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誰もわかってくれない

「は?」


ここどこ?うそでしょ。屋根の上?

眼下には庭。何これ?倒れそうになって、よつん這いになる。手のひらに茅のチクチクした感触。夢じゃない。


朝のトレーニングを終え、家の中に入ったはずだったのに。一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。


「えー!?」

叫んだ瞬間、リビングにいた。

え、どういうこと?


……これは、前に聞いた急に転送されることがあるというあれか。あれなのか。

完全に忘れてた。


でもさ、屋根の上って、なくない?前に聞いた時、うちの中で転送されるって言われた気がしたんだけど……


うわ〜、トイレとかお風呂でばったりとかやだな〜。

いや、まだばったりはマシだ。寝てる時に屋根もやばい。

お風呂でゆったりが急に屋根、なんてなったら恥ずかしくて死ぬ。

おまけにシャンプー泡だらけ、裸で屋根とか……変質者じゃん。

こわっ。


「ピ!」

「うわ、びっくりしたぁ。ねー、今、屋根に飛ばされたんだよ!」


ぐりちゃんがきたので、早速報告する。

ぐりちゃん、最近気がつくと横にいたりするんだよね。


「ピー」

「いや、大丈夫じゃないって」

心配するなって言われてる気がする。

「そりゃ、翼があるあなたにはわからないんだよー」

訴えるも、

「ピッピィー」

帰っちゃった。ひどいじゃないか。



気を取り直して、朝ごはんの用意。

もう、やる気が起きないので、おかゆにします。

白ご飯使えば簡単。チキンスープにお塩少しでコトコトさせる。

後は常備菜をだすだけ。そぼろ、青菜の昆布酢漬け、煮卵。

あ、あと、生姜汁とお砂糖とホットミルクでとろとろデザートにしようかな。

お隣のエルナさんに教わったやつ。

トロトロになる時と失敗して固まらない時があるんだけど、固まらなくてもおいしいから別に気にしない。

おかゆで物足りなかったらつくろ。


しばらくしてリサさんが起きてきたので、さっそく今朝の出来事を報告する。


「おはようございます。ねぇ、リサさん!今朝、屋根に飛ばされました!」

「ふぁぁ…おはよう。……って屋根に飛んだ?」

「はい。転送って家の中だけだってんでは?」

「あ〜、今までそうだったぞ」

「おうち、壊れちゃったんでは?」

「いや、そんな感じはしないけどな。危ないことはしないぞ。大丈夫だ」

「でもこれからは変わるかも!だって、屋根に飛ばされたし!」

「飛ばされたとしてもすぐに戻ったんだろ。危なくないだろ」

「えー、なんで今回だけ屋根に?」

「そりゃ、わかんねぇわ。家じゃねぇし」


そういうと、おかゆに煮卵をいれて食べ始めてる。

師匠、豪快なんだか、がさつなんだかわからない。いや……きっと両方だ。

わたしの繊細な気持ちなんてわからないんだ……とブツブツいいながら、お茶をいれる。


……その後、二人してしっかり、生姜ミルクを食べました。

精神統一できていなかったせいか、失敗したけど、美味しかったです。


そして、リサさんはやることがあるといって、朝ごはんの後、さっさと研究室に行ってしまった。

冷たい師匠である。


わたしはといえば、分離魔法は簡単なものは出来るようになった。イナゴの欠片くらいならできる。でも例えば、布のシミとかはまだできない。だけど、服についたばっかりのケチャップならできる。おもしろいよね。


やっぱり、染み込んだ液体はなかなか難しい。わたしのイメージがうまくいってないのだけど。思考のくせみたいなものを感じる今日このごろだ。

布のシミって地味だけど、これができたら他にも応用できるんだよねぇ。

でも、まだまだ初級レベルの練習が続きます。


今日は図書室で自習……しょうがない。本でも読むか。

あ、でも、トロムさんがいつの間にか作ってくれた家庭菜園の野菜をお隣に持っていって、ついでにヨルちゃんにちょっと癒やされようかな。



数日後、また屋根に飛んだ。二回目になると多少慣れて、「またぁ?」と思う余裕がでてくる。

人間、何事も経験なのかもしれない。

すぐにまた家の中に戻される。いたずら?

なんなの?わから〜ん。自習で図書室にいるけど、集中力が続かず、机に伏せてグダる。


そうしたら、なんか腕をポンポンと軽く叩かれている感触。

ふと顔を上げると、なんと、トロムさんがいた!初日に会ってからずーっと姿が見えなかったトンガリ帽子のちいさなおじさん。人見知りなのに。どした?


「トロムさん?」と尋ねると、うんうん、とうなずく。

おじさんなんだけど、ちょっとかわいい。

「どうしたの?」という問いに、う〜ん、というように腕を組み、顔を伏せる。

何考えてるんだろ?と見ていると、片手をあげ、上を指差す。

「上?」見上げて、すぐにトロムさんをみると、帽子を脱ぎ、両手で髪を掴み、下に引っ張り、手を離す。

「え?なに?全然わからない」

また、同じ動作をするトロムさん。

あ、今度は微妙に顔芸も入ってる。

「なに?髪の毛どうにかしたいの?……抜け毛ひどいの?」

違う違うというようにぶんぶんと首を振られた。

「ごめん。ほんとに何言いたいのかわからない」というと、がくんと肩を落とし、とぼとぼと帰っていった。


「ちょ…トロムさん!」と声をかけるが机の端に行くまでに、徐々に姿が消えていき、透明小人になってしまったようで、もう姿が見えない。

「えー、トロムさん、ごめーん」


ちいさいおじさんはデリケートな方のようです。

でもさ、あれは誰でもわからないと思うよ。



あれからトロムさんの姿は見かけない。まぁ、かなり落ち込んでたみたいだから、しばらく姿を見せないんじゃないかな。

一体、言いたいことは何だったんだろうと考えるもわからない。

最近、よくわからないことだらけだ。


図書室で必読本を積み上げて読書しようとするも、頭に入らない。

もう無理せず、まずは気になることを整理することにした。

頭の中で考えるだけだとぐるぐる回ってしまうので書き出してみる。


・屋根に飛ばされる → 今までなかったこと

・トロムさんが姿を見せた → 伝えることがあるらしい

・上を指した

・髪の毛を掴んで下にひっぱる

・顔芸がついた → ちょっと悲壮感あった

・退場する時、消えた


……これくらいかな。

ま、退場する時に消えたのは外していいか。


あれ?屋根、上で共通点あるじゃん!あ、鳥肌立ってきた。上に何かあるんだ。

髪の毛ひっぱる?ここ、わかんないな。


……もう一度、屋根にいかないとだ。


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― 新着の感想 ―
久しぶりのぐりちゃん登場。いつもどこに帰るんだろう。 トロムさんの訴えと家、気になります。
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