41: 王都のスラム事情
鳥の声……?
朝かぁ……。
隣りを見るとロックはまだ眠っている。
私も全身が重く気怠い。
もう少しこうして居よう。
ロックの寝顔を見つめながらホッとする。
生きててくれてありがとう。
大切な人を亡くす恐怖なんて2度とごめんだよ。
どれくらい経っただろう?
ロックが目を覚ます。
「おかえり、ロック」
「おはようじゃないのか?」
私の言葉にニコリと微笑む。
私は昨日のロックの状態を話して聞かせた。
「そうか、俺が生きてるのはかすみのお陰だな!」
ケラケラ笑いながら言うロックにムカッとする。
「死にかけたんだよ?!笑う事ないじゃない?」
「冒険者だからな、死とは隣り合わせだぜ?」
「お願いがあるの。冒険者辞めてくれないかな?」
「辞めて何するんだ?かすみのヒモか?」
またしてもおチャラけている。
「ふざけないで!赤ちゃんが出来たかもしれないのに!」
ロックは驚いて口を閉ざす。
「ごめん、無神経だったな。少し考えさせてくれ。」
そう言って黙り込んでしまった。
「私こそごめんね……」
沈黙に耐えられずに治癒院へ降りていく。
確かに、冒険者やめて何するのって感じだよね?
家督は継がないし、そもそも冒険者が好きでやってるんだからなぁ。
「先生、悩み事ですか?」
エラさんが子供達を連れて出勤して来た。
私は昨日あった出来事を話す。
「確かに、待つ身はつらいですよね…でも、考えてくれるのでしょ?待ってみましょうよ!
先生がそんな顔してたら患者さんが不安になりますよ!」
「そうだね!」
頭切り替えていかなくちゃ!
春になったからか、怪我をした冒険者が多い。
冒険者を見ると、ついロックの事を考えてしまう。
ダメダメ!仕事に集中!
今日もポーションを2000個作る。
アンの来る日だから。
今や宅急便は無くてはならない存在にまでなっている。
私も負けて居られないね!
午後一でアンが来る。
時間通りだね。
「最近はどう?」
「お陰様で顧客も増えて手一杯です!、スラムでお腹空かせてたのが嘘みたいです笑」
「そうなのね、良かった!人員足りなかったら王都にもスラム街は有るから教育して見たらどうかな?」
「そうですね!私達はかすみさんに救われましたが、ここはまだ手付かずですもんね!本当に全てかすみさんのお陰です!」
お世辞も上手くなっちゃって。
「騎士団とシフォンにお願いね!」
そう言って銀貨2枚を渡した。
王都にもスラム街はある。
規模はシフォンの数倍はあるかな?
治癒院をエラさんに任せられる様になってきた私は沢山の食材や鍋、お皿等を買い込みスラム街に足を運んだ。
酷い匂いが鼻をつく。
また、シフォンの様に上手く行くと良いけど。
とりあえず浄化魔法をかけて行く。
「お姉ちゃんだぁれ?」
小さなやせ細った女の子が声をかけて来た。
「お姉ちゃんは、スラム街を良くしに来たんだよ!」
アイテムボックスから鍋を2つ取りだし炊き出しを始める。
匂いに釣られ住人が集まって来た。
200人は居そう。
思ったより多いなぁ……
「この中に料理の出来る人は居ますか?」
おずおずと1人の女が手を上げる。
名前はメグさん。
いったん炊き出しをメグさんに頼むともう一度買い出しに急いだ。
スラム街に戻るとメグさんの声が聞こえる。
「子供、年寄り達からだよ!アンタらは後だ!」
テキパキとポトフをよそって行く。
うん、頼りになりそう!
買い足した鍋でポトフを作る。
野菜もたっぷり、ソーセージも入っている。
「これ食べて良いの?タダ?」
「お金は要らないよ!沢山あるからおかわり自由だよ!」
皆んなの顔がパァッと明るくなりムシャムシャと食べ出す。
今の内に……
「エリアヒール!」
これで一安心だね!
後始末をメグさんに頼むと、治癒院に戻った。




