第77話 懐かしい場所
二人が入ったのは。
駅前にある落ち着いたイタリアンレストランだった。
窓際の席へ案内される。
「ここ来たことある?」
直人が聞く。
レナは首を横に振った。
「初めて」
「雰囲気いいね」
「ああ」
二人はメニューを開く。
「どれにする?」
「迷うなぁ」
レナは楽しそうにメニューを眺めていた。
「なおくんは?」
「カルボナーラかな」
「あっ」
「私もそれ気になってた」
「じゃあ」
「ピザ頼んで半分こする?」
「うん!」
二人は笑いながら注文した。
料理が運ばれてくる。
「いただきます」
「いただきます」
熱々のカルボナーラを口に運ぶ。
「美味しい」
レナが自然と笑顔になる。
「本当だ」
「このお店当たりだな」
「また来たいね」
「ああ」
ピザも届き。
二人で取り分ける。
「なおくん」
「ん?」
「こっちも食べてみて」
レナが一切れを取り分ける。
「ありがとう」
直人も自分の皿から一切れ渡す。
「はい」
「ありがとう」
そんな何気ないやり取りが。
どこか嬉しかった。
食後。
二人はデザートも注文した。
「ティラミスだ」
「好きなの?」
「ああ」
「レナは?」
「私はパンナコッタ」
「昔から甘い物好きだったよな」
「覚えてたの?」
「そりゃな」
レナは少し照れながら笑う。
「なおくん」
「本当に昔のことよく覚えてるよね」
「レナもだろ?」
「うん」
「なおくんのことだから」
二人は顔を見合わせ。
小さく笑った。
会計を済ませ。
店を出る。
夕日が街をオレンジ色に染めていた。
二人は並んで歩く。
しばらく無言だった。
でも。
その沈黙は嫌じゃない。
レナが小さく息を吸う。
「なおくん」
「ん?」
「少し寄り道してもいい?」
「いいけど」
レナは少し照れたように笑った。
「懐かしい場所」
「行きたくなっちゃった」
「懐かしい場所?」
「うん」
「小さい頃」
「よく遊んだ公園」
直人は少し驚いたあと。
優しく笑う。
「ああ」
「久しぶりだな」
「行こ?」
「うん」
二人は住宅街を歩き始めた。
「あっ」
レナが笑う。
「あのお菓子屋さん」
「まだある」
「本当だ」
「なおくん」
「いつも十円のガム買ってたよね」
「懐かしいな」
「あと」
「アイス当たったって喜んでた」
「あったな」
二人は笑い合う。
昔話をしながら歩いていると。
見慣れた公園が見えてきた。
夕暮れの公園。
遊んでいる子どもはもういない。
静かな風だけが吹いていた。
「変わらないね」
「ああ」
二人はゆっくりと公園の中へ入っていった。




