32: 初めての死者
今日も朝からロックは能天気。
2日目は森の最深部を目指す。
どんな魔物が居るか分からないからより一層気をつけなくちゃ。
私の不安を他所にドンドン部隊は進んで行く。
何だか嫌な予感がする。
何か空気感が違うんだもん。
ロックも険しい顔をしている。
そこには2mは有りそうなドラゴン?的な奴がいる。
アースドラゴンと言うらしい。
騎士団は陣形を組み直すとアースドラゴンに向かって行った。
見る限り、弓矢なんかは何の役にも立たなそう。
次々と攻撃は続くけど、致命傷は受けてない様子。
「大丈夫かな……」
心配そうにロックを見つめる。
「大丈夫だよ」
そこに優しい笑顔は無かった。
アースドラゴンの攻撃が人をオモチャのように吹き飛ばして行く。
「ハイヒール!」
1人の騎士が動かない。
どうしたのかな?
様子を見て愕然とした……死んでる……
私がいたのに助けられなかったの?
どうしよう……少しパニックになってしまった。
私の魔法があっても、即死には対応出来ない。
自分の無力さを痛感する。
もう絶対死人は出さない!
「エクストラヒール!」
「エクストラヒール!」
誰かれ構わず魔法をかけて行く。
「エリアヒール!」
なんとか無事に討伐が終わり休憩を取る。
涙が止まらない。
騎士団長は、アースドラゴンに遭遇したらこんなものじゃ済まないと慰めてくれたけど……
癒しの力でも、助けられなかったのが辛い。
休憩が終わると、最深部へ行く。
そこは何もないようにみえたけど、オークの根城があったみたい。
こういう場合、数百匹のオークが群れで居るらしい。
もう1度、ポーションを配る。
準備万端にして、巣窟に向かう。
振り向くとロックが居て安心する。
「さっさと片付けて王都にかえるぞ!」
騎士団長の掛け声に皆んなまた奮起する。
私はヒールを繰り返しながら後に続いた。
オークは思ったより大きく、知能も高そうで武器も携帯している。
「皆さん頑張って!」
せめて応援位はしたいよね。
騎士団は、次々とオークを切り裂いていく。
必死で追いかけヒール。
これの繰り返しだった。
中は迷路のようになっていて、迷子になったらアウトだな。
後ろにはロックが居てくれる。
そう思い後ろを振り返るとロックの姿がない。
え……
どこいっちゃったの?
怖い……
前の騎士団もいつの間にか見えなくなっていた。
どうしよう、完全にはぐれちゃった。
オーク出てきたらどうすればいい?
浄化で消えるのかな?
不安でどうにかなりそう!
その時微かに剣の音がした。
向こうだ!
音のなる方へ急ぐ。
そこにはさっきのオークより一回りも大きなオークがいる。
「エリアヒール!」
最深部の広場には淀み?みたいなものがあって、魔物はそこから湧き出すみたい。
私は淀みまでそっと近ずき、浄化魔法をかける。
1回の浄化では淀みが消えない。
「浄化!」「浄化!」
少し空気が軽くなった気がした。
騎士団長が最後のオーク大将に切りつけやっと任務が終了した。
死人出ちゃったな……
何ともやるせない。
悔しい!悔しい!
後は怪我人もいなかったけど、どうせなら全員助けたかった。
気持ちが沈む。
そんな私の心情をわかったロックが抱きしめてくれた。
「よく頑張ったな」
緊張の糸が切れたのか、涙が溢れてくる。
私は子供みたいに泣きじゃくってしまった。
ロックは私の頭を撫ででおでこにキスをした。
騎士団長が亡くなった隊員を抱き抱えて連れていくのが見えた。
普段何気なくポーションを売っていたけど、死と隣り合わせってこう言う事なんだと痛感した。




