第二十四話 七年前 結
「この度は人命救助にご協力下さり、ありがとうございます!」
空から降りてきた航空内火艇、その中から五人の成人男女が現れた。
その内の一人、茶色の質素なローブを着た老人が、笑顔で長雨に感謝を告げる。
その胸元には、山に稲妻が刺さった紋様の、銀色に輝くブローチがあった。
スラン宣教会の司教を示す徽章である。
「我々の不手際により未来ある子どもたちをを危険に晒し、一時はどうなることかと思いましたが、あなた方のお陰で最悪の事態を免れることができました」
「そちらの捜索願が迅速だったからこその早期発見です。自分は第二十独立戦隊に所属する長雨太助曹長であります」
「これは名乗りが遅れて申し訳ない。私の名前は久末亜紋、今回の地下都市間輸送計画の責任者で、スラン宣教会の司教に就いております」
スラン宣教会とは月の涙以降に創始されて、十五年戦争の激化の中で勢力を伸ばした新興宗教の一つである。
その教理は月の涙を神の啓示とし、念奏者の保護、念波動の育成による人類の進化、新人類時代の到来を目指すというものだ。
ゆえに信者達は強力な念奏者を新人類への足掛かりと捉えて、積極的に関わる活動をしているという。彼らが掲げる教祖も特異な念波動を持つことで有名だ。
「しかし独立戦隊とは。軍部に明るくない私でもその名の意味は理解しております。独自の指揮系統で特殊な作戦活動を任された部隊であると」
「大層な名前と不透明さが悪目立ちするばかりの、変哲のない一部隊ですよ」
「ご謙遜を。今回の要人救助を見るに、柔軟に行動できるウォーキャリアのプロフェッショナルなのだと痛感しました、今後は認識を改めようと思います」
友好的な態度で成果を評価する様は、手慣れたものであるかのようだ。
古い指導者が権勢を失った地下都市では、こういった求心力のある団体等が実質的に取って代わる事態が度々発生する。
都市間の移動もままならない閉鎖空間で生まれた、独自のコミュニティーの行き着いた答えの一つなのだろう。
政教分離原則に従わない黙認された支配者。
国の手が届かず、頼ることさえままならない状況で、過酷な環境下の人々が精神衛生を求めてなにかを信じ、身を委ねようとする。言い方は悪いが宗教の苗床である。
そうして生まれた組織に属する彼が、都市間の大規模な輸送計画を任されていることからも、彼の拠点都市におけるスラン宣教会の影響力の程が窺えるというものだ。
「なによりお二人の様子を見れば、あなたの人となりも伝わります」
長雨の傍に居る紫と瑠璃に微笑みかける。
そんな老人の目から逃れるように、二人は男の背中に隠れた。
「懐かれていらっしゃる。明日香様からお預かりした御息女を見失い、最悪の事態が脳裏を掠めては憂虞するばかりでしたが、良き出会いを為されたようだ」
「事前連絡の通りに怪我はないようですが、今回の件で負った目に見えない傷は大きいでしょう。すぐにでもご家族の元で心を休めて欲しいのですが」
「同感です。そこでお手数をお掛けしますが、独立戦隊の皆様にはこのまま我々のランチを本来の目的地まで護衛して頂きたいのです」
このまま獅童明日香が拠点とする地下都市に向かう。予想のできていた依頼に、長雨は第二十独立戦隊を代表して首肯する。
「助かります! 事前に周辺の傀機獣を掃討して頂いたことといい頭が上がりません」
「とはいえランチ一つで出迎えに来るとは、命知らずな自分達でも真似しませんよ」
「いやはや、逸る気持ちばかりが先行して、そちらの仕事を増やしてしまいました。これだけ御息女と親睦を深めていたのなら、私達が出向く理由もありませんでしたね」
亜紋の言う通り、姉妹から同行を許される程の信頼を得られたのなら、長雨たちだけで目的の地下都市まで連れて行けば解決である。
そもそもランチ一つで救助隊などと名乗る方がおかしな話だ。
だというのに責任者がその身一つで飛んできたのは、スラン宣教会はそれだけ獅童姉妹襲撃事件を重く見ているというアピールもあるのだろう。
あるいは。
「お恥ずかしい話ですが、この老体にできることは既に無いようですな」
そう語る亜紋を見て、長雨はその疑惑へ確信を持った。
彼は最悪の事態を想定して送り込まれた人身御供なのだと。
つまりは英雄、獅童明日香の娘を失った場合に捧げる、スラン宣教会からの犠牲。
実際は痛み分けにもならないが、責任を負う側が無傷では受ける非難も増す。政治と絡んだ以上、宗教も人気商売の原理からは逃れられない。
今回の事件において加害者と被害者は誰なのかをはっきり知らしめる為に、責任者には姉妹と運命を共にさせる。
司教を差し出した連中は、そんな落とし所を目論んでいたのだろう。
きっと消えた姉妹を探す段階から、この老人に命で償って貰うことを言外に滲ませて。
長雨に映る亜紋の笑顔の裏には、そうして覚悟を決めた者の諦観が隠れていた。
「いいえ。当初の予定通りに、貴方にはこの姉妹をご家族の所まで連れて行って貰わなければいけません。まだ楽はできませんよ」
「……ああ、そうでした。元は私が引き受けた依頼、そこまで見届けなければ」
「自分達は傀機獣こそ追い払いましたが、輸送中に動いた姉妹の襲撃犯も、そちらの状況報告を見た限りでは恐ろしい手並み、最後まで気は抜かないで臨むべきです」
襲撃犯に言及されて、亜紋の諦めた笑みが焦りに変わる。
喜べはしないが、それでも死を待つ相に比べれば、彼本来の気性が感じられた。
「長雨殿は、共生過激派――暴徒の攻撃はまだ終わっていないとお考えですか?」
「独自の見解になりますが、ただの暴徒にしては計画性が窺えます」
長雨は背後に立つ姉妹に、少し待たせると呟く。二人は頷いて返した。
「自分はこの二人からも事件の状況を聞いているのですが、するとどうも今回の犯人は、最初から姉妹の命を狙っていたのではと思えたのです」
「その可能性は我々も考えましたが、火器で直接危害を加えようとしていたことから、獅童姉妹を知らない者達による、傀機獣の襲撃に合わせた突発的な犯行かと……」
「生躰変で、旧来の武器の存在価値は様変わりしましたからね」
生躰変――念波動を宿らせた人体の変化現象。
では、思考の影響を受ける念波動を肉体に被せれば、一体なにが起きるのか。
即ち、理想の投影である。
健康でいたい、強くありたい、傷つきたくない、苦しみたくない、死にたくない。
人なら誰もが持つこれら願望を叶えるべく、念波動は肉体を変成するのだ。
結果、自身を覆う念波動、内側の生躰変の二重防壁により、人類は異常とも言える防御力を手にし、これまで人の脅かすのに十分だった器具の数々は、相対的にその効力を失った。月の涙以降、火器の類が廃れていった理由である。
獅童姉妹に代表される強念奏者には尚のこと、有効な武器となりえない。
「飛び道具を向けた愚かしさから、狙われた二人に対する事前知識や綿密に企てる知性はなかったとばかり」
「では、久末司教が姉妹を害するとしたら、どのような手段を取られますか?」
言葉に詰まる質問に、亜紋は思わず傍らの姉妹を見る。
事件を振り返るにしても、本人たちの前でするには過激すぎる話題だ。しかし。
今度は二人とも隠れなかった。
寧ろ答えを催促するように、狼狽した老人の口に注視している。
これは長雨への信頼ゆえか、それとも――亜紋は暫し熟考して。
「……ウォーキャリアのような念波動増幅装置を用いるか、傀機獣の前に連れて行く。その程度しか浮かびません。考えたくないのではなく、私の頭では有効な手が……」
「自分もです。従来の火器が効かず、念波動が防御力に直結するのなら、結局は念波動の力比べになる。なので最初は傀機獣ありきの犯行かとも思ったのですが」
見計らったかの如き傀機獣の襲来。
これは長雨が瑠璃に確認した、当時の彼女の感想である。
人が傀機獣を操るなどという人類存亡を賭けた現在進行中の大戦争が茶番になる超展開さえ考慮しなければ、都合の良い傀機獣襲撃に機を見て暴徒が暴れただけ、で終わらせたくなるのだが。
瑠璃の話から紫に起こった顛末について聞いた長雨は、犯人側の意図に恐ろしい可能性を見出したのだ。
「そちらの捜索願を受けた同隊の天羽准尉から連絡は届いていると思いますが、保護した直後の獅童紫は取り乱し、虚脱状態にありました」
「……はい。痛ましい話ですが、緊急事態での防衛なので――」
「これこそが凶徒の狙いだったのではないでしょうか」
強力な念波動を持ちながら、精神の均衡を崩した少女。
その様子は妹をして、心を壊し半狂乱の最中にあったと語っていた。
「つまり、肉体を害せないのなら精神を壊そうと」
神の如き念波動の持ち主でも、その心は十二歳の少女に過ぎない。
だから敵意の対象になるべく、大事な妹に銃口を向けて危機感を煽った。
赤い花に化けて、紫の胸に刻まれるために。
「……これは計画的な自爆テロだと?」
「火器を携行した連中は輸送中の物資を念入りに破壊したそうですが、収奪を考えない行動も、よく現れる共生派の名を盾に略奪を行うにわか匪賊には見られない」
「…………」
「連中は姉妹の目の前で、通信手段を壊しつつ火器の火力を見せつけた。そんなものを次いで家族に向けられれば、誰でも万が一を考えるでしょう。挑発は功を奏して、我を失った少女の反撃は、凶徒諸共に彼女の心を折ってしまった」
「だとしたら先程の発言通り、恐ろしい手並みですね。なにせ自身の命を賭している」
長雨の推測に思うところがあったのか、亜紋も自分の考えを口にする。
「実は紫様達が去った後、残った凶徒集団は皆、徹底抗戦の末に果てたのです。捕まるのを嫌がる余りに命を投げたとも思ったのですが、それにしては最後の一人が撃たれるまで、死に迫る人間の恐怖というものを感じなかった……訓練された兵士のように」
暴徒の場当たりな襲撃ではなく、計画に則った凶徒の作戦行動なのだとしたら。
紫は運が悪かったのではなく、賊の思惑通りに追い詰められていたことになる。
姉妹の排除を目論む集団の影に、亜紋は狂気めいた執念を感じずにはいられない。
「それ程に……獅童明日香の子というのは、そこまで重いものなのでしょうか」
呟いて少し間を置いてから、はっとして自身の言葉を否定に掛かる。
「これは失礼を! 御息女の無事に慌てて出向いた我々が言える言葉ではありませんでした」
「そんなことはありませんよ。な、瑠璃ちゃん」
「はい。あなたのほんねがきけました」
ここに来て初めて聞いた瑠璃の言葉に亜紋は驚く。
理由は不明だが、長雨の背中に隠れていた時の険しさが和らいでいるように感じた。
「命を消費して姉妹にトラウマを植え付けて再起不能にする。この甚だしい推測を信じて頂けるのなら、それを実行できる敵を甘く見るべきではないと思うのです」
「姉妹があなた方に保護されたこの状況においても、諦めたと見るのは危険であると」
「はい。狂気か組織的な意思か、どちらにしても途轍もない執念です」
ここまで聞いて、流石に亜紋も鵜呑みにはしていない。
長雨自身で甚だしいと語るように、この推測には根拠がない。
確かに亜紋も、襲撃犯からは管を巻くごろつきでは持てない使命感が散見されたが。
あくまで疑惑の域を出ない話に過ぎない。これは共通見解の筈だ。
そう思っていたのに――ここで長雨が、周囲を見回してわざとらしく、告げる。
「第二十独立戦隊はこの疑念を解消するべく、我が隊の権限を以ってここに居る皆様を取り調べさせて頂きたいと思います。どうかご協力をお願いします」
……一体何を言っているのか。
ここまで会話を重ねた相手だからこそ、聞きたいことは山程あったが。
まずは彼らに姉妹捜索を依頼した立場として、亜紋はその発言の真意を問い質さなければいけない。
まるで今回の凶徒に与する者が、この場にいるかのような語り草ではないか。
動転した気を落ち着かせて、これはどういうことかと口にする、同時に。
ランチ付近に控えていたスラン宣教会の人員が三名、堰を切ったように走り出した。
一人は真っ直ぐ亜紋に近寄り、背中に手を伸ばす。その瞬間を捉えるように足元が大きく陥没した。
足を取られて転倒するそれの頭上から、地面より失われた同量の土砂が降り掛かる。
埋没する四肢、土から這い出た腕が、空間の歪みと共に地面に再度叩きつけられた。
「うえからおさえつづける……!」
「完璧だ!」
念波動による拘束。瑠璃の仕事を称賛しながらも、長雨は亜紋の脇を抜けて駆け寄って来る内の一人に狙いを定めて突進、眼前で手元を振り上げた。
白刃一閃、光の刃が跳ね上がる。
途端に力を失い崩れる相手に目もくれず、長雨は姉妹に向かう最後の一人に、振り上げた腕を下ろす形で握った剣を投擲した。
無警戒な背中に、音もなく吸い込まれるように突き刺さる。
なにが起きたのか分からない顔で、それでも姉妹に一歩、二歩と踏み出すが、三歩目で膝から崩れ落ちた。その背を追い付いた長雨が踏みつけて剣を回収する。
「瑠璃ちゃん、もう大丈夫だ」
「でもまだていこうしてる」
「そいつも気を失っている。でも脳が生きている限り念波動は無意識でも干渉してくるんだ。荒事の玄人の言うことだよ、信じてくれ」
「…………」
納得のいかない素振りを見せつつも、瑠璃は念波動を解く。
拘束を失った土砂の中の人物は、もう動かなかった。
一息ついた瑠璃を尻目に、長雨は足元の相手に言葉を投げ掛ける。
「現行犯逮捕ってな。念波動の刃物を味わうのは初めてだろう。刃傷はねぇよ」
「て、手元を離れても霧散しない念波動の器具、対人戦闘技術……貴様達は……!」
「元気なもんだ。他二人と比べて傷は浅いとはいえ大した念奏者だよ」
「聞いたことがあるぞ、人間を相手にする暗部の殺人集団の話を……我々を嗅ぎつけていたのか!」
「否定はしないがな」
地面に押さえつけられながらも横目に睨んでくる相手に、長雨は意地の悪い笑顔を浮かべた。
「さっき披露したわざとらしい推測は、全部そこの妹さんが教えてくれたことだよ。お前らの企みは既に暴かれていたのさ、手に掛けようとした五歳の子どもにな」
ざまあみろ。そんな言葉が今にも聞こえてきそうな声色に、土を噛み歯を軋ませる。
そこへ茫然自失だった亜紋が、震える声で問い掛けた。
「畑賀屋さん……あなたが、どうして」
信じられないと言わんばかりの様子には、亜紋から同じ教団である以上に、個人的な信頼を置いていた関係であると伝わってくる。
そんな畑賀屋と呼ばれた男は、酷く冷めた目で戸惑う老人に吐き捨てた。
「宗教を隠れ蓑にする弱者め。もうお前に取り入る必要はないと喜んでいたのだがな」
「そんな、なにを」
「幾ら孤児の救済に入れあげようとも、戦火に見捨てた孫は帰らないというのに」
第三者から見れば明確な、亜紋を傷つけるためだけの言葉。
明かされた罪から逃げるように後退する彼の心中に、長雨が割り込んだ。
「久末司教、この三人の経歴で、念波暴走の有無は分かりますか?」
「……ほ、他二人は畑賀屋さんの付き人でしたので分かりませんが、そこの彼は無かった筈です」
「ふぅん、案外正直じゃないかよ」
「……ちっ」
悪態をつく畑賀屋に、亜紋は理解が追いつかない。
その混乱を見透かしたように、瑠璃が説明する。
「きゃりぃばーすとで、じぶんもろともわたしたちをころそうとしていた」
「念波暴走を、意図的に……!?」
「どうよ、そこの幼女の前で隠し事はできないぜ。全部ゲロっちまいな」
言いながら剣をもう一度、今度は肩口に差し込む。
息継ぎと変わらない自然体での凶行に、亜紋の反応も遅れてしまう。
「おっ、お止め下さい!」
「ああ、見た目は悪いですが、こうして念波動を乱さないとこの体勢でも念波暴走を起こされるんですよ。こいつは口を利ける程度に気力を残しているので」
そう言われて亜紋は黙るが、血は見えず傷もないと語られても、表情を変えずに凶器を突き刺す姿は、これまで話をしていた長雨のイメージとまるでそぐわない。
それともこれが本来の姿なのか。手慣れている、あまりにも。
「……隠し事はできないだと? 長雨と言ったな、貴様が滅尽種のなにを知っている」
「めつじんしゅって、この姉妹のことか?」
「そうだ、ははっ、心を読むという知覚、未知の能力、成る程新人類の呼び名に相応しい! しかし真に恐るるべきはそこか!? 否よ!」
「急に芝居がかってきたぞこのおっさん」
「あくとうのまくぎれ……」
呆れた様子の瑠璃を畑賀屋は睨む。渾身の燃える瞳で。
亜紋に向けた冷ややかな侮蔑とは違う、燃えるような憎しみが垣間見えた。
「滅尽種を討つ手段の模索において、我等の先を行く者はおらん! 知らんだろう、私が今この時も、この悪鬼の精神と熾烈な戦いを繰り広げているのだと!」
「……瑠璃ちゃん、なにかされてんの?」
「このひとのこころをみると、ひとやどうぶつのくさったしたいとか、うずまきにちかよるようなへんなどうがをみせられる」
「テレパシーを介したマインドクラッシャーか。気分悪くないのか?」
「よゆう。あなたのほうがよっぽどこわい」
「なんとグロ画像以下」
「無知蒙昧の輩め、我々の大義をっ、理解するつもりもなく……!」
足元からの怨嗟が聞こえているのかいないのか、長雨は瑠璃を一瞥すると、幼女は首を横に振る。
亜紋には分からないが、二人の間でなんらかの意思疎通が行われているのだろう。
その結論が出たのか長雨は剣を抜くと、畑賀屋を持ち上げて視線を合わせた。
「大義とか使命感とかって単語にさ、俺は悪い印象を持っていないんだわ」
「長雨殿……?」
「そういうの毛嫌いするやつもいるけど、リベラルを名分に噛み付かれても犬の遠吠えだろ。この御時世だし、大きな流れに身を任せたり、なにかに酔わなきゃやってられんこともあるだろうさ。分かり易く共有できるもんを誰かと一緒に抱える、さっきからお前が語る『我々』も、そうやって寄り集まった集団なんだろ」
「わ――分かっていないわ! この使命が背負うものも、貴様のような目先の幼子に騙されて、巨悪を見失う盲目の騎士気取りに、見えるものなどないわ!」
「自由に正義を選べばいいよ、でもな」
そう言って、大きく息を吸うと。
「無罪のガキを殺す正義はねぇよ!!!」
大男の叫びは、見た目に似合った大声量だった。
空気に罅が入り、耳の中まで切り刻まれる、そう錯覚する程の。
「子どもは何時か大人になるんだぞ、そんで子どもを生むんだ、それを大人が潰して良しとしたら、未来にゃ何も残らんだろうが!」
すると畑賀屋も睨み返し、負けじと声を張り上げる。
「め、滅尽種は人類の未来を担う存在ではない! 同胞でも、同じ人でもないのだ! だから貴様達は何も分かっていない、見えていないのだと――」
「お前こそよく見やがれ!」
長雨は畑賀屋の頭を掴むと、顔を姉妹に向けさせる。
瑠璃は姉の着るパイロットスーツを掴み、紫は妹を背に隠して畑賀屋から目を逸らさない。
「大義でぶん殴ろうとするお前らに怯えた、そこいらに居る姉妹じゃねぇか!」
「違う、人ではない、擬態だ!」
「超能力なんて、今や全人類が持ってんだろ。周りより強い、頭や目が良いだけで目をつけられて、一々自爆テロに巻き込まれたら堪らないんだよ!」
「無知、無知無知無知の暗愚の群れめ! 我等は未来を知っている、世界を変える念波動、その最たる人間は、文字通りに全てを変える! 一握りの選民が支配する未来に、本物の人間の居場所はないのだ! 分かったら拘束を解け!」
「……こちらを説得する気があるのですか、畑賀屋さん」
それまで沈黙していた亜紋が口を挟んだ。
風が吹き、木々はさざめく。興奮する畑賀屋とは対照的に、知人を見る老人は哀しみに暮れていた。
「そんな言葉に踊る人間は、もうこの場に居ませんよ」
言い聞かせるような、落ち着いた声色だった。
もう逆転の目はない、終わったのだと、淡々と事実を告げるだけの。
「何故だ、何故分かろうとしない……」
「いきなりころそうとしておいて、しっぱいしたらとりみだしてなきおとしって……」
長雨に掴まれながら項垂れる男への軽蔑の視線。
瑠璃としては、言いたいことがそれこそ山程あるのだろう。
それを察しつつも、長雨は人差し指を口に当てて、黙ってくれるように頼み込む。
任せて欲しいと、彼の心を読むまでもない思いが、幼女にも伝わった。
「紫ちゃんは、お前らの使命とやらで酷い目にあった、罪を被せられた」
「……縮図だ、未来のな」
――もし長雨の制止がなかったら、瑠璃もまた姉と同じことをしていたかもしれない。これまでの勝手な言い分にも腹が立っていたが、最後の一言は見事な挑発だった。仕掛けてきた側が、目論見通り姉に殺されて、未来の縮図ときた。殺したい。
最後の一言を長雨の脳内に直接送りつけるが、首を振っていなされる。
そうして幼女に殺意を植え付けた言葉に、長雨は笑って返した。
「でもこの子はそれを乗り越えていくぜ、勝手な大人の屍を踏んづけて、お前らの理屈を大いに笑う。それが明日か一年後か、いつになるのかは知らんがな」
「無駄、我々のしていることは無駄だと言うのか。言うが良い、そのいつかが来る前に、我等の牙は届くだろう、滅尽種は生かしておけぬ」
「無駄じゃないさ。糧になる」
畑賀屋の目が見開く。
ああ、糧だと。精一杯に意地悪く、使命に懸ける畑賀屋の献身を嘲笑う、雲一つない青空のように嫌味な笑顔で、長雨は続けて。
「なにせこの少女は、妹を守ったんだからな」
長雨を見る紫の目もまた、大きく開かれた。
それを正面に見据えて男は語る。褒め称える、敬意を以って。
「俺にはできなかったことをやったんだぜ。悪党の自滅にめげるな、胸を張りなよ」
「知っていたの、貴方は」
「ああ。だから肯定する。これから先、君の周りが非難したとしても、俺だけは」
「わたしが」
「頑張ったなぁ、紫お姉ちゃん」
それを聞いた紫は、ゆっくりと瑠璃に向き直った。
妹がその顔を確かめる前に、姉がしかと抱き締める。
パイロットスーツは普段の柔らかな生地の服とは違い、金属部分もあってごつごつしている。
その心地は普段の抱擁とは比べるべくもないが、なぜだろう、瑠璃の胸には今までにない安堵が込み上げてきた。
「……ごめんっ、ごめんねぇ」
「おねえちゃん」
「わたし全部聞こえていたの。たくさん気を遣わせてごめんね。わたしがしっかりしないと、その分瑠璃ちゃんが大変になるって分かっていた筈だったのにぃ」
うううと呻き、鼻を啜る音。
瑠璃からは見えなかったが、きっと泣いているのだろう。
森に逃げ込んだ時の、自制もままならないままに流れ出ていた涙とは違う。
姉はようやく、この辛い非日常に相応しい感情を得られたのだ。
「上手くいかなくて、瑠璃ちゃんに酷い光景見せちゃって、自分がとんでもないことをしたって、これで瑠璃ちゃんに嫌われたらどうしようって……!」
「おねえちゃん」
赤ん坊にするように、姉の背中を叩く。
「きらったりしない、さけたりしない、まもってくれてありがとう」
「んぐっ、瑠璃ちゃんこそ、お姉ちゃんをまもってくれてありがとうねぇ……!」
慰めようとした。しかし瑠璃もいつの間にか泣いている自分に気付いた。
かつて母に叱られて、姉妹揃って泣きべそをかいたのを思い出す。
姉が戻ってきてくれた。瑠璃の日常は、姉の腕の中にあったのだ。
「……子供の泣き顔が好きってわけでもないんだろう、あんたも」
言葉を重ねながらおいおいと泣く二人を見て、長雨は傍らの畑賀屋に語る。
「この姉妹の方が俺達より余程、人が大切にするべきものを理解している」
「人の真似事だ……その盲信が首を絞めるのだ……」
「自分を理解しろと叫ぶ前に、こういう当たり前に立ち返ってもいんじゃねえかな」
抱き合う姉妹。落ち込む亜紋、下を向いてぶつぶつと呟く畑賀屋に、気絶した二人。
そこに事態の収拾を見たのだろう、おろおろとしていた真っ当なスラン宣教会の人員が駆け寄ってくる。
その後の亜紋の行動は迅速だった。
司教が板についた指示を飛ばして、拘束した三人に犯罪者用の念波動抑制装置を取り付けるとランチに運ばせる。
ウーキャリアで周囲を警戒していた長雨の同僚も降りてきて、この後の段取りについて天羽と亜紋で打ち合わせを始めた。
その間に、甲斐がにやけ面をしながら長雨たちへと近付いてくる。
「……お前ら、お空で全部傍受してたろ」
「おいおい、地上でなにが起きてるのか把握しとかないと駄目だろ。いざという時の為に仕方なくだな」
「こっちに全部放り投げやがって。元々の作戦はどこにいったんだよ」
「でも上手いことやれてたじゃん。生身で一番動けるのはお前だしな」
高みの見物を楽しんでいたことを隠さない態度に、長雨も呆れて追求を諦めた。
「上手いことやったのはこの姉妹だよ。全く、報告書出したら給料泥棒扱いだな」
「いや、ありのままを書くなよ」
「書くよ。『星辰の尾』の名が泣くわ」
元々悪名じゃねぇかと毒づきつつ、甲斐は姉妹の反応を窺う。
全部ばれてるよと、長雨は姉妹と目を合わせた。
「見たくないもんまで見えてるだろうし、こっちも隠し事を続ける気力が残ってない。俺達の名前も全部偽名さ。なにからなにまで嘘っぱちで悪かったな」
「……貴方達の目的は、今回の犯人だったんですね」
少女らしからぬ毅然たる態度で、紫が問う。
ひとしきり泣いて気が晴れたのだろう、見せる顔から狂気の陰は消えていた。
「ああ。君たちの捜索依頼に乗っかる形で割り込ませて貰った」
「狙いがおたくらなら張っておけば寄って来る。連中が人目のない地上で事を済ませたかったのは見えていたからな。多少無理してでも来ると思っていたぜ」
「人目のない……それは自爆テロと言えるのでしょうか?」
紫の疑問は、自分達の背後を隠して動く畑賀屋達襲撃犯が、テロリズムの目的に適わないと思えたからである。
彼の話し振りから、有力な念奏者の殺害を狙ったのは分かったが、その裏に見える思想共同体をまるで前面に押し出さない姿勢は、政治的立場の向上を狙うものではない。
同組織を殺害等の暴力的な行動力で宣伝し、その上で強念奏者の危険性を世に主張しようという意図が見えないのだ。
人類社会から強念奏者の排斥を目指す。畑賀屋も語ったその目的を政治的に通そうとする行動ではなかった。
彼と思想を共にする共同体の正体は最後まで分からず。
自分の命ごと闇に葬ろうとうする有様は、まるで暗殺者の如くである。
「自分の命を弾丸代わりに、殺すのは決定事項って動きだったぜ、ありゃあ」
「強念奏者の台頭を妨害したい、なんて生易しい考えではなかった。まるでわたしたちを殺さないと、明日にでも世界が滅びるかのような言い草でした」
「わたしたちをまおうにみたてたゆうしゃきどり……」
「国や人を動かしたいんじゃないんだろうな。本気で世界を救うつもりの、本物の大義で動いてやがる。俺達に受け入れられる思想じゃないがな」
「あのひとのせいで、たいぎってことばきらいになりそう」
舌を出してうぇぇと呟く瑠璃に、さもありなんと長雨も難しい顔をした。
「ま、大義使命も人によりけりだよ。とても食えたもんじゃないものが、ああやって悪目立ちするのが世の常さ」
「お前に張り合えるんだから、声の大きさも凄かったよな、あのおっさん」
観客に徹していた甲斐でさえ、畑賀屋の語り口には思うところがあったのだろう。
一笑する男の横で、紫が瑠璃に諭すように言う。
「大変な世の中だから、起きた問題には皆で当たらないと解決も難しいんだよ。集団の力、あの人たちはそれを向ける先を間違えたの」
「そうそう、そういうことが言いたかった!」
「そうやって、おねえちゃんのことばにあきひとがのっかったように、あのひともつよいだれかのつくるながれにみをまかせたかったのかな」
瑠璃の言葉に、長雨と甲斐は顔を見合わせた。
十二歳と五歳はだらしのない大人の男達を置き去りにして、自分なりの答えを導き納得している。
というか。
「おたく、名前ばれてんじゃん」
「言ったろ。隠し事はできないって」
そう言いつつも、さして気にしていないように。
あきひとと呼ばれた長雨太助は、顎を掻きながら呟いた。
「しかし過去も洗い浚いとは。成人男性の昔話なんて結構な情報量だろうに、負担で頭が痛いとかないのか?」
「ない。あなたのじんせいあさいから」
「なんだとぉ」
「うそ。わたしにみえるのは、そのひとがこころにつよくおもうことだから」
そう言って、瑠璃は長雨の心に囁く。
(隠したいこと、暴かれたくないことを意識すればするほど、思考の心音は強くなる。逆に相手に伝えたいことも、念波動の法則に従って願い通りに伝わり易い)
(俺の名前は前者で、畑賀屋の精神攻撃は後者ってことか。秘密にしようと伝えようと、心に強く残ることは分かっちまうんだな)
(……少しだけ、違う)
瑠璃の青紫の髪が風に揺れて、上目遣いにこちらを見る姿は森に潜む妖精だ。
安心を得て和らぐ顔は、傍らに居る長雨の胸を陽だまりのように暖かくする。
(本当の名前を、わたしに知っておいて欲しかったんでしょう?)
(え?)
「あなたからわたしに、なまえをおしえてくれたんだよ」
守ることができて良かったと、長雨は改めて思った。
仮令この子が力を振るい、行く末は人類社会を滅ぼすとしても。
そんなことを考えるくらいに、長雨へ向けた年相応の微笑みは、儚く尊い子どもの一人なのだと実感させるものだった。
――通信デバイスを見た甲斐は、天羽から話が終わったとの連絡を受けた。
いよいよこの森を離れる時が来たらしい。
「そろそろ向かうとよ。がきんちょはお前のコクピットに押し込んで運ぶってさ」
「そうなるか。無力化しても襲撃犯と同じ船には乗せられんよな」
「おいガキども、こいつに変なところ触られたらママに伝えておけよ」
「やめろや」
甲斐が首を向けて指し示す先には、長雨の壊れたウォーキャリアがある。
これから自分が運ばれる方法を理解した瑠璃は、静かに告げた。
「おねえちゃんにさわったら、ころすよ?」
「見ろ。五歳児が本気にしだしたじゃないか」
「る、瑠璃ちゃんに手を出したら、出したら……!」
「待て、君は今日を振り返れ、その決断は安易にするものじゃない」
冗談はさておいて。
長雨は先に行っていてくれと、姉妹をウォーキャリアの方へと送り出す。
背中を押すと、瑠璃が振り返って最後に聞いた。
「ほんとうはさわりたい?」
「もう答えるの面倒だから俺の頭を読んでくれ」
「……ざんねん」
最後にどうとでもとれる言葉を残して、瑠璃は紫と指示通りに歩き出す。
それぞれの距離が離れたところで、甲斐が腕を組んで長雨を笑った。
「好かれたねぇ長雨よ。ロリコンも冗談じゃなくなってきたかな」
「ははは、もし五歳児に手を出す大人が居たら殴り殺すわ」
「だから彼女作っておけば、こうやってからかわれることもねぇんだって」
「青春ならウォーキャリアに捧げたよ」
それもまた壊してしまったが。姉妹の背中越しに愛機の残骸を見る。
コクピット以外はここに置いていくことになるだろうそれは、彼の何着目の鎧になるのか分からない。
経歴、小学校中退。九歳で年齢を詐称し戦場に飛び込んでから早十三年。
長く戦ってきたが完全に大破した経験は、それでも十はいかない筈だ。
「で、あからさまに距離を取ったけど、隠し事はできないんじゃなかったっけ?」
「あの二人なら空気を読んでくれるよ。他人を気遣える性格をしている」
「……仮にこの会話も読まれているとしたら、その言葉が牽制になるな」
「そんな良心に訴える狙いの台詞じゃないさ。読まないよ、今の二人なら」
それにここに長雨達が来てから、姉妹が二人になれる時間は作れなかった。
姉も落ち着いた今、彼女たちも他人の目がない時間が欲しいところだろう。
これからコクピットという狭い空間で男と一緒に運ばれる前の、小休憩といったところだ。長雨にはそれくらいしか配慮ができない。
「しっかしマセガキ……特にあの幼女、歳の割に頭回り過ぎないか?」
「ああ、それには絡繰りがあるんだとさ」
「絡繰り? いやその言い方、どこで聞いたんだ?」
「名前を教えてくれたから、お返しにってな」
自らの頭を指差す長雨に、念話って怖ぇなとは甲斐の談である。
瑠璃のネタバラシは興味深いものだった。長雨は得意気に語る。
「目から鱗もんだぜ。今後に役立ててくれって話だから、後で星辰の尾で共有するよ。上へ報告するかは天羽に判断して貰おう」
「獅童の子ども、こりゃ選民とも言われる有能さだわ……あの畑賀屋ってのも、やっぱり共生派じゃなかったんだよな?」
「分からん。強念奏者を持ち上げるか叩くかの違いはあれど、近年生まれた選民思想は大体念波動の強弱を基準にしているからな。似た口なら他にもいるが、国家転覆も考えずにあそこまで物騒なのは、俺の知る限り既存の新興思想派閥に無いよ」
「またおかしな思想共同体が増えたかもしれんのか。スラン宣教会に潜んでいたのも、有力な念奏者の情報欲しさだろうし、厄介なやつらばかり出てくるぜ」
そう話しながら、どこか他人事のように聞こえるのは、甲斐――本名を澄原清丸という男の目的が、共生派への復讐に根差しているからだろう。
今回の事件に共生派の臭いが薄いと感じた途端に、面倒事を長雨に丸投げしたように、根本的にこの男は共生派が関わらない問題への関心が薄いのだ。
星辰の尾という復讐者の集まり。甲斐の正体もその内の一人に過ぎない。
共生過激派の負の側面、敵性存在と人類の融和を成す一助として、傀機獣と人間の融合体を産むという狂気の実験体にして、非人道的な研究の過程で兄を失った甲斐は、その元凶の撲滅にのみ精力を注ぐ男である。
「ま、これ以上深入りしてもしょうがねぇか」
共生派ではないという推測を得た彼の態度は冷淡だ。
ゆえにその興味もあっさりと他に移る。
「それよりよぉ、十ヶ月ぶりの実戦とは思えねぇ働きだったな。驚いたぜ」
「……それについては心配を掛けた。思ったより動けて俺自身安堵している」
「少なくとも半年は寝たきりだった癖に、なんとかなるもんだな」
「この最新パイロッツスーツ、廃用症候群対策の機能もあってリハビリも苦にならなかったしな」
「医者が言うには、お前の代謝もおかしなことになってたらしいが、その分なら本調子を取り戻したと思っていいだろう」
長雨は、一ヶ月前まで意識障害で動くことさえままならなかった。
原因は不明であり、身体や脳に損傷は確認されておらず、念波動へのダメージを通じて発症した重度の精神疾患の可能性もあると言われていた。
十ヶ月前の作戦中に行方を見失い、七ヶ月前に発見された時にはその状態で、頭が白髪になったのもそれからである。
長雨本人にもその間に何があったのか分からないままだが、こうして一兵士に戻ったのは久し振りのことだった。
「逆に戻らなかったらと思うとぞっとするよ。俺にはこれしかないのにな」
「なんにせよ帰ったら快気祝いだ、呑むから覚悟しておけよ」
「……否定してくれてもいいんだぜ?」
「うるせぇウォーキャリア馬鹿。オレ達はこいつと心中するしかないんだよ」
そう言って長雨のウォーキャリアを見る目には、甲斐には珍しい哀愁の色があった。
砕けた躯に自分の未来を重ねたのか、別の理由があったのか。
らしくない様子であるが、わざわざ無下にすることもない。
長雨は黙って空を見上げた。
森の間から覗く空は時間を経て、ランチを出迎えた時より赤みがかっている。
夜は近い。遅くなる前に子どもを親の元へ送り届けなければならない。
そう思うと、足は自然と姉妹の待つ場所に進んでいった。
――これが七年前の話。
この一年後、獅童の家族に不幸があり、獅童瑠璃と長雨太助の関係は断たれる。
それは彼のある決断に繋がり、戦後に長雨は星辰の尾から除隊された。
長雨太助を失い本名を取り戻した男が、流れ着いた富士大宮基地で再び子どもたちの庇護者になるまで、もう少しの時間を必要とする。




