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異世界還りの元聖女へのご褒美は、スパダリ元彼によるフェンリル付き甘やかされスローライフです ~ただいま、すずらん荘~  作者: 江東乃かりん


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3-03 ワン(犬)サイズでも、若干でっぷりしてきました

 家に到着したのは、正午ちょっと過ぎ。

 私は玄関を開けて、帰宅を告げる。


「ただいまー」


 もちろん帰る場所は、私が借りてる二階の部屋じゃなくて、尚君の家。

 尚君のことだから先回りしてすでに帰っているパターンもあり得ると思ってしまったけど、まだ帰ってきてなかった。

 ……流石にそこまで超人じゃないよね……!


 それにしても、馴染んでしまったな……尚君の家に。私が。

 まあ馴染んでいるのは、私だけじゃないんだけども。


 家の中では白玉が地獄の番犬ならぬ大谷さん家のお留守番係をしているので、冷房をつけて快適な空間を保っている。


「玄関開けただけなのに、すごく快適温度!」


 私が一人暮らしのときは勿体ながってひたすら暑さと戦っていたけれども、同棲してからと言うものの家主が「白玉は毛量が多いですし、冷房つけましょう」と頑なに言うので冷房つけました。

 電気代もったいないけど、たしかに白玉は暑さに弱そうなんだよねえ。

 実際に夏に入り始めてから、白玉はちょっとバテ気味だったりする。

 その癖、毛皮はもふもふのボリュームは抜群だし。

 当面こっちの世界で過ごすなら、毛刈りしたほうが良いんじゃないのかな?

 そしてバテてる割にはめっちゃ食べる。


「あれ? 白玉?」


 ところでそんな白玉氏は、いつもなら私たちが買い物から帰ってくると、玄関まで駆けつけて、立派な飼い犬っぷりを発揮する。

 いまはお昼ちょっと過ぎちゃったから、いつもよりうるさくにご飯をねだられそう。

 ……と思ったのだけど、今日は姿を見せないし、返事もない。


「迎えに来ないのって、珍しいね?」


 白玉がいそうな場所を探し始めようと思ったけど、その前に先に冷たいものを冷凍庫に入れないと。

 冷房をつけているとはいえ、今日みたいに暑いと、とけちゃうからね〜。

 ひとまず手に持っていたレジ袋から、キンキンに冷えた特別な一品を冷凍庫にササッとしまい込む。

 あとお肉とお魚も冷蔵庫にイン!

 白玉がたくさん食べるのでいつも大量に買っているんだけど、商店街のお店の人に「何人家族?」って顔で見られている……。

 そのうち聞かれるんじゃなかろうか。


「今日もいっぱい買った〜! さて、白玉を探しますか!」


 白玉がだいたい居るのは、台所か掘りごたつのある和室か、そこに隣接する縁側。

 と言うわけで、台所にいる私は、そのまま視線を隣の和室にスライドさせる。


「しらたま〜?」


 ……しかし、返事がなかった。

 いつも食事をしている和室には、いないみたい?

 まさか和室の真ん中にある掘りごたつの中にいるわけがないと思うけど、なんとなく覗いてみたくなった。

 今は初夏なので、こたつ布団はしまっている。


 ちゃぶ台に近寄って屈もうとした瞬間、視界の端で縁側からチラッと白い物体が伸びているのが見えた。


「白玉? そっちにいるの?」


 声をかけたけど返事がない。

 白玉にしては珍しく大人しくって、静かすぎるのが逆に不安になってくる。

 恐る恐る、ゴーヤで作った緑のカーテンがある縁側に近付いてみると……。


「しらたま……?」


 白くてもふもふした物体が、直射日光を受けてでろーんと溶けかけていた。


 だらけた巨体が見えて、思わず脱力してしまう。

 しかも犬サイズじゃなくて、本来の大きさに戻っているので、縁側を占領しているけどかなり狭そうだった。

 せっかく緑のカーテンがあるのに、なぜかわざわざ日向にいるし。

 それと、よく様子を観察してみると、見開いた目が白目を剥いている……。

 というか、これはもしかして熱中症で倒れてない!?


「し、白玉!? 大丈夫!?」

「あ゙っ……つい゙!!」


 話しかけると一応返事をしたけれども、まあ……見た目通り暑そうだった。


「そりゃ、こんな直射日光ガンガン当たるところにいたら、熱中症になるよ!」


 冷房を付けているとは言え、ここだとガラス越しに外の暑さがガンガン伝わってくるし、床も靴下穿いていても暑いくらい。


「神獣は……人間の病気になどかからないぞ……!」

「そんな暑そうに言われても、説得力ないんだけど……」

「それに、毛並みを美しく保つには、一日数時間は日に当たる必要がある!」


 何その、もふ毛の法則……初めて聞いたんだけど。


「その白玉ご自慢の毛なんだけど、いまの気候だと量が多すぎるからそろそろ切った方が良いかな? って思っているんだよね」

「やめろー!? 俺の神聖な毛を刈るんじゃない!」


 尻尾をふぉんふぉん振り回すので、冷房で冷やされた風が良い感じに掻きまわされている。

 ダラダラしてるけど、思ったより元気はあるみたいなので良かった。


「はいはい。刈られたくなかったら、涼しいところに移動するよー!」

「わううー!」


 私は白玉のもふもふの毛に手を突っ込んで、縁側から隣の和室に押して移動させようとした。


「よいしょっ……と!」


 だけど、ピクリともしない。

 ぐっ! このフェンリル、重すぎる……!

 あとよく考えてみると、図体デカすぎるからこのままだと和室の入口でつっかえる!


「白玉、小さくなってー!」

「暑すぎて……力が出ない!」

「じゃあ自力で移動してええ〜! じゃないとご飯の準備も出来ない〜!」

「!? ……わん!!」


 白玉が犬っぽい鳴き声を出したかと思うと、普通の犬サイズに変形した。

 ちょっとちょっと? 力が出ないんじゃなかったっけ!?


「さあ、シノ! 飯の支度をするんだ!」

「……はいはい」


 白玉ったら、ブレないな〜。

 私は(ワン)サイズになった白玉のお尻を押して、ズルズルと和室に押し込む。

 それにしても、いまの白玉はふつうサイズのはずなのに、随分と重量を感じる……。


「……白玉。もしかして……太った……?」

「ギクッ」

「自覚あるのかー」


 飼い犬が太るとき、飼い主もまた太っていそうで怖いんだけど……。

 悲しみに満ちた眼差しを白玉に向けていたところ、反論するようにワンワン吠え始めた。


「仕方なかろう! オーヤが俺を肥やそうとするんだ! あいつは悪魔だ!」

「相変わらず、尚君の悪口言ってる……。と言うか、出されたものをモリモリうまうま食べてるのは誰だっけ?」

「美味しく作られたものに罪はない! 食わぬほうが罪だ!!」

「さようでございますかー」


 なんとか白玉を和室に押し込むと、白玉はさっきまでの脱力は何だったと言わんばかりのハイテンションで定位置についた。


「飯はまだか!」

「準備はするけど、食べるのは尚君が帰ってきてからね、おじいちゃん」


 私は冷蔵庫に入れ損ねていた野菜をしまいながら答える。


「なんだ。珍しくオーヤは一緒じゃないのか」

「異世界の使い魔じゃあるまいし、毎日一緒なわけじゃないよ」


 白玉みたいに、使い魔でも常時一緒にいるわけじゃないけど。


「だが、お前たちは(つがい)なんだろ? 一緒にいてもおかしくないじゃないか」

「ぶふっ!!」


 のどが渇いたので麦茶を飲んでいたところの不意打ちに、思わず吹き出してしまう。


「結婚はまだしてないからね!?」

「付き合っているんだろう? 祝福してやるから、早く予定を組め!」


 バシバシと尻尾で畳を叩く白玉は、なんか偉そうだった。


「なんでフェンリルに結婚を催促されるのかな?!」

「シノがオーヤと結婚すれば、毎日美味いものが食えるのが保証されるからな!」


 ドヤァ! と言う顔をして見せた白玉に、私はやっぱりそうかと思いながらジト目を向ける。


 と、その時、私の背後から突然声が聞こえてきた。


「神獣が祝福してくれるなら、とても縁起が良さそうですね」

「ギャーー!?!?」


 ビックリして思わず叫んでしまったけど、振り向いたら尚君だった。


「びびびびビックリした!」

「すみません……。そこまで驚くとは思わず……」


 申し訳なさそうな顔してるけど、物音立てずに急に背後にいられたら驚くよ!

 今日の尚君は、驚かせたがりすぎでは!?


「俺も気付いていないとは思わなかったぞ」

「私の方からは見えてなかったし、ただいまって聞こえなかったし」

「見つかったら、何を買ってきたかバレちゃいますからね」


 そう言う尚君は手ぶらだった。

 台所に来る前に、どこかにしまったのかな?


「暑かったでしょ? はい、麦茶」


 私は新しく出したコップに麦茶を注いで尚君に渡すと、彼はニッコリ微笑んだ。


「ありがとうございます、詩乃ちゃん。ただいまです」

「ふふ。おかえり、尚君」


 くすぐったいなあ、なんて思って笑っていたら、背後からツッコミを受けました。


「お前ら一緒に出かけたのに、何故別々に帰って来たんだ?」

「それは明日までのお楽しみです」


 何を買ったか教えてくれるのは明日らしい。

 アイス作るのも明日なのかな〜?


 私と白玉は揃って首を傾げた。

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