四人目の転生者
やがて、応接間の扉が開く。入って来たのは、服装は違えど片山そのものだった。
「えええええ!?小野さんのお嬢さん?」
片山……バルバラは、目を剥いた。
「あなたも、この世界へ!?いえ、安西さんと工藤さんがいらっしゃるのは存じておりましたけれど、小野さんまで転生されていたとはっ。しかも、ご領主夫人?まあ、まあ、何てことでしょう」
バルバラは、ジャスミンの手をひしっと握った。
「全員そろったなんて、まさに神様の思し召し!それに小野さんは、唯一の女性転生仲間ですわ。ああ、何という僥倖!」
この調子でジレットの娘を指導しているのだろうか、とジャスミンは思った。はっきり言って、社交界でこんな大げさな言動は、浮くに決まっているのだが。貴族の世界を知らないジレットは、これを品の良いやり方だと解釈しているのだろう。
「お久しぶりです。教育係として活躍なさっているなんて、すごいですね」
ひとまずジャスミンは、無難に挨拶した。
「活躍だなんて、とんでもありませんわ!わたくしごときがお子様のご指導なんて、身に余る光栄でございます。けれどジレット様とお嬢様は、なぜかわたくしをお気に召してくださって……。ああ、本当にわたくしなどでよろしいのかしらっ」
バルバラは、大げさに顔を覆っている。ジャスミンは、すでに疲労してきた。
「しかも先ほど、ジレット様がこう仰いましたの。ご領主夫人は、将来お子様の教育係として、わたくしを考えられているとか。もう、どうしましょう!」
バルバラの興奮は、収まりそうにない。今更口実でしたとは言えず、ジャスミンは曖昧に微笑んだ。
「その時に備えて、心の準備をしておかねばなりませんわね……。ご予定はありますの?はっ」
バルバラは、口を押さえた。
「わたくしったら、何て失礼なご質問を!これ、前世で言えば、何とかハラスメントになりますわよね?もう、どうしたらお詫びできますかしら!」
「気にしないでください。何とも思っていませんから」
青ざめるバルバラに向かって、ジャスミンは慌てて語りかけた。
「いつかはわかりませんけれど、その時お願いするかもしれない、という程度です。そう緊張なさらないで」
もう帰ろう、とジャスミンは思った。最後の一人・バルバラと会って通じ合える何かがあるかと思ったが、どうやらダメそうだ。こちらも相変わらずで、話していても疲れるばかりである。
「寛大なお言葉、ありがとうございますわあ。では是非、その節は……。いえ、厚かましゅうございますが、機会を見つけてお宅へ遊びに行ってもよろしいかしら?前世が共通する者同士、お喋りしたいのですわ」
「ええ、機会がありましたら」
ジャスミンは、慎重に答えた。なるべく先にしてもらいたいものだ、と思いながら。




