第67話 デュエット
結衣は勢いよくマイクを掲げた。
「次!」
「レナさんです!」
「えっ?」
突然名前を呼ばれたレナは目を丸くする。
「私?」
「もちろんです!」
結衣は笑顔でマイクを差し出した。
レナは困ったように笑う。
「私……」
「あまり歌得意じゃなくて」
「大丈夫ですよ!」
結衣は親指を立てる。
「失敗しても誰も笑いません!」
「そういう問題じゃないの」
レナは少し照れながら苦笑した。
リモコンを手に取る。
曲を探す。
でも。
なかなか決まらない。
「どうしよう……」
その時だった。
レナは隣に座る直人を見た。
「なおくん」
「ん?」
「一緒に歌ってくれない?」
直人は少し驚く。
「デュエット?」
「うん」
「一人だと緊張するから」
少し恥ずかしそうに笑う。
「なおくんと一緒なら」
「歌えそう」
直人は少し笑った。
「ああ」
「いいよ」
「ありがとう」
レナは嬉しそうに微笑んだ。
その瞬間だった。
「デュエットじゃないですか!」
結衣が勢いよく立ち上がる。
「ずるいです!」
葵が吹き出した。
「何がずるいの?」
「だって!」
結衣は頬を膨らませる。
「私も先輩とデュエットしたいです!」
栞も小さく手を挙げた。
「私もです」
「順番な」
直人は苦笑する。
「今日はレナさんに譲ります!」
結衣は渋々席へ戻った。
二人は並んで立つ。
レナが曲を入れる。
静かなラブソングだった。
イントロが流れる。
レナは少し緊張した様子で歌い始めた。
すると。
隣から直人の優しい歌声が重なる。
自然と。
レナの表情から緊張が消えていく。
二人の歌声は。
まるで会話をするように重なっていた。
結衣たちは静かに聴き入る。
やがて。
最後のフレーズが終わる。
一瞬の静寂。
そして。
パチパチパチパチ。
大きな拍手が響いた。
「すごーい!」
結衣が目を輝かせる。
「息ぴったりでした!」
葵も笑顔で頷く。
「いいデュエットだったね」
栞も小さく微笑んだ。
「素敵でした」
レナは照れくさそうに笑う。
「ありがとう」
直人を見る。
「ああ」
短い返事。
でも。
それだけで十分だった。
レナは嬉しそうに微笑む。
「よかった」
その笑顔を見て。
結衣はニヤニヤしながら二人を見比べる。
「なんか二人」
「本当に恋人みたいでした」
「ぶっ!」
直人は思わず吹き出す。
レナも一瞬固まる。
「ち、違うよ」
少し慌てて答えるレナ。
結衣はケラケラ笑った。
「冗談です!」
「でも、本当にお似合いでしたよ!」
レナは照れ隠しにジュースを一口飲む。
顔が少しだけ赤くなっていた。




