日課は試食会
その日ジャスミンは、ウードはじめ料理人たちを集めて、試食会を開いていた。ゴーチェから頼まれて彼らにレシピを伝授したところ、非常に興味を持ち、すぐに作ってみたいと言い出したのだ。結果的にジャスミンとウードたちは、一緒に調理してその場で食べてみることにした。以来この試食会は、オリオール邸での日課となったのである。
「このクローブという新しい香辛料、実に素晴らしいですね!肉にぴったりだ」
ビーフの煮込みを食べながら、ウードが歓喜する。他の料理人も頷いた。
「レモングラスという香辛料も、不思議な美味しさですな。最初は変わった風味と思いましたが、これを使ったサラダには、意外とはまりました」
「奥様が入手なさる香辛料は、どれも興味深く、勉強になります」
よしよし、とジャスミンは頷いた。ここぞとばかりに強調する。
「香辛料って、面白いでしょう?様々な味付けができるから、レパートリーが増えて、食事の楽しみが増えるのよ。それに、調理の手間を省くこともできるわ」
「手間を省く?どういうことです?」
皆が、怪訝そうにする。ジャスミンは、にっこりした。
「今は肉料理やサラダに使っているけれど、単純な料理でも香辛料の味付け次第で、簡単に楽しめるということよ。例えば、そう、リゾットね」
「リゾット……、ああ、確かに簡単ですね」
ウードは頷いた。
「香辛料を変えるだけで、何通りもの味が楽しめそうです」
「そうなのよ!残念ながら我が領では米を作っていないから無理だけれど、仮に手に入れば、あなたたちの労力を節減できるわよ」
料理人たちは、感謝の眼差しでジャスミンを見た。
「奥様。新しいレシピを教えてくださるだけでなく、我々を慮ってくださるなんて」
「奥様は、素晴らしいご領主夫人です!」
良い感触に、ジャスミンは内心にやりとした。こうして、リゾット推奨派を増やしていく算段である。
「ありがとう。とは言っても、なかなか難しいのよね。米の輸入の道を探っているのだけれど……」
すると、一人が挙手した。
「奥様、意見を申しても?占星術師のパスカル先生に占っていただくのはいかがでしょう。たいそう当たると聞いています。米の輸入が実現できるか、聞いてみてはいかがでしょう」
「ええと、そうねえ……」
できればパスカルとは、もう関わりたくないのだけれど。だが別の者が、こんなことを言い出した。
「実は旦那様は、ああ見えて割と占いを信じられるのですよ。仮にパスカル先生が、米を輸入せよと仰ったら、きっとご尽力くださるはずです」
「まあ、そうなの?」
ジャスミンは、目を見張った。夫に、そんな一面があったとは。是非パスカルの元をもう一度訪れよう、とジャスミンは思った。
‘良い結果が出るとよいのだけれど……’




