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第38話 変わったもの

 日曜日の朝。


 直人は目を覚ました。


 水を飲む。


 着替える。


 そして。


 いつものランニングへ向かった。


 朝の空気は気持ちいい。


 昨日は帰りが少し遅かった。


 だが。


 不思議と体は軽かった。


「あ」


 聞き慣れた声。


 朝比奈葵だった。


「おはよう」


「おはよう」


 自然な挨拶。


 少し前なら考えられなかった。


「昨日楽しかったね」


「そうだな」


「結衣ちゃん面白かった」


「元気すぎる」


 二人とも笑う。


 そして。


 いつものように走り始めた。


 数十分後。


 ベンチで休憩する。


 その時だった。


━━━━━━━━━━━━


ラブステータス


更新されました


━━━━━━━━━━━━


「え?」


 思わず声が出た。


「どうしたの?」


「いや」


 葵には見えていない。


 いつものだ。


 直人は表示を開く。


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東條直人


総合ランク:C


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運動能力 B


頭脳   C


センス  C


ルックス C


経済力  C


━━━━━━━━━━━━


「……」


 しばらく見つめる。


 前回見た時。


━━━━━━━━━━━━


東條直人


総合ランク:C


━━━━━━━━━━━━


運動能力 C


頭脳   C


センス  D


ルックス C


経済力  D


━━━━━━━━━━━━


 だった。


 総合ランクは変わっていない。


 だが。


 中身が変わっていた。


「上がってる……」


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運動能力上昇


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継続的な運動


筋力向上


体力向上


━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━


センス上昇


━━━━━━━━━━━━


音楽活動


接客経験


対人経験


━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━


経済力上昇


━━━━━━━━━━━━


安定した収入


貯蓄増加


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「対人経験?」


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適正評価です


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「便利な言葉だな」


 全然説明になっていない。


 さらに下を見る。


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評価対象


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朝比奈葵


藤宮陽菜


音羽結衣


雨宮栞


牧村美月


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「ん?」


 直人は二度見した。


 もう一度見る。


━━━━━━━━━━━━


牧村美月


━━━━━━━━━━━━


「いやいやいや」


 思わず声が出た。


「今度は何?」


 葵が呆れたように聞く。


「いや」


 本当に意味が分からなかった。


「美月さん?」


━━━━━━━━━━━━


適正評価です


━━━━━━━━━━━━


「適正じゃないだろ」


━━━━━━━━━━━━


適正評価です


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「いや違う」


 直人は首を振る。


「美月さんに相手にされるわけないだろ」


━━━━━━━━━━━━


適正評価です


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「だから何がだよ!」


 会話にならない。


 そもそも。


 美月は二十六歳。


 社会人。


 バーの常連。


 どう考えても自分とは住む世界が違う。


「絶対違うだろ……」


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異性との交流は


評価対象です


━━━━━━━━━━━━


「雑だな!」


━━━━━━━━━━━━


適正評価です


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「戻ったな!」


 全然納得できなかった。


「東條くん」


 葵が笑っている。


「さっきから一人で大変そうだね」


「本当に大変なんだ」


 ため息を吐く。


 その時。


 スマホが鳴った。


 結衣だった。


━━━━━━━━━━━━


先輩!


昨日ありがとうございました!


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 数秒後。


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またカラオケ行きましょう!


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「行かない」


 即返信。


 すると。


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返信はやっ!


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「そこかよ」


 思わず笑う。


 さらに。


 もう一件。


 栞だった。


━━━━━━━━━━━━


おはようございます


━━━━━━━━━━━━


 珍しい。


 さらに続く。


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昨日は楽しかったです


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 少し間が空く。


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友達が増えました


━━━━━━━━━━━━


 その文章を見て。


 少しだけ笑った。


「嬉しそう」


 葵が言う。


「そうか?」


「うん」


 葵は笑う。


「何かいいことあった?」


 直人は少し考える。


 そして。


「友達が増えたらしい」


「誰の?」


「雨宮さん」


 葵が少し驚く。


 それから。


 優しく笑った。


「そっか」


 短い言葉だった。


 だが。


 どこか嬉しそうだった。


 直人はスマホを閉じる。


 ステータスは上がっていた。


 でも。


 一番変わったのは。


 数字じゃない気がした。


「もう一周行こうか」


 葵が立ち上がる。


「そうだな」


 直人も立ち上がった。


 総合ランクはまだC。


 だけど。


 少しだけ。


 前に進めている気がした。

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