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第61話 もしかして

 昼休みが終わる。


 六人はそれぞれの教室へ向かって歩いていた。


 結衣は少し前。


 陽菜、葵、栞は後ろを歩く。


 直人とレナは少し離れて歩いていた。


「ねえ」


 陽菜が小さく口を開く。


「ん?」


 葵が振り向く。


「さっきの」


「幼稚園から知ってるって話」


「ああ」


 葵も頷いた。


「知らなかったな」


 結衣は腕を組む。


「私もです」


 少しだけ考える。


「でも」


「何だ?」


 葵が聞く。


 結衣は少し真面目な顔になった。


「先輩」


「私にも」


「陽菜さんにも」


「葵さんにも」


「栞さんにも」


「同じこと言いましたよね」


「同じこと?」


 陽菜が首を傾げる。


「他に好きな人がいるって」


 四人とも黙る。


 その言葉を思い出していた。


 水族館の帰り。


 大会の帰り。


 動物園。


 学祭のあと。


 みんな。


 同じ言葉を聞いている。


「でも」


 結衣が続ける。


「レナさんだけ」


「何か違う気がしたんです」


「違う?」


 葵が聞き返す。


「うまく言えないですけど……」


「幼稚園からって」


「何か特別じゃないですか?」


 陽菜は少しだけ考える。


「確かに」


「昔から知ってるっていうのは」


「私たちとは違うね」


 栞も静かに頷く。


「違います」


 また少し沈黙。


 結衣は前を歩く二人を見る。


 直人。


 そしてレナ。


「もしかして……」


 小さく呟く。


 その瞬間。


 自分で首を振った。


「いや!」


「ないです!」


 三人が驚く。


「何が?」


 葵が笑う。


「だって!」


「幼稚園ですよ!?」


「そんな約束覚えてる人なんて」


「いません!」


 勢いよく言い切る。


 陽菜は少し笑った。


「そうかもね」


 栞は前を歩く二人を見つめる。


 何も言わない。


 ただ。


 小さく目を伏せた。


 そして。


 四人は誰も。


 その話の続きをすることはなかった。


 前を歩く二人は。


 そんな会話があったことも知らず。


 いつも通り。


 並んで歩いていた。

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