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第42話 応援

「空いてますね!」


 勝手に決められた。


 昼休み終了のチャイムが鳴る。


 結衣は満足そうだった。


 直人は疲れていた。


 そして。


 数日後。


 木曜日。


 昼休み。


「そういえば」


 葵が呟く。


「今度の日曜大会なんだ」


「へぇ」


 直人は頷く。


 陸上部だ。


 大会くらいあるだろう。


「県大会?」


「うん」


 葵が笑う。


「頑張れよ」


「ありがと」


 普通の会話。


 そのはずだった。


「見に来る?」


 直人は固まった。


「え?」


「大会」


 葵は首を傾げる。


「応援」


 結衣が吹き出した。


「ちょっと待ってください」


 嫌な予感。


 とても嫌な予感。


「何ですか?」


 結衣が立ち上がる。


「今何て言いました?」


「見に来る?」


 葵が答える。


「違います」


 結衣は首を振った。


「そこじゃないです」


「?」


「何でそんな自然なんですか!」


 学食が少し騒がしくなる。


 またか。


 直人は思った。


「普通じゃない?」


 葵は本気で分かっていない。


「普通じゃないです!」


 結衣が叫ぶ。


「陸上の大会ですよ!?」


「そうだけど」


「彼氏しか行きません!」


 今度は葵が固まった。


「そうなの?」


「そうです!」


 即答だった。


 その時。


 陽菜が笑った。


「確かに」


「陽菜ちゃんまで!」


「だって」


 陽菜は肩をすくめる。


「普通は家族か彼氏じゃない?」


「だよね!?」


 結衣が味方を見つけた顔をする。


 葵は困った顔になった。


「でも」


「でもじゃないです!」


「東條くん友達だし」


 結衣が天を仰ぐ。


「またそれです……」


 もう手遅れだった。


「どうする?」


 葵が聞く。


「無理しなくていいけど」


 少しだけ笑う。


「来てくれたら嬉しいな」


 直人は言葉に詰まった。


 何となく。


 断りにくかった。


「まあ」


「うん」


「暇なら」


 葵が笑う。


「やった」


 その笑顔を見た瞬間。


「決定ですね」


 結衣が言った。


「何が」


「彼氏です」


「違う」


「違います」


 二人同時だった。


 だが。


 誰も信じていなかった。


 その時。


 スマホが震える。


 栞だった。


━━━━━━━━━━━━


陸上大会


━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━


応援


━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━


彼氏だと思います


━━━━━━━━━━━━


 直人はスマホを閉じた。


 本当に味方がいなかった。


 そして。


 結衣がニヤリと笑う。


「先輩」


「何だ」


「私のライブ」


「行った」


「葵ちゃんの大会」


「行く」


「陽菜ちゃんと水族館」


「行った」


 嫌な予感しかしない。


「じゃあ」


 結衣は満面の笑みを浮かべた。


「今度は私とデートですね!」


 学食中に響く声だった。


 直人は思った。


 たぶん。


 一番面倒なのは。


 音羽結衣だ。

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