↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/79

第18話 BAR Moonlight

 初出勤の日。


 俺は緊張していた。


 引越し屋の初日より緊張している。


 冷蔵庫を運ぶ方が気楽だった。


「おはようございます」


 店の扉を開ける。


「おはよう」


 店長が軽く手を上げた。


 本名は神代誠。


 三十五歳。


 既婚。


 そして異様に格好いい。


 男の俺でもそう思う。


「まずは店を案内する」


「お願いします」


◇◇◇


「ここがカウンター」


 落ち着いた雰囲気だった。


 照明も少し暗い。


 大人の店。


 そんな感じだ。


「そして奥」


 店長が扉を開く。


「個室だ」


 思ったより広かった。


 ソファ。


 テーブル。


 大型モニター。


「カラオケ?」


「そう」


 店長が頷く。


「女子会も多いし、二次会利用もある」


「なるほど」


 さらに奥。


 二部屋。


 三部屋。


 合計三室。


「結構広いですね」


「個室の方が人気だからな」


◇◇◇


 夜。


 営業開始。


 最初はグラス洗い。


 片付け。


 注文運び。


 雑用ばかりだった。


 だが。


 それで十分だった。


「東條くん?」


 女性客だった。


 二十代後半くらい。


「はい」


「大学生なんだって?」


「そうです」


「若いねー」


 なぜか笑われた。


「ありがとうございます?」


 正解が分からない。


◇◇◇


「東條」


 店長が呼ぶ。


「はい」


「飲むなよ」


「え?」


「客に勧められても飲むな」


「はぁ」


 よく分からない。


 だが。


 数分後。


 理解した。


「東條くんも飲もうよ」


「一杯だけー」


「若いんだからー」


 三人。


 囲まれていた。


「えっと」


 助けを求める。


 店長を見る。


「飲むな」


 即答だった。


「はい」


◇◇◇


 その後。


 閉店まで働いた。


 疲れた。


 だが。


 嫌な疲れじゃない。


 むしろ新鮮だった。


「どうだった?」


 帰り際。


 店長が聞いてくる。


「楽しかったです」


「そうか」


 店長は少し笑った。


「東條」


「はい」


「接客で一番大事なことは何だと思う?」


 考える。


 分からない。


「話術ですか?」


「違う」


「知識ですか?」


「違う」


「じゃあ何ですか?」


 店長はグラスを拭きながら言った。


「聞くことだ」


「聞く?」


「人は話したい生き物だからな」


 そう言って笑った。


 その言葉は。


 少しだけ心に残った。


◇◇◇


 帰宅後。


 ラブステータスを開く。


━━━━━━━━━━━━


東條直人


総合ランク:D


━━━━━━━━━━━━


運動能力 C


頭脳   C


センス  E


ルックス C


経済力  E


━━━━━━━━━━━━


 変化なし。


 だが。


 通知が表示された。


『新しい経験を確認しました』


『継続を推奨します』


 思わず笑う。


 最近のラブステータスは応援団みたいだ。


 そして。


 その時。


 新しい通知が届く。


 BAR Moonlight。


 スタッフ用グループチャットだった。


『金曜日、個室予約あり』


『女子大生グループ八名』


「八名?」


 思わず呟く。


 嫌な予感しかしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。