## 番外編 「ひなた、第二のりさになる日」
## 番外編 「ひなた、第二のりさになる日」
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ある朝。
陽太は違和感で目が覚めた。
静かだ。
あの家特有の“うるさい前の静けさ”じゃない。
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嫌な予感。
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リビングへ行く。
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そこにいたのは——
牧原りさ(母)と、ひなた(娘)。
いつも通り……のはずだった。
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でも空気が違う。
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りさがコーヒーを飲みながら言う。
「ねえ陽太」
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「ん?」
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「終わったわ」
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「何が」
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ひなたが静かに言う。
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「ママ、今日から私に負ける」
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陽太「朝から何の宣言だよ」
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ひなたはソファに座り、足を組む。
その姿勢が完全にりさ。
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りさ(母)が少しだけ目を細める。
「……やる気?」
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ひなた
「やる気じゃないよ」
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「進化」
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陽太、頭を抱える。
(嫌な単語覚えてるなこいつ)
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ひなたは続ける。
「ママはもう“古いりさ”」
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りさ即答。
「現役なんだけど」
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ひなた
「でも私は“最新型”」
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陽太
「何のバージョン争いだこれ」
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朝食。
ひなたが自分でコーヒーを入れようとする。
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陽太
「お前まだ子どもだろ」
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ひなた
「思考は大人」
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りさ
「危険なタイプ」
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結果。
コーヒーは半分こぼれる。
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陽太
「ほらな」
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ひなた
「失敗はデータ」
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りさ
「私の若い頃と同じこと言ってる」
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沈黙。
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陽太、嫌な気づき。
(これ……完成しつつある)
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学校帰り。
ひなたが言う。
「ねえパパ」
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「ん」
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「ママってさ」
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少し間。
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「優しいけど、ちょっと重いよね」
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りさ、後ろで即反応。
「聞こえてるけど」
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ひなたは続ける。
「私は軽い愛情でいく」
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陽太
「軽いって何だよ」
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ひなた
「即レス型」
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りさ
「完全に私の上位互換気取ってる」
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夜。
リビング。
三人。
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ひなたが言う。
「ねえパパ」
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「ん」
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「ママと私、どっちが好き?」
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陽太、即座にため息。
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「またそれかよ」
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りさ
「逃げる?」
ひなた
「逃げないで」
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陽太は少し考える。
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「お前らさ」
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「うん」
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「どっちも俺の“家族”だろ」
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沈黙。
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ひなたが少し不満そうに言う。
「答えになってない」
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りさが笑う。
「一番正しい答えね」
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その瞬間。
ひなたが小さくつぶやく。
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「じゃあ……私もママみたいになる」
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りさが一瞬止まる。
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「え?」
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ひなた
「そうしたら、パパ困るでしょ」
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陽太
「やめろそういう学習」
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数週間後。
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ひなたは“完全にりさ化”していた。
・距離ゼロで話す
・即答で愛情確認する
・時々重い哲学を挟む
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陽太は悟る。
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(増殖してる)
(りさが二人いる)
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ある夜。
布団。
ひなたが言う。
「ねえパパ」
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「ん」
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「私、ママより好き?」
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りさ(隣)即反応。
「その質問もう禁止」
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陽太は笑う。
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「お前らほんと同じだな」
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ひなた
「じゃあ完成」
りさ
「最悪の完成ね」
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陽太は天井を見る。
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(この家、永遠に終わらない“愛情のコピー”してる)
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でも、ふと思う。
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この繰り返しがある限り、
この家はずっと続く。
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陽太は小さく言う。
「まあ……悪くないけどな」
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りさとひなたが同時に言う。
「それはそう」




