんとの蟻なの。でもね、これがけっこういける!虫嫌いのわたしが言うのだから説得力あるでしょ。キノコスナックもおいしいよ」

「まじか。さすがヒュリ」

「変わんなくって、ほっとするわ。蟻で和むと思わなかった」

「ふふふ〜。どっち選ぶ?」


じゃんけんでカヤの勝ち。カヤ、アリンコチョコを選びました。でも結局、二人とも両方味見するって。



「……で、今日は白根草と霧露草を取れば終了だね」

チョコ噛りながらルカ。


「すぐ終わるね」

キノコを口に放り込んでカヤ。


「うん。それで終了。あ、ディアナさんが見かけたら婚活草の採集もしてみればって。今が採集時期なんだって」

「あ〜、最近貼り出してきたやつ!」

「見た見た。動く草でしょ。受粉相手探し回るという…」

「花と根をとればいいとあったね。ディアナさん、新人にはきついかなっていってた」

「凶暴とは書いてなかったけど。普通に採集だったよね」

「切ったら臭いとかなのかな」

「まぁ、歩いてるらしいから、遭遇したらだねぇ」



楽しく話しながら、本来の目的の採集を終えた。ひと安心。これで登録抹消の心配なし。

やったーーー!と思った時、わたしたちは遭遇した。

いや、正確にいうなら、見かけた。

ちょっと離れた所だったけど、草が歩いてるなんて、やつしかいない。


油断禁物と思って様子を見つつ、後をつけたけど、全然危険な感じがしないんだよね。

なんとなく、ランランランと鼻歌を歌いながら歩いてる感じ。いや、鼻歌聞こえないけど。


ルカが意を決したように、囁いた。

「まず、僕がやる」

「お、さすが!」

「リーダー!」


声援を背にルカが忍び寄り、葉をむんずと掴んだ。

婚活草は根っこをわしゃわしゃさせるだけ。

あれ?なんか拍子抜け。

ルカも戸惑ってる。

あれ?きついって何が?どこが?

全然危険なことないじゃん。

すぐ捕まえられたし。


「あれ?ルカ大丈夫?」

「しびれたとか?」

「……いや、全然なんともない」

わしゃわしゃわしゃ……根っこが動いてるだけだ。

「……」

「……えーと、とりあえず、採集する?花と根っこだよね」

「だね」


カヤがナイフを取り出す。

ルカはそのまま婚活草を持っていて、わたしが花を摘み、カヤが根を切ることになった。


「じゃあ、行きますか」

「うん」


せーの、花を一輪つまんでプチッと、根っこをナイフでザクッと。


「あーーーーーーーっ!!」

「うわぁぁーーーー!」

「えぇぇぇーーーー!」

「ひぇぇぇーーーー!」


うわ、びっくりしたー!婚活草、どっから声だしてんの!発声するとこないじゃん!

ルカ、びっくりして放り投げてるし!

婚活草は放物線を描き、落ちた。

あれ、なんか痛そう?起き上がらないよ?


「草、大丈夫!?」

カヤが駆け寄っていた。


「カヤ、これを!」

ルカがポーションを取り出す。


「あ、待って、草には強いかも。お水で薄めたほうがいいかも」


わたしがまずは水魔法でミストをかける。その後、ルカがポーションを注ぐ。

婚活草はまだ倒れたままだ。ちょっとヒクヒクしてるみたいに見える。


「大丈夫かな」

「ポーション注いだし」

「あ!光シャワーするわ」


ぐりちゃんにいつもやってるから、大丈夫。できる。

手をかざし、キラキラした光のミストをまずは全体にまとわせる。切られた根の切り口にはより丁寧に光を届けるようにする。淡い金色の光がゆっくりと染み込んでいく。


……どうやら、落ち着いてきたようだ。婚活草がゆっくりと起き上がってきた。


「はぁ、よかった」

「どうなることかと思った」

「あせった」


三人で見守ってるうちに、婚活草は完全に起き上がった。

三人同時に安堵のため息。


「……もう、採集は無理だ」

「同じく」

「同じく」


ルカはわたしたちをひしと見つめ、言い出した。

「もう今日の目的は達成したよね。僕はこれからお詫びに婚活草の手伝いをするよ」

「え、何するの?」

「相手を探す手伝いをする」

「なるほど!ナイス!手伝う」

「賛成!わたしも参加する!」

「全員賛成だ!」

「がんばろ!」

「おー!」


それから婚活草はまた移動をはじめた。根っこ切っちゃったから、前よりゆっくり。

心が痛い。ごめんね。

婚活草を見ながら、周りを見渡すもしばらく新たな婚活草は見つからなかった。

やきもきしながら今日はもう無理なのかもと思い始めた時、カヤが叫んだ。


「見つけた!右およそ2時の方向!」

「いたー!」

「誘導だ!」


発見。婚活草にストレスを与えないようにしつつ、誘導していく。


……と、婚活草はお互いに気づいた。

お互いを認めた途端に婚活草たちは根っこをわっしゃわしゃと動かしながら全力疾走、走り寄る。


そう、お互いの存在を認めたのだ。婚活草AとBが出会った。

そして、勢いのまま抱き合う。


ぴとっ 


花と花をくっつける。 

「キスしてる〜」「ほんとだ、キス!キス!」イタチペアがうるさい。


婚活草たちは妙に幸せそうに揺れてる。 

「うん、幸せそう」

「よかったねぇぇぇ」 

イタチペアがほっこりしている。


ルカが言う。

「いや、これは受粉だね」

「受粉だろ」おっさん。


誰?と思ったら、ベテラン冒険者らしきおっさんが、「新人だな」と笑って立っていた。

そして、ベテランおっさんは「はい、お幸せにー」といいつつ、

おもむろに婚活草を掴み、

ザクッ


婚活草

「あーーーーーーーっ!!」


新人三人

「あーーーーーーーっ!!!」


二草、三人の叫び声にもまったく動揺せず、「受粉した瞬間に根っこの薬効が最高になるんだぞ」といいつつ、ほれ、と投げてよこすおっさん。

確かに根っこは受粉前にくらべて、ぷっくりと膨らんでいる。


「これが一番いい状態だ。覚えとけ」と笑いながら教えてくれた。

いや、いい人なんだろうけど。


「新人はだいたい心をえぐられるんだ、でもな、一週間もすれば慣れる」といいつつ、

「じゃ、またな」とおっさんは去っていった。


無言。三人そろってフリーズ。


どのくらいの時間がたったのだろうか。のろのろとルカが言う。


「慣れるのか、でもさ、これを慣れるって大事な何かが自分からなくなる気がするよ」

「そうだよね。人としてどうなの」

「そうなりたくないよね」


……と言っていた三人が、一週間後、どうなったかは誰も知らない。

(開花時期が過ぎたので)





婚活草(正式名:アモルラディクス・ヴォキフェランス Amorradix Vociferans)

開花時期にだけ受粉する相手を探すため、放浪する。茎の太さに対して薬効人参のような複数本の太めの根をもつ。この根を動かし移動する。こんもりとした葉を持ち、花は複数同時に咲く。また、茎が胴のようで、ちょっと人型に見えなくもない。


この時期の婚活草は花、根が採集対象となっている。滋養強壮効果あり。

受粉直後の根は最高の薬効であり、ぷっくりとした形状の根に変化する。

このタイミングで採集することを勧める。


唯一のネックは、根っこを切る時、花をとる時に、「あーーーーーーっ!」と叫び(どこからか不明)、めっちゃやりにくい。


新人はけっこう心をえぐられる。

そのため、新人は採集後に婚活草にポーションを注いだり、他に見かけた婚活草がいたら出会わせるように誘導したりするなど、ついつい手助けをしてしまうのが、この時期の風物詩でもある。



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