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第17話 次のステージ

 引越しバイトを始めて半年。


 俺は久しぶりにラブステータスを開いていた。


━━━━━━━━━━━━


東條直人


総合ランク:D


━━━━━━━━━━━━


運動能力 C


頭脳   C


センス  E


ルックス C


経済力  E


━━━━━━━━━━━━


「運動は上がったな」


 思わず呟く。


 最初はFだった。


 今ではC。


 正直。


 自分でも驚いている。


『おすすめ』


 通知が表示される。


「またか」


 最近よく出る。


 内容を見る。


━━━━━━━━━━━━


接客業


コミュニケーション能力


表現力


━━━━━━━━━━━━


「接客?」


 首を傾げる。


 すると。


 さらに詳細が表示された。


━━━━━━━━━━━━


おすすめ職種


・販売員


・受付


・バーテンダー


━━━━━━━━━━━━


「バーテンダー?」


 思わず二度見した。


 なんか格好いい。


 映画とかで見るやつだ。


 俺とは無縁の世界だと思っていた。


◇◇◇


「辞めるのか?」


 山本さんが聞いてきた。


「辞めません」


「よかった」


 なぜか本気で安心していた。


「ただ」


「ただ?」


「少しシフト減らそうかなと」


 運動能力は上がった。


 経済力も少しずつ上がっている。


 だから。


 別のことも始めたい。


「なるほどな」


 高橋さんが頷いた。


「次のステータスか」


「そうです」


「ゲームみたいだな」


「自分でもそう思います」


◇◇◇


 その週末。


 俺は駅前にいた。


 目的は求人探し。


 そして。


 一件の店が目に入った。


『BAR Moonlight』


 落ち着いた雰囲気。


 大人っぽい。


 正直。


 少し緊張する。


「無理かも」


 そう思った。


 だが。


 少し前の俺なら。


 ここで帰っていた。


 今は違う。


「すみません」


 扉を開く。


 カラン。


 小さなベルが鳴った。


◇◇◇


「バイト希望?」


 カウンターの向こう。


 三十代くらいの男性がいた。


 黒いシャツ。


 落ち着いた雰囲気。


 なんというか。


 格好良い。


「はい」


「大学生?」


「そうです」


「お酒は?」


「詳しくないです」


「正直だね」


 店長は笑った。


「接客経験は?」


「引越し屋です」


「引越し屋?」


「はい」


 店長は数秒黙った。


 そして。


「面白いね」


 笑った。


 何が面白いのか分からない。


◇◇◇


 帰宅後。


 通知が表示される。


『新しい挑戦を確認しました』


 ラブステータスだった。


「そこまで見てるのか」


 少し怖い。


『センス向上が期待できます』


『継続を推奨します』


 思わず笑う。


 運動。


 勉強。


 ボイトレ。


 引越し。


 そして。


 バーテンダー。


 少し前の俺なら想像もできなかった。


 だけど。


 悪くない。


 そう思えた。


 そして翌日。


 店長から連絡が届く。


『採用』


「マジか」


 思わず声が出た。


 どうやら。


 俺の新しい挑戦が始まるらしい。

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