夫との再スタート
「はっ?そんなはずはありませんわ」
ジャスミンは、眉をひそめた。ロランがため息をつく。
「来てみたら、君は泥酔していたんだ!初夜どころでは無かろう」
「あ……」
そういえば、とジャスミンは思い出した。初夜に緊張しまくったジャスミンは、それを紛らわすために酒を何杯もあおったのだ。
「酒を飲まねばやっていられないほど私という男が嫌いかと、ひどくショックだった。いくら政略結婚とはいえ……。だから侍女に君を介抱させ、そっと部屋を出たんだ」
そんなこととはつゆ知らなかった。
「それ以降も、私も仕事が忙しくて構ってやれないという落ち度はあったが、帰宅する度に君は飲んだくれてばかりいた。私が不満でそうしているのかと、思うだろうが!」
「違います!」
ジャスミンは、声を張り上げていた。
「初めての時は、極度に緊張していたのです。それを紛らわそうと寄ってお酒を飲んだら、つい酔ってしまって……。その後は、その、単に寂しかったのです。初夜に旦那様が来られなかったと誤解して、私こそ嫌われていると思い込んでいました」
今度はロランが目を見張る番だった。
「では、私を嫌っていたわけではないと?我々は、互いに誤解をしていたのか」
「そのようですわね」
何だか、照れくさい。ロランはふっと微笑むと、ジャスミンを軽く抱きしめた。
「さて、オリオール夫人。我々は初めからやり直すべきかと思うが、いかがかな?」
はい、とジャスミンは小さく答えた。
「同感ですわ」
「では、オリオール辺境伯と夫人は、新スタートを切るとしよう……。そしてオリオール領とサロー領も、それに伴って関係改善の第一歩を切るのだ。海産物と米の貿易で、な」
「お米、輸入していただけるのですか!?」
ジャスミンは、パッと顔を上げた。ロランが微笑む。
「君のお父上が賛同してくだされば、だが。パスカル先生の占いや、何よりこの領民の意思を無視するわけにはいかないだろう」
やったー、とジャスミンは内心喝采していた。
‘リゾットの実現よ!’




