第62話 呼び出し
土曜日。
朝。
直人のスマホが鳴る。
画面には。
『陽菜』
の文字。
『今日って時間ある?』
直人はすぐに返信する。
『あるけど』
数秒後。
『少しだけ付き合ってほしいな』
『駅前の公園』
『一時間くらい』
『分かった』
約束の時間。
直人は公園へ向かった。
ベンチには。
陽菜が座っていた。
「あっ」
直人に気付く。
小さく手を振った。
「悪い」
「待った?」
「ううん」
陽菜は笑う。
「今来たところ」
直人は隣へ座った。
「それで?」
「何かあったのか?」
陽菜は少しだけ空を見上げる。
天気はいい。
子供達が元気に遊んでいた。
「ねぇ」
「ん?」
「好きな人」
直人は少し驚く。
「ああ」
「まだ」
「変わってない?」
「変わってない」
即答だった。
陽菜は静かに頷く。
「そっか」
少しだけ笑う。
「私ね」
「うん」
「何となく」
「分かった気がする」
直人は何も言わない。
「聞かないよ」
陽菜は笑う。
「誰なのか」
「それは」
「東條くんが決めることだから」
少しだけ沈黙。
「でも」
「うん」
「ちゃんと最初から」
「好きな人がいるって言ってくれた」
「だから」
「ありがとう」
直人は少し照れくさそうに笑う。
「いや」
「俺の方こそ」
「ごめん」
陽菜は首を振った。
「謝らないで」
「東條くん」
「優しかったもん」
その一言だった。
風が吹く。
二人の間を通り抜ける。
陽菜は立ち上がった。
「よし!」
大きく伸びをする。
「切り替える!」
直人も立ち上がる。
「そうか」
「うん!」
陽菜は笑顔だった。
「ラブステータス」
「また頑張る!」
直人は思わず笑う。
「そうだな」
「陽菜なら」
「すぐ彼氏できそうだけどな」
陽菜は一瞬固まる。
「……それ」
「慰め?」
「いや」
「本気」
即答だった。
陽菜は少し照れ笑いを浮かべる。
「ありがとう」
「じゃあ」
「今度こそ」
「両想いの人」
「見つけるね」
「ああ」
「応援してる」
「うん!」
陽菜は笑顔で手を振る。
「じゃあね!」
「また学校で!」
そう言って走り出した。
その背中は。
少しだけ寂しそうで。
だけど。
前を向いていた。
直人はその姿を見送りながら。
小さく息を吐く。
一つの恋が終わった。
けれど。
それは悲しい終わりではない。
新しい恋へ。
踏み出すための一歩だった。




