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第17話 忍の配下


「なるほどな、【不可視】……殿は、そもそもが忍びであり、その問いには答えようがなく知らないと答えたという事か、いやはや俺は納得行ったぞ」


 コータ君が感心したようにうんうんと頷いているが、100%間違っている。最早反対方向と言っても間違いではない。

 因みに一旦呼び捨てにしたが、セリカちゃんが舌打ちしたので訂正した。この子舌打ちとかするんだね。怖いんだけど。


「まだ何か二流の貴方たちが超一流の師匠に質問があるんですか?」


 何で勝手に格付けしているんだ……


「で、では私から」


 セリカちゃんの言動に押されて長老方が口を開かない中、ダンゾウさんが質問する。


「どうぞ」


 いや、どうぞってなんで君が許可出しているんだよ。

 止めようか迷っているうちにどんどん話が進んでいくのだけれど。


「【不可視】殿がもしも我々の上に立った場合、コルガとの闘争はどうなりますか?」


「そうだ、それが大事だ」


 長老方も賛同する。

 そして司会のようになっている彼女は僕の方に振り向き、答えを促してくる。


「……そもそも部外者の僕にそれを求められても」


「つまり、その程度も自分で解決ができないのであれば、師匠の配下になる価値がないという事ですね!」


 全然違う。何もかも違う。何で勝手にこんなに勘違いされてるんだよ!

 心の中では全力で叫んでいる。



 セリカちゃんがこっちに振り向いてきらきらとした目で見つめてくるので僕は曖昧に苦笑いをするしかなかった。これ全部勘違いだったとわかった時にセリカちゃんどれだけ恥ずかしいんだろう。


 ほら、なんかもうみんな黙っちゃったんだけど。

 僕が一番気まずいから帰っていいかな?



「恐らくですが、師匠が本気を出せばコルガの忍者程度、すぐに片付くことでしょう。しかしそれであなた方はよいのですか? 部外者に助けを求めてそれは忍者としての誇りはないのですか?」


 セリカちゃんって宗教の開祖とかになれそう。なんでこうも都合よく解釈できるんだろう。はっきり言うけど、片付けられるのは僕の方だぞ。


「そもそも何故あなた方の為に師匠が動かなくてはならないのですか。あなた方は師匠の配下になること自体既にメリットなのでしょう。それなのにまだ求めるとはつくづく忍者は救いようがないんですね」




「……あの、ちょっといいかな」


 流石にお通夜みたいな空気になってきたから僕も止めに入る。

 長老たちは誰も僕らの方を見ることなく下に顔を向けている。コータ君は面白そうにニヤニヤしていた。


「なんですか、師匠」


「流石にね、そろそろやめようよ」


 セリカちゃんは首を傾げて、ようやくこの状況を少し理解できたようだ。熱弁しているのは彼女だけで、大人たちを苛めているようにしか見えない。


 誰がこの状況を打開するんだろうか。

 でも、と言いたそうな表情だったのでもう一回強く言う。



「セリカちゃん。それ以上はいけない」


 流石に僕だって年上の人には敬意を払う。怒ったからと言って乱暴なことを言っていいわけではないと思う……今回はセリカちゃんが怖くて黙っていたけど。


「わかりました」


 彼女はぺこりと頭を下げてまた僕の横に座る。

 僕の弟子の大暴走によって空気感は最初とは違う意味で最悪になっている。



「【不可視】殿、我々などあなたにとって塵のようなものかもしれませんが」


 そして、ダンゾウさんの言葉に長老、コータ君やアヤメちゃん全員が土下座する。


「何卒今後とも宜しくお願い致します」






「…………なんで?」


 こうして僕はセリカちゃんの勘違いによってイルガ忍者衆の頭領になりました。

 どうしてこうなった。



 僕は数秒間唸って悩んで苦しんで、一つだけわかったことがある。

 もうどうしようもないから諦めよう。なるべく穏便に、何もしないで里にも行かないようにしよう。それが今できる最善手だと思う。


 あとついでに学んだこともある。

 セリカちゃんを切れさせるのは怖い。



 この日を境に、戦うことなくイルガの頭領となり忍者衆を配下にしたという噂が広まり二つ名【不可視】の存在が世間一般にも認知されたのだった。


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