第7話 経済力
引越しバイトを始めて一か月。
俺は変わった。
たぶん。
少しだけ。
「東條」
「はい」
「冷蔵庫頼む」
「分かりました」
持てる。
初日は絶望した冷蔵庫も。
今では普通に運べる。
もちろん山本さん達ほどじゃない。
でも確実に成長していた。
「おっ」
山本さんが笑う。
「慣れてきたな」
「ありがとうございます」
「飯食ってるか?」
「食べてます」
「もっと食え」
そればっかりだ。
◇◇◇
そして。
待ちに待った給料日。
「よし!」
口座残高を見て思わず拳を握る。
増えている。
ちゃんと増えている。
「これなら買える」
俺は即座にAIコーデを起動した。
『利用者情報を確認しました』
『体型変化を検出』
「ん?」
『おすすめコーデを更新します』
嫌な予感がした。
そして表示される。
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おすすめコーデ
総額 84,300円
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「増えてる!!」
思わず叫んだ。
前回。
58,000円。
高すぎて諦めた。
だからバイトした。
なのに。
なぜ増える。
『肩幅の増加を確認』
『胸囲の増加を確認』
『現在の体型では旧コーデは推奨されません』
「余計なことするな!」
思わずツッコむ。
だが。
鏡を見る。
少しだけ。
本当に少しだけ。
前よりマシになっている気がする。
「うーん……」
悩む。
悩む。
悩む。
「買うか」
負けた。
◇◇◇
数日後。
大学。
「東條?」
佐藤が二度見した。
「どうした?」
「いや、お前」
まじまじと見られる。
「なんか普通に格好良くなってね?」
「普通にってなんだ」
「前は普通以下だった」
「ひどくない?」
だが。
少し嬉しい。
さらに。
「あれ?」
女子の声。
「東條くん?」
以前話しかけてきた女子だった。
「お、おはよう」
「その服似合ってるね」
笑顔。
眩しい。
「ありがとう」
何とか返事をする。
女子と会話した。
たったそれだけなのに。
少しだけ世界が変わった気がした。
◇◇◇
帰宅後。
ラブステータスを確認する。
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東條直人
総合ランク:E
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運動能力 D
頭脳 D
センス F
ルックス C
経済力 F
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「おっ!」
総合E。
ついに上がった。
思わずガッツポーズする。
だが。
「ん?」
何かがおかしい。
もう一度見る。
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経済力 F
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「なんでだよ!?」
絶対おかしい。
俺は説明を開いた。
『高額出費を確認』
『預金残高の減少を確認』
『経済力を再評価しました』
「服買っただけだろ!?」
『計画性に問題があります』
「うるさい!」
思わず叫んだ。
誰もいない部屋で。
ラブステータスに怒られた。
意味が分からない。
せっかくバイトしたのに。
頑張ったのに。
服を買ったら経済力が下がった。
「理不尽すぎるだろ……」
ベッドに倒れ込む。
すると通知が表示された。
『おすすめ』
『資格取得』
『資産運用入門』
『家計管理講座』
「絶対やらない」
俺はそっとウィンドウを閉じた。




