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フィルム36枚じゃ、君を撮り足りない。 〜きみに感光(こが)れる、写真部の初恋〜  作者: ゆあ


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12.プリント写真

 そして——

 ついに、このときがやってきた。

 待ちに待った放課後!


 いや、正確には朝からずっと待ってたけどさ。

 授業中も楽しみでしかたなかったせいで、先生の話を聞きながら時計をちらちら見ちゃった。

 あと何時間?

 あと何分?

 終礼が終わったらダッシュで校門に向かおう!って、そんなことばっかり考えてしまっていた。


 だって、今日はオレが初めて自分で撮った写真を見る日なんだ。

 ワクワクが止まらないのはしかたないだろ?


 だからこそ——

 放課後を告げるチャイムが鳴った瞬間、オレは勢いよく立ち上がった。

 そして、小坂先輩と校門前で合流し、昨日訪れたばかりの写真屋さんへと向かった。


◇ ◇ ◇


「はい。次、プリントするなら、先にベタ焼してから選ぶといいよ」

 写真屋さんのおじさんがちょっと苦笑いしながら言ってきた。

 ベタ焼き?

 なんだろ……たい焼きの仲間かな?

 でも、プリントって言ってたし、多分写真に関係することだと思う。

「はい!次はそうしてみます!」

 ん~……わかんないから、あとで小坂先輩に聞いてみようかな。

 オレはおじさんから写真の入った封筒を受け取り、外で待ってくれている先輩の方に足早で戻った。


「小坂先輩、お待たせしました!」

 ぼんやりとディスプレイに飾られている写真を眺めていた先輩に、オレは声を掛ける。

 先輩は一瞬だけ肩を震わせるも、すぐにオレのほうを見てくれた。

「そんなに待ってない」

 ぶっきらぼうな言い方だったけど、それでもオレは嬉しかった。


「写真、確認するんだろ?駅前のハンバーガー屋でいいか?」

 先輩はスマホで時間を確認したあと、そう言ってくれた。

「はい!ありがとうございます!」

 オレは、すっごく嬉しかったんだ。

 初めて撮ったフィルム写真。

 どんな感じで撮れたのか、スマホで撮ったのとはどう違うのか……

 三十六枚も撮ったんだから、きっといい写真がいっぱいなはずだ。

 だから……色々、期待してたんだ。


 小坂先輩が買ってきてくれたポテトをテーブルに置き、オレは受け取った封筒をそっと開く。

 中には、裏返しにされた写真が入っていた。

 たった数日前まで、フィルムカメラなんてただの古いカメラだと思っていた。

 でも、今はこの一枚一枚が特別なものに感じる。

 だってこれは、オレが初めて自分で撮った写真だから……


 写真、どんな感じなんだろ?

 スミちゃん先輩とつぅちゃん先輩が笑ってる写真が一枚目かな?

 それともゴリせんのやつ?あ……小坂先輩みたいに雰囲気のある一枚が撮れてるかも!

 そんな期待を胸に、オレはそっと一枚目を取り出し、写真を裏返した。


「…………」

 一瞬、言葉が出なかった。

「……ぇ?」

 思っていたものと違った。

 もう一枚、次の写真をめくる。

「……あれ?」

 もう一枚。

 さらにもう一枚……


 でも……どの写真を見ても、頭の中で想像していたような、キラキラした写真は一枚もなかった。

 色は暗く、全体的にぼんやりしている。

 変なところにピントが合ってるせいで、撮りたかった人がボヤけてしまっている。

 スミちゃん先輩とつぅちゃん先輩を撮った写真なんて、手ブレしていて、よく見なければふたりだとわからないくらいだった。


「……なんで」

 ポツリと出た声は、自分でもびっくりするくらい元気がなかった。

 もっと綺麗に撮れていると思っていた。

 だって、シャッターを押しているときは、あんなに楽しかったのに……

 ファインダーの中で見た景色は、もっと特別に見えていたのに……

「…………」

 写真を見るたび、少しずつ肩が下がっていく。


 もしかして……じいちゃんがくれたこのカメラじゃ、こんな写真しか撮れないのかな?

 そんなことが頭に浮かんだ瞬間、胸の奥がギュッと苦しくなった。


 違う。

 そんなふうに思いたくない。

 だって……このカメラはじいちゃんが大切にしていたものだ。

 入学祝いにって、オレに渡してくれた大事なカメラなんだ。


 なのに——

 上手く撮れなかった悔しさで、一瞬でもカメラのせいにしようとしてしまった自分が嫌だった。

 このカメラが悪いわけじゃない。

 ……たぶん。

 きっと、オレが何も知らないからこうなったんだと思う。

 でも……悔しい。


 悔しくて、情けなくて……

 何か言いたいのに、気持ちがゴチャゴチャでうまく言葉にできなくて……

 オレは……テーブルの下でぎゅっと拳を握り締めることしかできなかった。

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