第6話 引越しセンター
翌日。
俺は引越しセンターの事務所へ来ていた。
面接というより説明会らしい。
「東條直人くんだね?」
「はい」
「体力仕事だけど大丈夫?」
「たぶん」
本当はあまり大丈夫じゃない。
でも運動能力Eになった。
たぶん何とかなる。
きっと。
「じゃあ今日から来てもらおうかな」
「え?」
「人手不足なんだよね」
採用された。
早かった。
◇◇◇
「新人か!」
倉庫へ案内された瞬間だった。
大声が響く。
振り向く。
そこには。
「でかっ」
思わず口に出た。
身長190センチ近い大男。
腕が丸太みたいだ。
「山本剛志だ!」
名前まで強そうだった。
「東條直人です」
「よろしくな!」
バシッ。
肩を叩かれる。
「ぐふっ」
少しよろけた。
「おいおい」
今度は別の声。
振り向く。
もう一人いた。
こっちは185センチくらい。
だが負けず劣らず筋肉の塊だ。
「新人が壊れるだろ」
「高橋豪だ」
「よろしく」
「東條です」
なんだろう。
筋肉しかいない。
俺は本当に引越し屋へ来たんだろうか。
◇◇◇
「よし」
山本さんが笑った。
「まずはこれ運ぶぞ」
指差した先を見る。
冷蔵庫。
大きい。
嫌な予感しかしない。
「重そうですね」
「冷蔵庫じゃないぞ」
「え?」
「筋トレ器具だ」
「なんで冷蔵庫みたいな形してるんですか!?」
思わず叫ぶ。
高橋さんが吹き出した。
「新人あるあるだな」
「みんな一回騙される」
騙された。
完全に騙された。
◇◇◇
二時間後。
「はぁ……」
息が切れていた。
腕が痛い。
足も痛い。
腰も痛い。
全部痛い。
「大丈夫か?」
山本さんがスポーツドリンクを渡してくる。
「ありがとうございます」
「初日はそんなもんだ」
「山本さん達は平気なんですか?」
「慣れだな」
「慣れですね」
絶対違うと思う。
この人達は元から強い。
そんな気がする。
「そういや」
高橋さんが聞いてきた。
「大学生なんだろ?」
「はい」
「なんで引越し屋?」
俺は少し考えた。
金が欲しい。
運動したい。
それもある。
でも。
「好きな人がいるんです」
気付けばそう答えていた。
「ほう」
「ほう」
二人の目が光った。
嫌な予感がする。
「彼女か?」
「違います」
「片想いか?」
「はい」
「何年?」
「幼稚園からです」
沈黙。
そして。
「うおおおおお!」
山本さんが叫んだ。
「純愛じゃねえか!」
「いいな!」
高橋さんまで興奮している。
「いや別に……」
なんでこの人達こんなテンション高いんだ。
「頑張れ!」
「応援するぞ!」
「ありがとうございます?」
よく分からない。
だが。
悪い人達じゃないことだけは分かった。
その時だった。
『運動能力の向上を確認しました』
通知が表示される。
思わず笑う。
金も稼げる。
運動能力も上がる。
案外。
このバイトは当たりかもしれない。
「よし!」
山本さんが叫ぶ。
「東條!」
「はい?」
「絶対その子と結婚しろ!」
「そうだ!」
高橋さんも拳を握る。
「幼稚園からとか運命だろ!」
「頑張れ!」
「頑張れ!」
「は、はぁ……」
なぜか二人の方が盛り上がっていた。




