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マンションごと転生したけど、住人仲が悪いから協力できるか微妙  作者: 花房ジュリー
第三章 リゾット作りを目指していたら、夫と仲直りできた
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帰省しました

その日ジャスミンは、久々に故郷を訪れた。荘厳だが古めかしいサロー侯爵邸に到着すると、懐かしい思いでいっぱいになる。中からは昔なじみの執事が、待ちかねたように出迎えてくれた。


「これは、ジャスミンお嬢様……いえ、オリオール辺境伯夫人。お帰りなさいませ。旦那様も奥様も、お待ちかねですよ」


「久しぶりね。会えて嬉しいわ」


笑みを浮かべながら挨拶を交わしつつ、屋敷へと足を踏み入れる。思い出深い邸内を歩きながら、ジャスミンはおやと思った。廊下に、多くの絵画が飾られているのだ。これは初めて見る光景だった。


「旦那様は、近頃絵画に凝ってらっしゃるのですよ」


ジャスミンの視線に気づいたらしく、執事が説明する。


「若いが、腕の良い絵師がおりましてね。ほとんどお抱え状態でございます」


父にそんな趣味があったとは知らなかった。改めて見やれば、風景画から人物画まで様々だ。両親の肖像画もあった。


やがて、応接間に通される。しばらくすると、パタパタという小走りの足音が聞こえてきた。


「おお、愛しい我が娘!ようこそ帰省してくれた」


応接間の扉を開くなりそう叫んだのは、父・サロー侯爵だ。続いて、母も顔を出す。


「まあまあ、ジャスミン。帰ってくれて、嬉しいわ。嫁いで以来、初めてのことじゃないの」


いやはや、とジャスミンは頭を掻きたくなった。夫婦生活が上手くいっているか詰問されるのが憂鬱で、結婚以来一度も帰省しなかったのだ。父母の喜びようは、当然と思われた。おまけに、ジャスミンは一人娘だ。両親は、ジャスミンを目に入れても痛くないほど溺愛してきたのである。


‘そういえば前世も、のんきな女子大生だったものね。この点も共通しているかしら……’


「で、ロラン殿とはどうなのだ?良くしてもらっているか?」


案の定、席に着くなり父は尋ねてきた。ジャスミンは、用意していた台詞を述べた。


「ロラン様はご多忙ですし、正直、あまりコミュニケーションの時間は取れていません。ですが、少しずつ会話が増えています」


これは、嘘ではない。父母は、それを聞いて安堵の表情を浮かべた。


「ああ、良かった。知っての通り、オリオール領と我が領はずっと険悪だったからな。人質のようにお前を嫁がせてしまったが、果たしてロラン殿と上手くやっているのか心配だったのだ」


「最初は確かに、ぎごちなかったですけれど。徐々に関係は進展していると思いますわ」


母は、頷いた。


「夫婦とは、そういうものよ。これから時間をかけて仲を育むとよいわ」


「お父様、お母様。そこで私から提案なのですが」


ジャスミンは、本題を切り出した。


「先ほど人質と仰いましたが、そこまでして私をあちらへ嫁がせたのは、二つの領の関係改善のため。ですが現状、特段の進展はございません。そこでロラン様ともお話ししたのですが、貿易を始めてはいかがでしょう。交流のきっかけになるかと存じます」


すると父は、意外にもあっさり頷いた。


「それに関しては、私も考えていた。言い出すタイミングを見計らっていたところだ」


何と、とジャスミンは目を見開いた。案外スムースに話が進みそうではないか。


「さようでございますか。オリオール領からは、海産物の輸出を考えておりますが。お父様は、何を輸出なさろうとお考えですか」


父は、身を乗り出した。


「ずばり、織物類だ。綿織物は、サロー領の特産!是非、オリオール領へも広めたい」


へっと、ジャスミンは思わず叫びたくなった。


‘第三の選択肢登場じゃない!’


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