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第15話 サークル見学

「サークルか……」


 大学の掲示板を眺める。


 ラブステータスに勧められたから。


 ただそれだけだ。


 少し前の俺なら絶対に来ていない。


 知らない人と話すのは苦手だ。


 今でも苦手だ。


 だが。


 少しだけ変わった気がする。


「よし」


 俺は一枚のチラシを手に取った。


 音楽サークル。


 ボイトレもしている。


 ちょうどいい気がした。


◇◇◇


「見学ですか?」


「はい」


 部室の扉を開ける。


 中には十人ほどいた。


 ギター。


 キーボード。


 ドラム。


 思ったより本格的だった。


「初心者ですか?」


「はい」


「大歓迎ですよ」


 先輩が笑う。


 思ったより優しい。


 もっと怖い場所だと思っていた。


◇◇◇


 一時間後。


「楽しかったな」


 帰り道。


 思わず呟く。


 何かしたわけじゃない。


 話を聞いて。


 演奏を聞いて。


 少し会話しただけ。


 それだけだった。


 だが。


 知らない世界を見るのは面白かった。


 そんなことを思う。


◇◇◇


 翌日。


 大学の食堂。


「東條」


 佐藤が驚いた顔をしていた。


「お前サークル入ったの?」


「見学だけ」


「へぇ」


 感心したように頷く。


「変わったな」


「そうか?」


「前のお前なら絶対行かなかっただろ」


「それはそうかも」


 否定できない。


◇◇◇


 その時だった。


「東條くん」


 声が聞こえた。


 反射的に振り向く。


 そこにいたのは。


 白石玲奈だった。


「白石」


 心臓が少しだけ跳ねる。


「この前見たよ」


「え?」


「音楽サークル」


 思わず固まる。


 見られていたらしい。


「見学だけだけど」


「そうなんだ」


 レナは笑った。


「頑張ってるね」


 たったそれだけ。


 たったそれだけなのに。


 胸の奥が少し熱くなる。


「ありがとう」


 なんとか返事をする。


「じゃあね」


 レナは手を振って去っていった。


 数秒。


 固まる。


◇◇◇


「おい」


 佐藤がニヤニヤしていた。


「何だよ」


「白石さんと普通に話してたな」


「同じ大学だし」


「いやいや」


 佐藤は首を振る。


「お前あの白石さんだぞ?」


「そうだけど」


「そうだけどじゃない」


 何がそんなにおかしいのか分からない。


◇◇◇


 その日の夜。


 ラブステータスを開く。


━━━━━━━━━━━━


東條直人


総合ランク:D


━━━━━━━━━━━━


運動能力 D


頭脳   C


センス  E


ルックス C


経済力  E


━━━━━━━━━━━━


 変化はない。


 当然だ。


 だが。


 少しだけ笑う。


 レナが。


 俺のことを見ていた。


 ただそれだけで。


 今日一日が良い日になった気がした。

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