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第20話 朝の人

 最近。


 朝ランニングを始めた。


 理由は単純。


 運動能力を維持するため。


 引越しバイトのシフトを減らしたからだ。


 せっかくCまで上がった。


 落としたくない。


◇◇◇


 朝六時。


 河川敷。


 人は少ない。


 空気も気持ちいい。


 走るには最高だった。


 そして。


 今日もいた。


 前方。


 ポニーテールの女性。


 同じくらいの年齢だと思う。


 いつも走っている。


 毎日見かける。


 だから。


 なんとなく覚えてしまった。


◇◇◇


 最初はすれ違うだけだった。


 だが。


 ある日。


「おはようございます」


 向こうから挨拶された。


 驚いた。


 危うく転びそうになった。


「お、おはようございます」


 慌てて返す。


 それが始まりだった。


◇◇◇


 翌日。


「おはようございます」


「おはようございます」


 その翌日。


「おはようございます」


「おはようございます」


 それだけ。


 それだけだった。


 だが。


 少し不思議だった。


 名前も知らない。


 年齢も知らない。


 それでも。


 朝会うと少し嬉しい。


◇◇◇


 一週間後。


 信号待ち。


 珍しく隣になった。


「今日は暑いですね」


 女性が言った。


「そうですね」


 会話終了。


 五秒。


 持たなかった。


 俺のコミュ力なんてそんなものだ。


 だが。


 女性は笑っていた。


「面白いですね」


「何がですか?」


「毎日会うのに名前知らない」


「あ」


 確かに。


「そうですね」


「そうですねじゃないですよ」


 初めて見た。


 楽しそうに笑う顔を。


◇◇◇


「じゃあ明日も」


 信号が変わる。


「おはようございます」


「おはようございます」


 女性は走り去っていった。


 速い。


 本当に速い。


「速っ」


 思わず呟く。


 毎日見ていたが。


 改めて見ると異常だった。


◇◇◇


 翌日。


 大学。


 講義を終えて廊下を歩く。


 すると。


 向こうから誰かが歩いてきた。


 そして。


 目が合った。


「え?」


「え?」


 同時だった。


 ポニーテール。


 朝の人。


 朝の人だった。


 数秒。


 二人とも固まる。


「同じ大学だったんですか!?」


「同じ大学だったんですか!?」


 また同時だった。


 そして。


 二人とも吹き出した。

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