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2:父の見解

『リード・フォン・アスター』は、代々優秀な魔術師を輩出してきた名門貴族――アスター家の現当主である。

 彼自身もまた、魔術師の階級において上から三番目にあたる『一級魔術師』の資格を持つ、優秀な魔術師だった。

 その実力は、名門アスター家の当主を名乗るに申し分ない。


 しかし同時に、リードは家族を愛する、ひとりの父親でもあった。

 高位貴族の当主という立場にありながら妾を持つこともなく、ただひとり愛した妻を大切にし、彼女とともに五人の子供を育ててきた。


 リードは、思う。


 長男『ルーク』。

 長女『リリ』。

 次男『ロイス』。

 次女『ダーニャ』。

 そして三女『レイ』。


 長男のルークは、今年で十八歳になった。

 幼かったころの面影こそ残っているものの、顔つきはすっかり大人びた。

 最近では懇意にしている女性もいるそうで、リードは密かに「孫の顔を見られる日も、そう遠くないかもしれない」と楽しみにしていた。


 長女のリリは、つい先日十六歳になった。

 年齢の割に非常に落ち着いており、理性的で面倒見もいい。

 ずいぶん立派に育ってくれたものだと、リードは父として誇らしく思っていた。

 リリは精霊魔術に関して抜きん出た才能を持っており、本気で戦えば、リード自身を除いた家族の中では一番強いのではないか——と、思えるほどである。


 次男のロイスは十三歳。

 まだまだ子供っぽさの抜けないところもあるが、剣術の才能は折り紙付きだ。

 最近では魔術の鍛錬にも熱心で、庭先で練習している姿をよく見かけるようになった。


 次女のダーニャは、今年で十歳になる。

 ——もっとも、リードはもう随分と長いこと、その顔を見ていなかった。

 彼女は八歳のころ、エルテナ帝国の魔法学園へ留学して以来、二年以上屋敷へ帰ってきていない。

 どうやら学園では相当優秀な成績を収めているらしく、校長からは定期的に彼女の様子を知らせる手紙が届いている。

 それ自体はリードにとって喜ばしい事ではあったが……


「……たまには、本人から手紙の一通くらい送ってくれてもいいだろうに」


 ダーニャ本人からの便りは、ただの一度もなかった。

 多忙ゆえに手紙すら書けないというのならば仕方がない。

 だが、もしかすると嫌われてしまったのではないか。

 そんなことを考えては、リードは人知れず心を痛めていた。


 今年で五歳になったレイは、少し変わった子である。

 よく笑い、よく学び、よく言うことを聞く聡明な子だが、全く泣かない。

 他の四人の子は、この時期はよく手を焼いたものだが、レイはその限りではなく、全くといっていいほど手がかからなかった。

 リリやメイドが面倒を見ていてくれているからという理由もあるのだろうが、それにしてもだ。

 その様子に対してリードは、もしかすると体が弱いのかも知れない。などと気を揉んだが、その杞憂は去年、レイが魔術を使って窓を焼いた事件によって解消された。

 流石アスター家の子だ。と笑っていると、妻のリシアに怒られてしまったのは記憶に新しい。


 ただ、四歳で魔術を会得したというのは、我が子ながら末恐ろしく思う。

 あのリリは、八歳で、俺ですら七歳で初めてマッチの火ほどの火を灯すことに成功したというのに、あの子ときたら四歳で窓の前面を溶かし尽くすほどの業火を顕現させてみせたのだ。


 あの子は天才だ。自信を持って、そう言い切れる。

 これは単なる親バカなどではなく、客観的な事実である。

 魔力量はアスター家の中では少ない方ではあるらしいが、レイの操作系魔術の精度たるや、一級魔術師である、俺を唸らせるほどだ。

 

 最近は、魔術学園の卒業生である『マリー』という魔術師を雇い入れて、家庭教師としてレイの教育係を任せている。

 魔術の腕も順調に上達しているようだし、今後の成長が楽しみでならない。


 というのが、我が子らを笑顔で眺めるリードの心境であった。

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