## 番外編 「十年後も、たぶん同じ」
## 番外編 「十年後も、たぶん同じ」
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旅行から数年後。
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牧原ひなた、高校一年生。
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成長した。
背も伸びた。
勉強もそこそこ。
友達も多い。
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問題は。
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性格だけだった。
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朝。
陽太が新聞を読んでいる。
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ひなたがリビングに入ってくる。
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「おはよう」
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陽太は顔を上げる。
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そして固まる。
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「……りさ?」
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「娘です」
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髪型。
表情。
歩き方。
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全部似てきた。
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そこへ本物のりさ登場。
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「なに騒いでるの?」
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陽太は二人を交互に見る。
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「増えた」
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りさ
「前からいる」
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ひなた
「パパ、老化した?」
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陽太
「その言い方誰に似た」
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母娘同時
「あなた」
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朝食。
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ひなたが突然言う。
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「ねえパパ」
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嫌な予感。
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「なんだ」
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「彼氏できたらどうする?」
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陽太、停止。
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りさ、味噌汁を飲む。
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「来たわね」
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ひなた
「参考意見を聞きたい」
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陽太
「却下」
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ひなた
「まだ作ってない」
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陽太
「予防」
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りさ
「重症ね」
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放課後。
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ひなたが友達と帰る。
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友達が聞く。
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「ひなたのお父さん優しそう」
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ひなたは少し考える。
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「優しいよ」
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「じゃあ厳しくない?」
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ひなた
「厳しい」
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「どっちなの?」
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ひなたは笑う。
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「心配性なだけ」
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夜。
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陽太がソファで寝転がる。
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ひなたが隣に座る。
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珍しく静か。
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「パパ」
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「ん?」
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「私さ」
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少しだけ間。
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「昔から思ってたんだけど」
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陽太
「なに?」
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「ママのこと、本当に好きだよね」
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陽太は笑う。
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「今さら確認か」
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ひなた
「大事だから」
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陽太は天井を見る。
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思い出す。
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小学生の春。
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公園。
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告白。
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断った未来。
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やり直した人生。
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そして今。
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隣には娘。
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向こうには妻。
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全部繋がっている。
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陽太はゆっくり言う。
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「好きだよ」
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ひなた
「即答」
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陽太
「今さら迷う理由ないからな」
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その瞬間。
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キッチンから声。
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「聞こえてる」
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りさだった。
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少し照れた顔。
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でも笑っている。
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ひなた
「ママ照れてる」
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りさ
「うるさい」
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ひなた
「かわいい」
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りさ
「あなたに言われたくない」
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陽太は笑う。
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本当に。
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ただ笑う。
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昔の自分に言ってやりたい。
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「大丈夫だ」
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「選び直した先は、ちゃんと幸せだ」
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窓の外。
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春の風が吹く。
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あの日と同じ。
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でも。
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もう後悔はない。
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ひなたが言う。
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「ねえパパ」
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「ん?」
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「今、幸せ?」
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陽太は笑う。
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そして、いつもの答えを返した。
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「うるさいくらい幸せだよ」
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りさも笑う。
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ひなたも笑う。
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三人の笑い声が、家の中に広がる。
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それは特別じゃない。
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でも、何より大切な日常だった。
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## 完結
**『人生を変えられるなら』**
陽太が選び直した人生は、成功者になる物語ではなかった。
ただ――
大切な人を選び、大切な人に選ばれ続ける物語だった。




