## 番外編 「三人旅行、逃げ場ゼロの幸せ」
## 番外編 「三人旅行、逃げ場ゼロの幸せ」
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旅行前日。
陽太はスーツケースを見て、静かに悟る。
(これ、休みじゃない)
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リビングでは、すでに会議が始まっていた。
りさ「持ち物リスト確認する」
ひなた「賛成」
陽太「反対」
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却下された。
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朝。
新幹線。
陽太は窓側に座ろうとする。
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「そこ私」
「いや俺が取ったんだけど」
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ひなたが即答。
「じゃんけん」
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陽太「旅行の序盤で消耗させるな」
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りさ「公平でしょ」
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結果。
陽太敗北。
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車内。
陽太が真ん中。
両側に“りさ系統”が配置される。
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左:りさ(母)
右:ひなた(娘)
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陽太
「監視席かよここ」
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りさ
「安心席ね」
ひなた
「観察席」
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出発5分。
すでに詰んでいる。
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目的地到着。
海。
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ひなたが走る。
「海だーー!!」
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りさも普通に走る。
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陽太
「お前も走るのかよ」
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りさ
「テンションは合わせるもの」
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砂浜。
ひなたが言う。
「ねえパパ!」
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「ん」
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「どっちと一緒に海入る?」
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陽太
「またそれか」
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りさ
「逃げる?」
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ひなた
「逃げないで」
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陽太は海を見る。
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「じゃあ全員で入れ」
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沈黙。
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ひなた
「正解」
りさ
「妥協ね」
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海。
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ひなたが水をかける。
りさも返す。
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結果。
陽太が一番濡れる。
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陽太
「なんで俺が一番被害受けてんだよ」
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りさ
「中心だから」
ひなた
「核」
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夜。
旅館。
布団三つ並び。
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陽太
「なんで一部屋なんだ」
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りさ
「家族だから」
ひなた
「節約」
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風呂上がり。
ひなたが言う。
「ねえパパ」
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「ん」
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「今日楽しかった?」
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陽太は少し黙る。
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「楽しかったよ」
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即答。
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ひなた満足。
「よし」
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りさ小声。
「即答ずるい」
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夜。
布団の中。
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ひなたが真ん中に潜り込む。
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陽太
「なんで真ん中来る」
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ひなた
「安全地帯」
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りさ
「どこが」
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電気消灯。
静か。
でも静かじゃない。
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ひなたが小声で言う。
「ねえパパ」
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「ん」
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「今幸せ?」
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陽太は即答する。
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「うるさいくらい幸せ」
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りさが笑う。
「またそれ」
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ひなたも笑う。
「採用」
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翌朝。
陽太は気づく。
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自分がほとんど寝ていない。
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理由は簡単だ。
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・ひなたが寝相で蹴る
・りさが無意識で寄ってくる
・結果、逃げ場ゼロ
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陽太
「これ修行か?」
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りさ
「家族旅行」
ひなた
「成功体験」
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帰りの新幹線。
陽太は完全に無言。
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りさが言う。
「疲れた?」
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陽太
「まあな」
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ひなた
「楽しかったでしょ?」
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陽太は少し笑う。
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「楽しかった」
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りさが小さく言う。
「じゃあまた行こ」
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ひなた
「次は海外」
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陽太
「やめろ拡張するな」
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でも。
その“やめろ”は、もう拒否じゃない。
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ただの習慣になっていた。
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陽太は窓の外を見る。
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(うるさい)
(でも、これが一番落ち着く)
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りさが隣で言う。
「ねえ陽太」
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「ん」
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「このままでいいね」
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陽太は即答する。
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「このままがいい」
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ひなたも小さく言う。
「同じ」
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三人の声が重なる。
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うるさくて、逃げ場がなくて、甘すぎる。
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でも、それで完成していた。
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## 終
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