第13話 悪い子じゃない
「へぇ」
向かいに座った女性が笑う。
「東條くんって真面目だね」
「そうかな?」
「真面目だよ」
ファミレス。
人生初のマッチング相手との食事。
思っていたより普通だった。
いや。
むしろ楽しい。
話も合う。
よく笑うし。
気も使ってくれる。
悪い人じゃない。
本当に。
「大学楽しい?」
「それなりに」
「彼女は?」
「いない」
「へぇ」
なぜか嬉しそうだった。
◇◇◇
食事は二時間ほどで終わった。
「今日はありがと」
「こちらこそ」
「また会う?」
少しだけ考える。
そして。
「うん」
自然に頷いていた。
嫌じゃなかったからだ。
普通に。
本当に普通に楽しかった。
◇◇◇
帰宅後。
ベッドへ寝転ぶ。
悪い子じゃなかった。
むしろいい子だった。
ラブステータスも間違っていなかった。
だが。
「……」
ふと。
大学の講義室を思い出す。
窓際。
本を読んでいるレナ。
友達と笑っているレナ。
それだけで。
胸が少し苦しくなる。
「ダメだな」
思わず苦笑する。
今日会った子はいい子だった。
それは間違いない。
だけど。
比べてしまう。
勝手に。
どうしても。
レナと。
◇◇◇
翌日。
「どうだった!」
山本さんだった。
「可愛かったか!?」
「付き合うのか!?」
高橋さんまでいる。
なぜそんなに興味があるんだ。
「普通にいい人でした」
「おお!」
「よかったじゃねえか!」
二人は嬉しそうだった。
だから。
少しだけ言いづらかった。
「でも」
「ん?」
「たぶん付き合わないと思います」
沈黙。
「なんでだ?」
山本さんが聞く。
俺は少し考えた。
そして。
「好きな人がいるからです」
それしかなかった。
それ以外の理由が見つからなかった。
「……」
山本さんが黙る。
高橋さんも黙る。
そして。
「重症だな」
「重症だな」
二人同時だった。
「そこまでか?」
「そこまでだ」
「そこまでだ」
即答だった。
◇◇◇
その日の夜。
ラブステータスを開く。
メッセージが届いていた。
『今日は楽しかったです』
『また会いたいです』
少しだけ胸が痛んだ。
嬉しい。
本当に嬉しい。
数か月前の俺なら。
こんなメッセージをもらえることなんてなかった。
だけど。
指が止まる。
レナの顔が浮かぶ。
「はぁ……」
思わずため息を吐く。
ラブステータスは凄い。
出会いもくれる。
きっかけもくれる。
でも。
好きな人を忘れさせてはくれないらしい。




