第14話 広がる世界
総合Dになってから。
明らかに変わったことがあった。
『新しいマッチング候補が表示されました』
通知の数が増えた。
「多くないか?」
思わず呟く。
以前は数人だった。
今は違う。
表示される人数が目に見えて増えていた。
「Dって結構違うんだな」
ラブステータスを眺める。
だが。
不思議なことに。
以前ほど興奮しなくなっていた。
最初の頃は違った。
マッチング。
メッセージ。
全部が新鮮だった。
今は。
少し冷静に見ている自分がいた。
◇◇◇
「東條」
「はい」
引越し作業中。
山本さんが俺を見る。
「モテてるか?」
「モテてません」
「嘘つけ」
「嘘じゃないです」
マッチングとモテるは違う。
たぶん。
「この前の子は?」
高橋さんが聞く。
「終わりました」
「早かったな」
「クモ飼ってました」
沈黙。
「何匹だ?」
「三十匹くらい」
「無理だな」
「無理だな」
即答だった。
◇◇◇
帰宅後。
また一件。
マッチング通知が届いていた。
プロフィールを見る。
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総合ランク D
相性 92%
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「高いな」
写真を見る。
可愛い。
普通に可愛い。
趣味も合いそうだった。
少し迷う。
そして。
メッセージを送った。
◇◇◇
一週間後。
「はぁ……」
俺はため息を吐いていた。
悪い子じゃなかった。
むしろ良い子だった。
優しい。
話も合う。
だけど。
「部屋がなぁ……」
思い出す。
床が見えなかった。
ゴミではない。
服。
本。
雑貨。
色んな物が山になっていた。
歩く場所だけ空いていた。
「すごかったな」
人のことは言えない。
俺も綺麗好きではない。
でも。
無理だった。
◇◇◇
その夜。
ラブステータスを開く。
「相性九十二ってなんだよ……」
思わず呟く。
趣味も合う。
会話も合う。
価値観も近い。
たぶん。
数値は正しい。
だけど。
実際に会わなければ分からないこともある。
そんな気がした。
その時。
新しい通知が表示される。
『おすすめ』
『新しい体験活動』
「またか」
最近のラブステータスは忙しい。
『コミュニケーション能力向上』
『交流イベント』
『大学サークル』
表示された内容を見て。
俺は少し考えた。
「サークルか……」
大学に入ってから一度も入っていない。
面倒だったからだ。
だが。
今なら少し興味があった。
知らない人と話す。
新しい世界を見る。
少し前の俺なら避けていたことだ。
だけど。
今の俺は。
「行ってみるか」
そう呟いていた。




