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第54話 写真

 月曜日。


 昼休み。


 学食。


 いつもの席。


 直人。


 葵。


 陽菜。


 結衣。


 そして栞。


「先輩!」


 結衣が元気だった。


 いつも通りだった。


「何だ」


「土曜日何してました?」


 嫌な予感。


「別に」


「怪しいです」


 怪しくなかった。


 だが。


 結衣は疑っていた。


 その時だった。


 栞がスマホを取り出す。


 何も言わない。


 ただ。


 画面を結衣へ向けた。


「?」


 結衣が覗き込む。


 数秒。


 沈黙。


 そして。


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


 学食中に響いた。


 全員が振り向く。


「うるさい」


 直人が言う。


「何ですかこれぇぇぇ!?」


 結衣が立ち上がる。


 スマホを指差している。


「何って」


「デートじゃないですか!」


 終わった。


 本当に終わった。


 葵が興味を持つ。


「何?」


 結衣がスマホを差し出す。


 写真。


 動物園。


 そして。


 腕を抱いている栞。


「近い」


 葵が即答した。


「近いね」


 陽菜も頷く。


 結衣が叫ぶ。


「近いどころじゃありません!」


「落ち着け」


「無理です!」


 無理らしい。


 その間。


 栞は静かだった。


 だが。


 少しだけ。


 満足そうだった。


「いつですか!?」


「土曜」


「聞いてません!」


「言ってない」


「何でですか!?」


 うるさかった。


 本当にうるさかった。


 そして。


 栞がスマホを操作する。


 数秒後。


 結衣のスマホが震えた。


 結衣が確認する。


━━━━━━━━━━━━


内緒でした


━━━━━━━━━━━━


「ぐはっ」


 結衣が胸を押さえる。


「追撃!?」


 意味が分からない。


 その時。


 少し離れた席。


 レナと友人。


「また騒いでる」


 友人が言う。


 レナも視線を向ける。


 結衣が立ち上がっている。


 何かあったらしい。


「珍しいね」


「そう?」


「結衣ちゃんがあそこまで騒ぐの」


 確かに。


 いつも以上だった。


 その時。


 結衣の声が聞こえた。


「動物園ですか!?」


 レナ。


 停止。


「え?」


 小さな声だった。


 友人が首を傾げる。


「動物園?」


 レナは向こうを見る。


 距離がある。


 写真は見えない。


 だが。


 何となく分かった。


 誰かが。


 直人と。


 動物園へ行った。


 そして。


 結衣が騒いでいる。


「へぇ」


 友人が笑う。


「誰だろうね」


 レナは答えない。


 ただ。


 少しだけ。


 気になった。


 その頃。


「先輩!」


 結衣が机を叩く。


「だから机を叩くな」


「私も動物園行きます!」


「行ってこい」


「先輩とです!」


「行かない」


 即答だった。


 結衣が悔しそうな顔をする。


 そして。


 栞を見る。


 栞も見る。


 数秒。


 沈黙。


 そして。


 栞がスマホを操作した。


━━━━━━━━━━━━


勝ちました


━━━━━━━━━━━━


 結衣。


 停止。


「言いましたぁぁぁぁぁ!?」


 学食中に響いた。


 直人は頭を抱えた。


 たぶん。


 今日は静かな昼休みになるはずだった。

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