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マンションごと転生したけど、住人仲が悪いから協力できるか微妙  作者: 花房ジュリー
第六章 戦争勃発!旦那様は香辛料をご所望
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不吉な予言

ロランが旅立ってからというもの、ジャスミンは鬱々とした日々を送っていた。脳裏からは、彼の深刻な表情と台詞が離れなかった。


‘最悪、戦争に発展するかもしれない’


‘こうして話ができるのも今夜限りかもしれない’


何度も魔物討伐に出かけては、無事に帰って来た彼のことだ。お守りも渡したし、大丈夫だと思いたい。それでも、不安がつきまとって仕方ないのだ。つまみ作りも全くやる気が起きなかった。


‘美味しいお酒とおつまみって、一緒に楽しむ相手がいてこそよね……’


短い間だったが、ロランと共に過ごす夜食の時間がどれほど貴重だったか、身にしみてわかる。彼と打ち解けるまでは、一人酒も全く平気だったというのに。


何十回目かのため息をついていると、ノックの音がした。何やら深刻な表情で顔をのぞかせたのは、ゴーチェだった。


「どうしたの!?まさか、ロラン様から何か……」


焦ったジャスミンだったが、ゴーチェはかぶりを振った。


「いえ、旦那様からは特段のご連絡はありません。占星術師のパスカル先生がお見えなのです。何やら、伝えたいことがあるとか」


わざわざ屋敷までやって来るなんて、何事だろう。ジャスミンは、すぐに行く、と告げた。


応接間で向かい合うと、パスカルは真剣な表情で切り出した。


「おお、ご夫人。実は、強い予兆を感じたのですよ。それで、すぐに報告したくてですね」


「どんな予兆ですの?」


何やら、嫌な予感がする。パスカルの返答は予想通りだった。


「‘侵入者あり’と。不吉な影も見えました」


「……どういう意味かしら?」


真っ先に頭に浮かんだのは、戦争だった。だがここオリオール領は、ダールヴィランドとの国境から相当離れている。仮に紛争が勃発したとしても、ここまでダールヴィランド兵が侵入するとは考えにくかった。


「私も、考えたのですがね。領内で強盗事件が起きる、という意味ではないでしょうか」


「なるほど」


平和なオリオール領ではあるが、油断はできない。夫不在の今、気を引き締めねば、とジャスミンは決意した。


「治安には目を配っておきますわね。わざわざ知らせていただき、ありがとうございます」


「よろしく頼みますよ。こんなこと、普通はしませんからね。前世でだって、往診などしたことが無いんですから」


パスカルは、胸を反らした。気をつけますわ、とジャスミンは繰り返した。


「それと。ここに来たのは、もう一つ用件がありまして。最近、風が強いでしょう?風向きで、教会の鐘の音がよく響いてくるんですよね。あれがうるさいので、止めるよう言ってもらえます?」


久々の、クレームか。相変わらずだ、とジャスミンは目をつり上げた。


「鐘は、礼拝には必須ですよっ。止めるわけにはいきません」


しかも市場の時と違い、パスカル邸と教会は、かなり離れているというのに。どれだけ神経質なのだ、とジャスミンは苛立った。


「じゃあ、教会の場所を変えてください」


「無茶言わないでください!領民にとって神聖な場所ですよ?簡単に移動できるわけないでしょう」


「無能なご領主夫人だ。こちらは、領内の危険を予知してあげているというのに」

 

それを持ち出されると弱いが、どうにかできる問題ではない。ジャスミンは、ため息をついた。


「わざわざ来てくださったので、見料は弾みますよ。ただ鐘問題は、すぐには解決できかねます。しばらく時間をください」

 

ゴーチェに命じて見料を支払わせると、パスカルはようやく席を立った。


「期待はしていませんが、よろしく頼みますよ」


皮肉っぽく告げて、パスカルが帰って行く。それにしても気になる予言だな、とジャスミンは思った。ギョームにも連絡して、領内に目を光らせてもらおうか。


そこへ、ゴーチェが戻って来た。


「奥様、たびたびすみません。今度は、バルバラさんがお見えです」


「急に何かしら?」


最近は、試食会もすっかり止めてしまったのだけれど。不思議に思いながらも、ジャスミンは彼女を通すよう告げた。

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