3-07 収穫野菜でお昼ご飯クッキング!
台所のテーブルにズラリと並ぶ野菜を眺めて、私は改めて呆気に取られた。
「いっぱい採れたね」
「そうですね」
えーっと?
ナス・トマト・キュウリにピーマン、オクラとゴーヤにミョウガ……。
「これ、よく考えてみると……苗、植えすぎだよね?」
「すみません……。白玉が美味しそうに食べてくれるので……」
「わかる。ついつい苗選びが捗っちゃったんだよね」
尚君と一緒に買い物に行ったとき、せっかくだから色んな種類の苗を買おうか、と言う話になって。
どんな料理作ろうかなーって言いながら選んでいたら、気づいたら色んな種類の苗を植えていたという……。
「でもそれは私のせいでもあるので……」
「詩乃ちゃんのせいじゃありません!」
「じゃあ白玉のせいってことで!」
「……まあ、せいと言うよりも、お陰と言った方が良いかと……」
白玉が原因であることには間違いないので、尚君の回答も歯切れが悪かった。
「それにしても、こんなに食べきれ…………食べ切れるね」
「白玉にかかれば、きっと一瞬ですよ」
「冗談みたいだけど、あながち間違いじゃないところがすごいよね」
思わず真顔になってしまった。
食べきれないと思ったけど、うちには爆食い秘密兵器がいるので問題なかった。
商店街の各店員さんは、うちは食べ盛りの子どもが何人いるんだ、って思われているかもしれない。
「食べ盛りがいるので、このぐらいの量が生るのは、とても助かります」
尚君も苦笑するほどの食べっぷりを披露するのが、白玉なのであった。
ちなみに白玉がいなかった場合は滅茶苦茶余ることになるので、お隣さんにお裾分けとかも検討しなければならない。
この豊作具合は、白玉のお腹を満たすための神獣の祝福ってことにしておこう。うん。
「さてさて、お昼は何を作ろうね」
「鶏肉と夏野菜のおろし甘酢あんかけにしましょうか」
「えっ?」
まさか……具材として、これをぜんぶ乗せにする気??
「さすがに、全部は使いませんよ!」
どうも私は変顔をしていたみたいで、尚君が必死に否定した。
「びっくりした……」
いや、でも案外ゴーヤもいけたりしない?
「冒険すると台無しになるので、やめましょう!」
じっとゴーヤを見つめて考え込んでいたところ、私の表情から心を読んだのか、尚君が必死に縋りついた。
ちなみに私たちが料理をしている間は、相変わらず神獣が災いを齎す者相手に至高なる果実を守っている。
「僕は玉ねぎを担当しますね」
「じゃあ私はオクラをやろうかな~」
ちなみに玉ねぎは昨日買っておいた野菜。
他は採れたての家庭菜園野菜でかさ増しする作戦!
少しでも食費浮かせないとね!
と言うわけで、処理したオクラを先に下茹でしておいて、その傍らで……。
「大量に採れた野菜を、ひたすら切るよー!」
「おー!」
大量に採れたナスとピーマンとトマトを、二人がかりでひたすら切っていく。
ちなみに私が使ってるまな板と包丁は、尚君の家で暮らすにあたって自分の部屋から持ってきたやつ。
隣り合わせで野菜を切っていると、なんだかちょっぴり不思議だけど、暖かい気持ちにもなる。
「私たち、野菜切るマシンみたいだよね」
ボウルに山盛りになったひとくちサイズの野菜を眺めながら、しみじみと言う。
ちなみに野菜山盛りボウルは二つあるので、見ているとちょっとした食堂かな? と言う気持ちになる。
「でも一緒に作るのも楽しいですね」
「うん」
前は何かと尚君が率先してやってくれようとしていたけど、私も何かしたいと言い続けた結果、色んな事を一緒にやったり分け合ったりしている。
いまだに気遣い上手なのは変わらない尚君だけど、でも任せてくれたり頼ってくれたりするのは正直嬉しい。
さて、いつまでも感慨にふけっている場合じゃない。
のんびりしていると、餓えた獣が台所に突撃してくるからね。
鶏肉もひとくちサイズに切ったら、どデカい片手中華鍋を取り出して、遂に調理開始!
今回の中華鍋は尚君が担当で、私は助手役です。
まずは下茹でしてないナス・ピーマン・玉ねぎを揚げ焼きして、そのあとに塩コショウと片栗粉をまぶした鶏肉も焼いていく。
トマトは後のせ!
尚君が野菜を焼いている間に、私は今晩のおかず作成!
ナスとキュウリとミョウガとショウガを切って、ポリ袋に塩と一緒に入れてもみもみみ。
夜まで置いておくと塩味が染み込んだ漬物の出来上がり! と言うわけ。
熱中症が心配な夏にぴったりだね!
私が夕飯のおかずの下ごしらえをしていると、コンロの方から良い香りがしてきた。
「ん~! お肉が焼ける匂いが美味しそう~!」
「まだ味付けしてませんよ」
「それはそうなんだけどね」
こんがり焼けていくお肉を見ているだけで、よだれが出そうになる~!
尚君が鶏肉を焼きながら、生暖かい目で私を見ているような気がした。
ハッ!? もしかして私、白玉と同類視されている!?
私は誤魔化すように、尚君が手にしている中華鍋を指さしした。
「この中華鍋、買って良かったね」
鍋が大きいから、小分けに焼かなくて済むのが良いね。
「そうですね。これまでのフライパンだと二、三人前しか作れませんでしたけど、これなら一気に五、六人前くらいは作れますね」
そう、わざわざ大きくて深さのある中華鍋を買ったのである!
……それにしても、すずらん荘にいるのは三人(うち1人は匹)なんだけど、三人前じゃ足りないって、どんだけなの……。
お肉が焼けるのにもうちょっと時間がかかるので、私はその間におろし器で大根をシャコシャコおろす!
大根おろしてると腕の筋肉がつきそうだよねえ。と思いながら、時折つりそうになる手を休めていると、尚君がちらっとこちらを見ていた。
「詩乃ちゃん、そろそろお肉も焼き終わりますし、代わ……」
「甘やかし禁止!」
「……はい」
尚君の提案を退けて、私はひたすら大根をおろすのであった。
「詩乃ちゃん、お肉焼けましたよ」
手伝いを断られてしょんぼりしていた尚君が、お肉を焼き終えたらしい。
私もおろし終えたところだったので……。
「はーい。じゃあ調味料入れるね」
鶏肉が焼けたら、ついに助手の私が調味料を入れる番です。
「えーっと、砂糖、醤油、お酢を混ぜてから……」
小皿に入れた調味料を混ぜ混ぜして中華鍋に投入!
調味料がふつふつ良い音を出して来たら、水で溶いた片栗粉を沸騰した調味料の中に入れる。
「あんかけ、とろみがつきましたね」
「じゃあ、具材どんどん入れていくよー!」
「お願いします!」
鶏肉と野菜にとろっとしたあんかけが良い感じに馴染んだら、お皿に盛りつける。
「白玉のお皿はご飯乗せといたよー」
「はーい」
一皿は私たちの分で、もう一皿は白玉専用大皿。
白玉の分はご飯の上におかずを乗せる、丼スタイルなのである。
尚君がお皿に具を乗せてくれたら、最後に私が大根おろしと賽の目切りしたトマトを乗せて……。
「出来上がり~!」
白玉の分の「鶏肉と夏野菜のおろし甘酢あんかけ丼」をじゃじゃーん! と宙に掲げてみたけど、何気にお皿も中身も重くてずっしり来る。
手がプルプルする……。
落とす前にやめよう……。
私の手が震えていたのに気づいたのか、白玉の分は何も言わずに尚君が持って行ってくれた。
相変わらずの気遣い上手なんだなぁ。




