第59話 ここ、いい?
翌日。
昼休み。
学食。
直人は昼食を受け取り。
いつもの席へ座った。
「いただきます」
箸を持った時だった。
「なおくん」
聞き慣れた声。
顔を上げる。
レナがトレーを持って立っていた。
「ん?」
レナは少しだけ周りを見る。
空席はある。
けれど。
直人の前を見て。
「ここ」
少し照れながら。
「いい?」
直人は頷く。
「ああ」
レナはほっとしたように笑った。
「ありがとう」
向かいへ座る。
二人で手を合わせた。
「いただきます」
「いただきます」
食べ始める。
しばらく静かな時間が流れる。
不思議と気まずくはない。
「昨日」
直人が口を開く。
「ん?」
「服」
「ああ」
レナは微笑む。
「今日着てくればよかった」
「まだ早いだろ」
「そうかな」
「汚したら嫌だし」
「それもそうだね」
二人とも少し笑う。
また静かな時間。
「なおくん」
「ん?」
「ありがとう」
「何が?」
「昨日」
「一人だったら」
「まだ迷ってた」
直人は少し笑う。
「俺も助かった」
「え?」
「一人じゃ決められなかった」
レナは少し驚く。
そして。
嬉しそうに笑った。
「じゃあ」
「お互い様だね」
「ああ」
その時。
昼休み終了を知らせるチャイムが鳴る。
「もう時間か」
「早いね」
二人はトレーを持って立ち上がる。
「また」
レナが小さく言う。
「ああ」
「また」
二人はそれぞれの教室へ向かって歩き出した。
学食で一緒に食べる。
それが。
二人にとって少しずつ。
当たり前になり始めていた。




