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マンションごと転生したけど、住人仲が悪いから協力できるか微妙  作者: 花房ジュリー
第二章 つまみを作っていたら、使用人に慕われ始めた
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占い再び

その日の午後は、パスカルの館を訪れることにした。今度はアンヌは連れずに、ジャスミン一人だ。


相変わらずの長蛇の列を辛抱強く待った後、パスカルの部屋へ通される。ジャスミンの顔を見た彼は、肩をすくめた。


「また、あなたですか。せっかくご主人がお戻りなのに、ここへ来られるなんて。よほど相手にされていないとお見受けする」


「余計なお世話です。まずは相談内容、聞いてくださいます?」


ジャスミンは、目をつり上げた。


「お隣サロー領との貿易話です。こちらからは海産物を輸出する予定ですが、あちらから何を輸入すべきか迷っておりまして。お米と他のもの、どちらが有益でしょう?」


「おや、思ったよりはまともな内容ですね」


口調はまだ慇懃無礼だが、パスカルの瞳からは、からかうような光が消えた。ジャスミンは、ここぞとばかりに身を乗り出した。


「だって夫は、パスカル先生の占いをたいそう頼りにしていますもの。重要施策の方向性をお示しして、オリオール領を繁栄に導くのは先生ですわよ?」


「それは、それは。では私も、身を引き締めないといけませんな」


パスカルは背筋を伸ばすと、前回同様、図表を広げた。しばし黙考した後、彼は頷いた。


「米が無難、と出ておりますな」


よっしゃあ、とジャスミンは飛び跳ねたくなった。


‘いや、待てよ。無難という程度では弱いかも……’


「他のものよりはマシということですか?」


「そうですな。重要資源の輸出は、あちらも慎重にならざるを得ない。結果、交渉が難航、と出ております」


十分な説得材料になりそうだ。ジャスミンは、ノートとペンをさっと取り出した。


「お手数ですが、今のお話を一筆書いてくださいませんこと?きっと夫は、大切にするはずです」


「それは名誉なことだ。是非書きましょう」


褒められ倒されて悦に入ったらしく、パスカルは嬉々としてペンを取った。だが、ノートに書き付けながら、彼はふとこう付け加えた。


「そうそう、‘根回しが重要’とも読み取れます。つまり、サロー侯爵領に早めに話を通した方がよろしい」


確かに、とジャスミンは目から鱗が落ちる思いだった。いくらロランとジャスミンがあれこれ言っていても、肝心の相手方がうんと言わなければ、貿易など始まらないではないか。


‘早速、実家へ帰るわ!’


いそいそと席を立とうとすると、パスカルが引き留めてきた。


「ところで夫人。先日陳情した件は、どうなってます?ほら、市場の時間のことですよ。うるさくて占いに集中できやしない」


お前一人の都合で変えられるかい、と怒鳴りたくなるのを、ジャスミンはぐっとこらえた。


「そうですわね。お困りでしょうけど、今は夫をせっつかない方がいいと思います。領内の施策についてもご相談するほど、パスカル先生を信頼している夫ですもの。下手に催促して、せっかくの信頼を失ってはまずいですわよ」


嫌ならお前が引っ越せ、と心の中で付け加える。


「それもそうですな!では、しばし待つとしましょう。吉報をお待ちしていますぞ」


「はい。では、ありがとうございました」


礼を述べるジャスミンの頭の中は、すでに帰省のことでいっぱいだった。

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