第四章 ランドールとサラ④
ランドールから長い長い話を呆然としつつも聞き終えたサラは、自分という人間は何者だったのかを思い出していた。
ランドールから聞き及んだこと。教会で聞いたこと。
真龍ディエィソーン。
この世界の秘密に気づいてしまったのだ。
サラは、口元を両手で覆って吐き気を堪えていると、すぐにランドールが気が付いてくれた。
「我慢しなくていい」
そう言って、背を擦ってくれたがサラはイヤイヤと首を振っていた。
すっかり大人の男性に成長したランドールに醜態を見せることがどうしても恥ずかしかったのだ。
そんなサラの心情を察したランドールは、扉の外に控えていた侍女に後を頼んで部屋を出ていた。
部屋を出たランドールは、心配そうな、それでいて何かを考えるような難しい顔をしながらも、心の片隅で成長したサラの可憐さに心が揺れていた。
元々可愛い妹だと、そう思っていたサラ。
だが、ランドールは気が付いてしまったのだ。サラの苦し気な涙を浮かべた顔を見たことで自覚したのだ。
妹なんかじゃないと。初めて会った時からそうだったのだ。
可愛い妹分のためにやっていたと思っていたことは全て、たった一人の少女のためにやっていたこと。
好きな人……。そんな生温いものではない。愛する人のための行動だったのだ。
守りたいと思う気持ち。可愛いと思う気持ち。離れたくないと思う気持ち。
すべてが腑に落ちた。
だからこそこれから先の国盗りへの覚悟が固まった。
サラをこの国から、そしてランドールの運命から解放して見せると。
決して、真龍ディエィソーンに渡しはしないと。
ランドールがそう決意をしている一方で、サラもある決意を固めていた。
自分の真の使命を今こそ果たすのだと。
それまでは、そう教育されてきたから、そう運命づけられていたから。
自分で考えることもなく、大人たちに言われるがままそうしていた。
だが、それは違ったのだと今更になって知る。
今度は自分の意志で、そうありたいと、ランドールの生きる世界のために使命を果たすことを決意する。
それがサラにできる精一杯の恩返し……。いや、愛し方だった。
最後の時まで、ランドールと過ごす時間を心に刻み、思い出を胸に死のうと、そう心に誓った。




