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第19話 女子大生八名

「東條」


 金曜日。


 出勤した瞬間だった。


「はい」


「頑張れ」


 店長が肩を叩いた。


「何をですか?」


「生き残れ」


「怖いこと言わないでください」


◇◇◇


 午後八時。


 予約客が来店した。


 女子大生八名。


 本当に八名だった。


 しかも。


 全員うるさい。


「すごーい!」


「個室じゃん!」


「カラオケある!」


「歌おう!」


 元気すぎる。


 エネルギーが違う。


◇◇◇


「注文お願いします」


 俺はタブレットを持って個室へ入る。


 すると。


 一斉に視線が集まった。


 嫌な予感がした。


「ねぇ」


 一人が聞いてきた。


「大学生?」


「はい」


「やっぱり!」


 なぜか盛り上がる。


「いくつ?」


「二十です」


「若ーい!」


 同い年くらいだと思うんだけど。


 なぜか若い扱いされた。


◇◇◇


「彼女いる?」


 来た。


 絶対来ると思った。


「いません」


「好きな人は?」


「います」


 即答。


 すると。


「おおー!」


「青春!」


「かわいい!」


 なぜか拍手された。


 意味が分からない。


◇◇◇


 その後も。


「何系の女子が好き?」


「初恋の人?」


「付き合った人数は?」


 質問攻めだった。


 完全におもちゃにされている。


◇◇◇


「東條くん」


 一人の女子が笑う。


「真面目そう」


「よく言われます」


「絶対浮気しなさそう」


「しません」


「おおー」


 また盛り上がる。


 何なんだろう。


 この空間。


◇◇◇


 注文を届けて戻る。


「お疲れ」


 店長だった。


「疲れました」


「まだ一時間だぞ」


「嘘ですよね?」


 あと二時間ある。


 信じられない。


◇◇◇


 しばらくして。


 個室から歌声が聞こえてくる。


 上手い。


 かなり上手い。


 さすが大学生。


 カラオケ慣れしている。


 そう思っていた。


「東條くーん!」


 呼ばれた。


 嫌な予感しかしない。


◇◇◇


「一曲!」


「え?」


「歌って!」


「無理です」


「歌って!」


「無理です」


「歌って!」


 多数決だった。


 負けた。


◇◇◇


 マイクを握る。


 恥ずかしい。


 死ぬほど恥ずかしい。


 だが。


 ボイトレもしている。


 最近はカラオケにも行った。


 少しだけ自信はあった。


 歌う。


 一曲。


 最後まで。


◇◇◇


 静かだった。


「え?」


 思わず周囲を見る。


 全員固まっている。


 何かやらかしただろうか。


 すると。


「上手くない?」


 一人が呟いた。


「思った」


「普通に上手い」


「なんでバーで働いてるの?」


「大学生だからじゃない?」


 なんだろう。


 褒められているらしい。


◇◇◇


 閉店後。


 ラブステータスを開く。


━━━━━━━━━━━━


東條直人


総合ランク:D


━━━━━━━━━━━━


運動能力 C


頭脳   C


センス  D


ルックス C


経済力  E


━━━━━━━━━━━━


「え?」


 思わず二度見した。


━━━━━━━━━━━━


センス D


━━━━━━━━━━━━


 上がっていた。


『歌唱力の向上を確認』


『コミュニケーション能力の向上を確認』


『センスを再評価しました』


「マジか……」


 ついに。


 センスがDになった。


 その時。


 新しい通知が表示される。


『総合ランク再計算中』


「ん?」


 画面が光る。


 そして。


━━━━━━━━━━━━


東條直人


総合ランク:C


━━━━━━━━━━━━


「は?」


 固まった。


 数秒。


 十秒。


 二十秒。


「C?」


 本当に?


 俺が?


 画面を何度見ても。


 そこには確かに。


 総合ランクCと表示されていた。

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