↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フィルム36枚じゃ、君を撮り足りない。 〜きみに感光(こが)れる、写真部の初恋〜  作者: ゆあ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/15

11.わんこと幼馴染

 今日の放課後は、待ちに待った日だった。

 そう、初めて自分で撮った写真を見る日だ!

 実は、朝起きてからずっとそわそわしてた。

 しっかり寝たはずなのに、楽しみ過ぎていつもより早く目が覚めてしまったくらいだ。


 どんな風に映ってるのかな?

 スミちゃん先輩とつぅちゃん先輩が笑ってる写真、絶対いい感じだと思う!

 サッカー部が練習してたやつも、カッコよく撮れてたらいいなぁ~

 花壇に水をあげてたゴリせんのは……彰にこっそり見せよう。

 絶対、あいつ笑うと思う。


 初めてのフィルム写真、どんな風にできてるのか、今から楽しみでしかたない!

 スマホなら、撮った瞬間に画面で確認できるけど、フィルムカメラはそうじゃない。

 撮ってから現像して、プリントするまで結果がわからない。

 だからこそ……早く見たくてワクワクする。

 そんな気持ちが抑えられなくて、オレはチラチラと何度も時計の方を見てしまった。


「シバ、なんか機嫌いいじゃん」

 彰に声を掛けられ、オレはついニコニコと笑みを浮かべてしまう。

「あ、わかる?オレの第一回目の傑作が、今日見れるんだよね」

 昨日からワクワクが止まらない。

 撮った写真がどんなのなのか、すぐに見れなかったのはちょっとしょんぼりしたけど、それも今日の放課後にはわかるんだから、問題ない!

 というか、むしろ昨日よりもワクワクしていた。


「小坂先輩みたいなカッコいいのが出来てたらいいなぁ~。あ、次のフィルムでは彰のことも撮ってやるかな♪」

 もう気分だけは一人前のカメラマンだ。

「はいはい。楽しみにしとくわ」

 そう言いながら、彰はいつものようにオレの頭へ手を伸ばして来る。

 ポン、ポン。

「だーっ!子ども扱いすんなよ!」

 オレは彰の手を振り払い、唇を尖らせながら文句を言う。

 でも、そこは小学生の頃からオレの扱いに慣れている彰だ。

 オレの拳が届くより先に、ひょいっと軽やかに避けられてしまう。

「ふぅ~、危ない危ない」

「どこが危ないんだよ!ヨユーじゃねーか!」

 避けられたことへの不満も含めて文句を口にするも、彰はニヤニヤしながら笑って言ってくる。

「そんな怒るなって。今日もいい毛並みだなぁ~って思っただけじゃん」

「子ども扱いじゃなくて、犬扱いかよ!」

 思わずオレが叫ぶと、彰は楽しそうに笑ってた。


「だってシバ、昔から変わんないじゃん」

 確かに、このやり取りは昔からだ。

 っていうか、中学になって彰の身長がぐんぐん伸びた頃からだ。

「いやぁ~、小っちゃくてすぐに顔に出て、元気なところ……ホント、うちの幸枝(さちえ)さんにそっくりだよなぁ~」

「幸枝さんって、お前ん家の柴犬じゃん……」

 オレがジト目で彰を睨みながら言うと、彰はスマホを取り出し、待ち受け画面にしている柴犬の画像を見せつけてきた。

「見ろ、このセクシィショットの幸枝さんを!」

 ソファーに前脚を乗せ、プリッとしたお尻を見せつけながら振り返った柴犬の姿が、そこにはあった。


「だーかーらーっ、一緒にすんなぁー!」

 ギャースッ!とオレが吠えると、彰はさらに笑って喜びやがる。

 でも、彰が言うことは確かにちょっと当たってる。

 オレは昔から隠し事が苦手だった。

 楽しいときは楽しいって顔をするし、嬉しいときは嬉しいって顔になってしまう。

 そんなオレを昔から知ってる彰だからこそ、オレが今、部活が楽しいってのはバレバレみたいだ。

「よかったじゃん。夢中になれることが見つかって……」

 そう言って笑った彰は、ふと思い出したように鞄の中をあさり始めた。


「そうだ。これやるよ」

「ん?」

 彰が取り出したのは、小さな袋に入ったクッキーだった。

「昨日の部活で作ったやつの余り♪」

 ニヤッと笑みを浮かべる彰を見て、オレは目を丸くする。

「えっ!?ほ、ホントに彰が作ったのかよ」

 家庭科部に入ったのは、知ってたけど、本当に彰が作ったのか信じられなかった。


「失礼なわんこだな。要らないなら他の奴にやろうかなぁ~」

「わぁ~!彰さま!いる!いります!オレにちょーだい!」

 慌てて手を伸ばして哀願すると、彰はフッと笑みを浮かべながら、クッキーの入った袋をくれた。

 袋を開けると、ふわっと甘い香りが広がってくる。

 小麦粉の香ばしい匂いと、たっぷりのバターの優しい香り。

 ぐぅ~……


 匂いを嗅いだだけなのに、腹の虫が鳴ってしまった。


「クックックッ……わんこにお菓子は厳禁だが、シバには特別に食べるのを許してやる」

「だーれがわんこだ」

 文句を言いつつも、この甘く魅惑的な匂いには勝てなかった。

「……うまっ」

 サクッとした食感のクッキーをひと口食べた瞬間、無意識に声が出た。

 そんなオレを見て、彰は満足げな笑みを浮かべる。

「よかったな」

 ……くそぉ……こういうところがズルいんだよなぁ……

 彰はいつもオレのことを揶揄ってくるけど、一番オレのことをわかってくれている。


「……また、クッキーくれるなら……彰のこともカッコよく撮ってやる」

 オレがボソボソとクッキーを頬張りながら言うと、彰は満足そうな笑みを浮かべながらポツリと返事をしてくれた。

「ん、期待してる」

 そう言って笑う彰を見ながら、オレは次のフィルムで絶対にカッコいい写真を撮ってやろうと思った。

 ……もちろん、クッキーのお返しが目当てだけど……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。