配合発見
モロアは、程なくしてやって来た。ジャスミンは、勢い込んで尋ねた。
「お守りになるという香辛料を、以前教えてくださったわね。アミュレという……。入手したいのだけれど、方法が無いの。だから自作しようと思うのだけれど、配合はご存じ?」
「いえ。そこまでは、あいにく」
モロアが、かぶりを振る。ジャスミンは、ため息をついた。
「どうしても、配合を知りたいのよ。これらの本に載っていないか、今調べているのだけれど、手伝ってくださらない?」
「今からですか。帰って読みたい本があるのですが……」
モロアが、ごにょごにょと呟く。ジャスミンは、キッとまなじりを吊り上げた。
「協力しないと、屋敷外にはみ出た本を、強制撤去するわよ!」
「それだけは、ご勘弁を!」
モロアはほうほうの体で、アミュレ捜索活動に加わったのだった。
約五時間後。ジャスミンたちは、膨大な本の山の中から、アミュレについて書かれた項目を探し当てた。これには、モロアの貢献が大きかった。どの本に掲載されているか、彼はおおむねの見当を付けてくれたのだ。おかげで無駄な労力が省けた。
「原料は……、まずは、ファリー。エピーソの原料じゃないの。これなら、いくらでもあるわ。他は、ペッパー、レモングラス、砂糖か。みんなそろっているわね」
ジャスミンは、ほうとため息をついた。ジレットからあれこれ買い付けたものが、こんな形で役立つとは。するとモロアが、隣のページを指した。
「ご夫人。こちらに載っているニフェール、ネステーの二つも、お守り効果があるのですよ。よろしければ試されては?」
「まあ、そうなの?」
ジャスミンは、ざっと目を通した。こちらはあいにく、原料は手に入りそうにない。ダメ元で、ジレットに聞いてみるか。
「モロア殿、今日は手伝ってくださってありがとう。本の撤収はしないけれど、なるべく屋敷内に収めてくださいね」
そう告げると、モロアはほっとしたような表情を浮かべた。
「すみません、気をつけます。……では、これにて失礼を」
ジャスミンの気が変わらないうちに、というつもりだろう。モロアは、転びそうなくらい足早に帰って行った。
「……さて。皆は、もう休んでいいわ。手伝ってくれて、本当にありがとう」
ゴーチェらの顔を見回して礼を述べれば、彼らは不思議そうな顔をした。
「奥様は、まだ何かなさるので?」
「何って、もちろんアミュレを作るのよ」
そう答えると、皆はあっけにとられたようだった。
「これからでございますか!?」
「何時間もぶっ通しで頑張っておられるではないですか。少し休まれては?」
皆は気遣ってくれたが、ジャスミンはやると言い張った。
「ロラン様は、ずっと戦っておられるのよ!休んでなどいられるものですか」
「では、私に手伝わせてください!」
そう言い出したのは、ウードだ。他の料理人たちも、次々に頷く。
「私どもも、ご協力します」
「何なりと、仰ってください」
「そう……?では、お願いしようかしら」
申し訳ない気もしたが、ジャスミンは彼らの好意に甘えることにした。ゴーチェが、おずおずと申し出る。
「奥様。わたくしにできることは?」
「そうね、ではジレット邸へ使いを出して、ニフェールとネステーという香辛料が手に入らないか、聞いてもらえる?あとは、屋敷内をしっかり守ってちょうだい」
「かしこまりました!」
ゴーチェが、一目散に部屋を出て行く。ジャスミンらも、厨房へと向かった。




