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## 番外編 「小さなりさが二人いる家庭」

## 番外編 「小さなりさが二人いる家庭」


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朝。


陽太は目を開けた瞬間、違和感に気づく。


理由は単純だった。


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「パパ、おはよ」


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隣に、りさがもう一人いる。


いや、正確には——


“小さなりさ”がいる。


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「……え?」


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小さなりさ(娘)は、完全に母親と同じ顔で笑っていた。


声も、笑い方も、目の細め方も。


全部。


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リビング。


陽太はコーヒーを落としそうになる。


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「なんで同じ顔が二人いるんだよ」


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りさ(母)は平然としている。


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「遺伝」


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「説明になってねえよ」


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娘りさ(仮)は、もうソファで跳ねている。


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「ねえパパ!」


「今日ね!一緒におでかけするって約束したよね!」


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陽太は記憶を探る。


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「してない」


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即答。


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すると、娘りさは一瞬固まってから——


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「昨日の夜、した」


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「してない」


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「した」


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「してない」


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そのやりとりを見ていたりさが一言。


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「完全に私だね」


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学校(保育園)準備。


陽太はカバンを持たされる。


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「パパこれ持って」


「それ全部お前のじゃねえか」


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「じゃあ半分パパの」


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「意味がわからん」


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玄関。


靴を履くとき。


娘りさが突然言う。


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「ねえパパ」


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「ん?」


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「パパってさ」


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少し間。


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「ママのこと好きでしょ」


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陽太、固まる。


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りさ(母)、後ろで笑う。


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「教えた覚えないんだけど」


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(この家、危険だ)


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公園。


娘りさは全力で走っている。


転んでも泣かない。


すぐ立つ。


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「性格まで強いなこいつ……」


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陽太がつぶやくと、りさが言う。


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「私の縮小版だからね」


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ベンチ。


りさが隣に座る。


娘りさは滑り台。


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「ねえ陽太」


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「ん」


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「この子さ」


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「うん」


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「私よりずるいよね」


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「どこが」


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りさは笑う。


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「“好き”をストレートに言うとこ」


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そのとき。


娘りさが戻ってくる。


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「パパ!」


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「ん」


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「今日ね」


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「うん」


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「ママとパパ、ずっと一緒にいるって先生に言われた!」


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陽太は少し笑う。


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「誰がそんなこと言ったんだよ」


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娘りさは即答。


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「ママ」


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りさ(母)、顔をそらす。


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「言ってないけど」


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夜。


風呂上がり。


娘りさがタオル巻きで走る。


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「パパー!」


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「廊下走るな!」


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「だってママも走ってた!」


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「いつの話だよそれ」


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布団。


三人並んで座る。


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娘りさが急に真面目な顔をする。


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「ねえパパ」


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「ん」


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「大人になっても、ママのこと好き?」


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陽太は一瞬だけ止まる。


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りさが横で小さく笑う。


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「圧、すご」


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陽太は少しだけ考えてから言う。


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「好きだよ」


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即答。


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その瞬間。


娘りさが満足そうにうなずく。


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「よし」


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「合格」


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りさが小さく言う。


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「完全に教育成功してる」


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陽太はため息をつく。


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「お前のコピーが増えてるだけだろ」


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りさは笑う。


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「じゃあ責任とってね」


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夜。


電気が消える。


小さな寝息。


大きな寝息。


その間に、普通の静けさ。


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陽太は思う。


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(この家、うるさい)


(でも、一番安心する)


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隣でりさが小さく言う。


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「ねえ陽太」


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「ん」


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「これ、幸せすぎじゃない?」


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陽太は即答する。


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「うるさいくらい幸せだな」


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りさは満足そうに目を閉じる。


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「じゃあ成功」


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## 終


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