第2話 ラブステータス
昼休み。
俺は学食で一人、ブレスレット端末を操作していた。
いや、正確には操作していない。
今の端末は思考操作が基本だ。
頭の中でイメージするだけでウィンドウが表示される。
もはや画面をタップする方が珍しい。
「白石さんってラブステータスやってるのかな」
ふと呟く。
もちろん返事はない。
そもそも俺はラブステータスを使ったことがなかった。
興味もなかった。
だって好きな人がいたから。
他の人を探す必要なんてなかった。
だけど。
大学で再会してから思うようになった。
もし。
もしレナちゃんがラブステータスをやっていたら。
アプリの中なら話せるんじゃないか、と。
現実では話しかける勇気がない。
でもアプリなら。
もしかしたら。
「……やってみるか」
そう呟き、ラブステータスを検索する。
数秒後にはインストールが完了した。
『ラブステータスへようこそ』
『利用者情報を解析します』
『完了しました』
目の前にウィンドウが表示される。
『東條直人様』
『ステータスを表示します』
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東條直人
総合ランク:F
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運動能力 F
頭脳 D
センス F
ルックス E
経済力 F
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……。
…………。
「え?」
思わず声が漏れた。
「いやいやいや」
何かの間違いだろ。
もう一度確認する。
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総合ランク:F
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変わらない。
「Fって……」
せめてEだと思っていた。
現実は甘くなかった。
『総合ランク差が二以上離れた利用者は表示されません』
説明文が目に入る。
つまり。
Fランクの俺に表示されるのは。
同じFランクとEランクだけ。
「待てよ……」
俺は大学内の噂を思い出した。
白石玲奈。
大学で知らない人はいない。
学内人気ランキング二年連続一位。
モデルでも通用すると言われるほどの美人。
そんな人が。
FやEのはずがない。
「いや……」
嫌な予感がする。
「もしかして」
頭の中で検索する。
白石玲奈。
結果は――。
『該当する利用者は表示できません』
その文字を見た瞬間。
全てを理解した。
「スタートラインにも立ててないじゃん……」
俺は机に突っ伏した。
話しかけるどころじゃない。
表示すらされない。
好きな人を探す資格すらない。
それが今の俺だった。
だけど。
不思議と諦める気にはなれなかった。
むしろ。
やることが分かった気がする。
「……上げればいいんだろ」
運動能力。
頭脳。
センス。
ルックス。
経済力。
全部。
上げればいい。
レナちゃんがどこにいるのかは分からない。
でも。
今のままじゃ届かないことだけは分かった。
まずは総合E。
全てはそこからだった。




