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## 番外編 「結婚してもバカップルは直らない」

## 番外編 「結婚してもバカップルは直らない」


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結婚式の朝。


陽太は鏡の前でネクタイを直していた。


いつもより少しだけ緊張している。


いや、“少しだけ”じゃない。


かなり緊張している。


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「ねえ陽太」


後ろから声。


振り向くと、ウェディングドレス姿の牧原りさが立っていた。


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一瞬、言葉が消える。


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「……なんで先にこっち来てんだよ」


「見たかったから」


即答。


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りさは自分のドレスの裾を持ち上げて、くるっと回る。


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「どう?」


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陽太は数秒固まってから言う。


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「……反則」


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りさは満足そうに笑う。


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「よし、合格」


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式場。


親族席。


母がぽつりと言う。


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「ほんとにこの子でよかったのかしら」


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りさの母が即答する。


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「うちの娘のほうが危ないです」


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(誰も止めないのかこの結婚)


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誓いの言葉。


陽太は少しだけ噛む。


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「えっと……これからも、よろしくお願いします」


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りさは横で小声で言う。


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「短い」


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陽太は小声で返す。


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「うるさい」


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指輪交換。


りさが手を握る力が強い。


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「ねえ」


小さく言う。


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「逃げないでね」


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陽太は笑う。


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「もう逃げる場所ないだろ」


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りさは満足そうにうなずく。


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「正解」


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披露宴。


友人スピーチ。


「この二人は付き合った瞬間から完成してました」


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陽太(心の声)

(完成ってなんだ)


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夜。


新居。


玄関のドアを開けた瞬間。


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「ただいま」


「おかえり」


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同時。


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沈黙。


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りさが言う。


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「結婚したね」


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陽太は靴を脱ぎながら答える。


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「したな」


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リビング。


ソファに座る。


りさが当然のように隣にくっつく。


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「ねえ陽太」


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「ん」


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「今日から“本番”だね」


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陽太は嫌な予感を感じる。


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「本番って何だよ」


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りさは真顔。


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「夫婦生活」


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(重い)


(初日から重い)


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夜。


テレビを見ていると、りさが急に言う。


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「ねえ」


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「今、幸せ?」


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陽太は一瞬だけ考える。


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昔なら迷った。


でも今は違う。


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「幸せ」


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りさは一瞬だけ固まる。


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そして、少し照れて笑う。


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「……即答、ずるい」


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翌朝。


陽太が起きると、隣にいる。


距離ゼロ。


結婚前と変わらない。


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むしろ悪化している。


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「ねえ陽太」


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「……朝から何」


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りさは笑う。


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「結婚してもさ」


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「うん」


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「逃げないでね」


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陽太はため息をつく。


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「だからもう逃げられねえって」


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りさは満足そうに目を閉じる。


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「よし」


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「永住許可」


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## 終


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